スライムの無限の可能性とはなんぞや?!
記録風の物語です。
何やら奇妙な人たちが集まっていた。
「可愛らしいスライムたそを殺した勇者を許すなー!」「許すなー!」
「 悪逆非道なクエストを取り消せー!」「取り消せー!」
ここは王都。様々な人たちが行き交うのだが、その流れが今日は少しおかしかった。
ギルド施設の前において多くの集団が道の一部で立ち止まり叫んでいたのだ。
彼らはプラカードなどを手に持っており、それには「スライムにも人権を!」「癒やしがなくなると犯罪も増える!」などといった文言があった。
それを見ていた一般人たちはの一組はテラス席に置いて食事を食べながらそれを眺めていた 。
「あの運動何時からやっているんだっけ」
「そういえば変な人たちがいるなあと思っていたが、えらい熱の入り用だな」
通りの人々もなにやら珍妙な集団を見ながら噂話をしている。
スライムの人権を守れと言ったことを叫んでいた彼らだが、その理由は彼ら以外にほとんど理解しているものはいない。大抵は、
「でもスライムは仕方ないんじゃないか新米『勇者』にとっては貴重な経験値なんだし」
と、思っていた。
そうこの世界では勇者は選ばれし者がなれる職業の一つである。
なぜかこの世界の法則として魔王と呼ばれる邪悪な存在は 勇者たちにしか倒せない。
魔王は城を構えるのとで、時間制でどんどん強くなっていき勇者によって間引いていかないと世界の危機になってしまうのだ。
彼らは四人ほどのパーティーを組んで冒険に行き、最初は弱いものの モンスターを殺し経験値を吸収しながら強くなっていく。
そして、この世界のモンスターはなぜか勇者とその仲間しか襲わない。
勇者相手に商売をする人たちも多かった。
例えば勇者に対して武器やアイテム食べ物を提供する現地商人たちである。
彼らはモンスターに襲われないことを利用して、ダンジョンなどの現地で必要とするアイテムを勇者に売りつけることを生業としている。
これから話す歴史は、そのうちの一つ、超高層ダンジョンでの出来事だった。
その商人たちは数百階層もあるその巨大ダンジョンで、各階層で商売をしていった。
ほぼ各階層に一人ずつ、合計何百人もいた商人たちである。
襲われないとわかっているとはいえ、下になるほど強いモンスターが行き交う中を立ち続けるこの商売は、人気とはいえない。
だが、一定のニーズと利益が見込めるので、そこそこ人気がなくもない職業だ。
そして、ある日のことだ。その中の一人が足元に何か違和感がしたので下を向く。
そこにはスライムが足元に乗っかっていたのである。
「 うわっ!なんだこいつ! 」
商人はびっくりした。飛び退く。
が、次第にこいつが餌を求めているように思えてならなかった。
試しに売り物の食べ物の一つをスライムに与えるとスライムはそれを消化していった。
そしてその姿にその者は次第にある感情を芽生え始めた。
「 ふふふ、可愛い 」
その者こそが、初めてモンスターに餌を上げた人物だった。
そう、実は、食べ物を食べるモンスターというのはこの時点までいなかったのだ。
モンスターは空気中の魔法エネルギーを吸収していると考えられており、モンスター研究者によって密室で食べ物も水も飲まずに何年も生き続けることが確認されていた。
それに、食べ物を前にしてもなんの反応も示さない。モンスターとはつまり勇者を襲い経験値を落とす存在でしかなかった。
それは一般的なスライムも例外ではない。
つまりこのスライムは突然変異でできた食べ物を食べるモンスター。
正確に言えば、魔法エネルギーに変換するモンスターだった。
それはこの世界にとってバグのような存在。
そう、これはその世界の誰にも知られていないが、その世界はゲームを模して作られた世界である。
世界とは、通常は、創造主によって作られ、管理者により維持される。
この創造主、管理者のレベルが高いほど複雑な世界を作れるのだが、その世界の管理者はまだ未熟だった。
モンスターが餌を必要とするなら、食物連鎖のバランスなど、管理者にとって調整が難しい世界となってしまうのである。
ゆえに未熟な管理者によって、その世界が崩壊にならないよう、簡単な設定にしていたのである。
もし、多くのモンスターが餌を必要とするのならば、システムは崩壊。巡り巡って世界の消滅の危機に陥る。
しかし少なくとも餌を必要とするのは現時点でこのスライムだけである。
世界全体としてはバグといえど許容範囲内であった。
ともかくその商人はそのスライムを仲間に紹介することにした。各階層にいる商人仲間たちである。
A「おい、これ」
B「うわ!なんだ!スライム?!きたねーな!」
A「は?(半ギレ)お前餌上げてみろよ」
B「え?なんで?」
A「いいから!」
B「わかったよ、、ん?これは、、」
スライム「ぷるぷる」
A&B「「かわいい、、」」
以上のような流れで伝染していった。
そしてしばらくして商人たちは全員スライムの虜になってしまったのである。
商人は思った以上にストレスのかかる仕事である。
勇者を相手しているより、待つ時間の方が多いからであろう。
さらには危険がないとはいえ、ガイコツやゴブリンなどのおぞましいモンスターと隣り合わせなのだ。
そんな商人たちのストレスを スライムはぷるぷると震えるその動きで癒したのである。
そのスライムは、たくさん餌をもらえることに味をしめたのか、毎日別の階層の商人のもとにも訪れ可愛い子アピールをしたのだ。
そしてスライムは一定のエネルギーが貯まると、分裂し増殖していく性質がある。
餌をもらい続けたそのスライムは、人になつくことを覚え、瞬く間に増殖して行ったのだ。
だがそれでも世界全体はおろかそのダンジョン内での影響も小さかった。 現時点では何の問題もない。
問題があったのはそのスライムの方である。
その特殊なスライムを、仮に変異スライムと呼ぶことにしよう。
その変異スライムは、通常のモンスターと異なり、空気中からエネルギーを取り出す力は弱くなっている。
つまり、変異スライムは餌を貰えないと死んでしまうのだ。
そのダンジョンでは何百人も商人がいるとはいえ、餌のもらえる一定量は限られている。
商人も可愛いとはいえ、無制限に餌を与えられるわけではないのだ。
故に 餌をもらえず 弱肉強食的に死んでいく変異スライムも多かった。
それは大抵の場合、餌をもらうタイミングを逃した、運が悪いだけの変異スライムだ。
つまり、需要に対し、供給が多すぎた。だから調整が入り供給が減っていった。ただそれだけのこと。
しかしこれだけ量が多いとその中に突然変異する個体も当然現れてくる。
それはちょっとした外見の変化だった。
人間でいう頭に相当する部分に二つの突起が付いているのである。
それはまさしく猫耳のように見えた。 このスライムを猫耳スライムと呼ぶ。
実際にはただの遺伝子的なエラーであるはずのその個体は商人にお気に入りになったのである。
A「何この子、、猫耳みたいでかーわーいーいー!」
B「こっちおいで!」
A「あっ!こら!餌で釣るとは卑怯な!私の方が餌あげるからおいでー!」
猫耳スライム「ぷるぷる(満足げ)」
ふつうのスライム「、、、、シュン」
以上のような流れになったか定かではないが、しかし可愛い娘には贔屓したくなるもの。
猫耳スライムはもらえる餌の量も多くなった。
そしてそれは、猫耳でない変異スライムのが本来もらえるはずだった餌を『奪う』ということである。
なぜなら全体での餌の数は一定なのだから、猫耳スライムが通常よりも多くの餌をもらえることによって、他の変異スライムのもらえる数も当然少なくなる。
そして、そのスライムは餌をもらえるほど増え、もらえないと減っていくのだ。
結果、ノーマルの変異スライムは淘汰され、猫耳スライムが増殖していく。
そうまさにこれは進化アルゴリズム的ダーウィンの進化論的な現象だった。
その競争は時をへるごとにどんどん進んでいった。
二つの突起だけだったものは、だんだん本物のそれに近づいていき、体も猫っぽい形のスライムが生き残っていた。これを猫スライムと呼ぶ
ダンジョンも有名になっており、猫スライムダンジョンとまで呼ばれるようになっていた。
そのくらい猫スライムだらけのダンジョンだった。
もはや初期の変異スライムはほぼ絶滅している。
だがそれでも進化論的競争は止まらない。 スライムたちは餌に多くあり着くとね可愛くなり続ける。
いやむしろ加速し始めたくらいだった。
その理由は、かわいいスライムのいるダンジョンという評判が広がり、ここで商売をしたい人が集まり始めたのである。
損をしてでもしたいという課金兵士と呼ばれるものまで現れたくらいだ。
つまり全体の餌のマージンが多くなった分、生きれる猫スライムの量も増える。
母数が高まると、突然変異する個体もそれにつれて多くなっていく。
つまり進化の流れが速くなるということだ。
皮肉なことだが、マージンが多くなっていくことに競争もさらに激しくなっていくのだ。
そして、競争で勝ち抜いたスライムの擬態先、つまり、猫の次にかわいい存在とは何なんだろうか。
そう幼女である。
猫好きには異論があるかもしれないが、全体としてそちらのほうが上であることは否めない。
それに猫耳の幼女だった。
猫耳スライムから進化した種類なので当然であるが、猫耳幼女だった。
このスライムを猫耳幼女スライムと呼ぼう。
そのルックスは猫耳が生えたロングスカートのつけている幼女である。
さすがに2足歩行は難しいのであろう。 足元まで届くロングスカートという体でなんとかごまかした。
しかし、それでも、直立という猫からの奇跡的な変化である。
まるでスライム自身が人の心を欲望を理解しているかのようだったが、それもそのはず。
たこなどと言った頭のいい生命体の特徴は触手である。
触手があるからそれを扱うための知能も必要となったのだろうか。それとも知能が高いから自由度の高い触手に進化したのだろうか。
ともかくスライムは全身が触手と言ってもいい。
そう、あまり知られていないがスライムは比較的頭の良いモンスターだったのだ。
さらには十分に栄養を取り込み、巨大化するほどその知能は高くなると知られている。多くの餌をもらえることでその条件は満たしていた。
スライムに人の心が分かると思えないが、それでも生き残れるスライムの傾向のようなものを理解していたのだろう。
あるいは商人の一人が幼女を可愛がっている場面を見たのかもしれない。
猫耳幼女スライムは人気度を独占し商人から与えられる餌の数を独占したのである。
そして猫耳幼女スライムもだんだん進化していって2足歩行に変化していったのである。
そこまで来ればもはや大人の女に擬態するスライムが現れるのは時間の問題だった。
これらのスライムを猫耳ガールスライムと呼ぶことにしよう。
そしてやはり男の商人に対して胸も大きい方が良い場合が多いので、ある程度乳があることが多い。
猫耳ガールズスライムは、猫耳幼女スライムと比べて体積が大きいので知能も高めだった。
そしてさらに、前述の通り進化論的競争によって、徐々に普通に会話したりすることができるようになっていったのである。
さらには性交渉などといったをする種類まで現れ始めた。
スライムはダンジョンの掃除屋とも言われる。
どんな不潔なものも体の中で浄化する能力が備わっており、つまり性病などといったリスクを犯すことなくエッチなことができるのである。
もはや男の商人の8割がダンジョンで童帝を済ませたとまでさえ言われた
だがしかしそういった大人のスライムは、特定の層に多くの層に人気なもの、やはり受け付けない層というものが存在する。
女性やモンスターと交わることを良しとしない層だ。
だからこそ 別の 種類のモンスターが生き残れるのだ。
例えば女性向けにイケメンスライム。
貧乳好き向けに貧乳ガールスライム。
ちっちゃい子好き向けにロリやショタスライム。
そういったニッチを狙うスライムが生き残れているのは、猫耳ガールズスライムとニーズを取り合わずに争わずにいたおかげである。
こういった流れで、つまり、人がマージンを生み、マージンがスライムを生み、スライムが欲望をかなえ、それが人を呼ぶ。
世界全体からすれば、まだまだ許容範囲内なものの、順調にインフレの道をたどっていた。
もはやそのダンジョンから溢れるほどそのスライムが大量発生していく。。
このまま世界に広まるのは時間の問題ともいえた。
このことに問題意識を抱いたギルドはこう考えた。
このまま人の欲望に応えるスライムが大量生成されれば、商人が超人気職業になり、他の分野の人材不足になってしまうのではないかと。
事実データを取ってみるとその通りだった。
少しずつではあるが徐々に人手不足になっているのである。
ついにはギルドが重い腰を上げる時になった。
そうそれらのスライムとて、愛されているからといってスライム。
そうモンスターであることには違いない。ゆえにクエストを発行することができるのだ。
そう通常に比べてかなり倒すと旨味のあるクエスト。
それは、 勇者の中でも倒せるものが限られる 中ボスモンスターの賞金を、初心者が稼ぐことが出来る位だった。
ギルドの貯金を減らしてまでそのクエストを発行し続けた。
それほどまでにこの事態を重く見ていたのである。
多くのクール系勇者はそれを見てそのスライムを大量に倒すのだった。
だがしかし商人にとってみれば愛すべき存在を殺されてしまうのである。
ゆえに彼らは同盟を組んでデモに走っていたのだ。
それが冒頭の彼らの行動原理である。
ともあれ商人がデモをしたところでそのクエストは取り下げられなかった。
一部の過激派により強攻策を取られようとも、その策を貫ぬいてゆく。
元々ギルドの職員とは元勇者で構成されており、かなり世界を救う意識が高いゆえ、実力もある。
武力的に商人に遅れをとることはなかったのだ。
そして、時が立ち、ひとまずその変異スライムは絶滅したかに思えた。
だがそうではなかったんである。もはや権力に対して圧力をかけることが無駄だと知った商人たちは、自分たちでギルドダンジョンを作ることにしたのだ。
この世界では強力なスキルを持っている者がいて、その中にダンジョンを作るスキルがあったのである。
それを使い変異スライムを住まわせ、こっそりと、秘密を守れるものにだけ利用を許したのである。
しかし初期の変異スライムから猫耳ガールスライムまでの期間は五年以内と モンスターの進化にしては異例の早さである。
しかも後期になるほどその進化は加速していった。
ならばそれから、さらに数年の時間が経過した今ではどうなっているのだろうか?
噂ではそこにはこの世の天国が再現されていると言われていた その幻のダンジョン。
しかし、ついに巨額と投じ、新たな国を作り、そこでそれらのスライムによる商売を始めたのだった。
A「ほう、『メイドスライム、ママスライム、痴*スライム、その他いろいろ、様々な性癖が君を待ってるぞっ!』か〜」
B「そのビラ、お前んちにも届いたのか、、どうする?」
B「行くしかねぇだろ?このビックウェーブに!」
そして彼らがたどり着いた国は、欲望の対象ではなく、あらゆるものがーー労働、食料生産、乗り物、エンターテイナーなどがスライムで賄われていたのだった。