表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

いつも一緒

作者: kUROKOnet

衝動に任せた短編です。

お暇な一時になればと思います。

ーーーーーーカチッ、コチッ、カチッ、コチッ


 広い部屋のなか、僕の耳に心地よく規則正しく聞こえるそれ。

 僕はこの音が好きだ。

 この音が聞こえているときは自分もまた生きているんだと実感できるから。

 こいつが止まったときが僕も死ぬときなんだろうと思っているから。

 君がいる限り僕は生き続けるんだから。


「君は僕。僕は君さ。君とはいつまでも一緒だよ」


 誰かが言ったような気がする。

 あれは誰だったかな?

 ずっと昔だったような、それともごくごく最近のことだったか・・・・・・。

 今となってはそれを知るすべは僕にはない。


ーーーーーートクンッ、トクンッ、と音がなる。

 ボクはいつまでもその音を聴いている。

 この音を聴いているとボクはなぜだか安心する。

 キミがボクを忘れない限り、ボクは生き続けられるような気がするんだ。

 キミがいなくなったときはボクが死ぬ。

 なぜだかわからないけどなぜかそう思うんだ。


「キミはボク、ボクはキミだよ。ボクらは生まれたときからいつも一緒さ」


・・・・・・ダレかが言った。

 あれはダレだったかな?

 懐かしいような、それでいて近しい感じは。

 まぁ、イマとなってはもはやどうでもいいさ。

 もう、イマはそれを知るすべはないのだから。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「・・・・・・ご臨終です」

「そんな。父さん」

「お養父さんっ。う、うぅっ・・・・・・」


 今さっきおじいちゃんが息をひきとった。

 年齢もかなりいっていたし、そろそろヤバイとは誰もが思っていた。

 人が死ぬのはあっけないものだ。誰もそれを止めることは出来ないのだから。

 泣き崩れている父さんと母さんを尻目に妙に冷静な俺は部屋に置かれていた柱時計を見やった。

 今ではもうアンティークの部類にまでなっているぜんまい式の柱時計。

 毎日おじいちゃんはこれを巻くのが日課だった。


『ワシとこいつはな、いっつも一緒だったんじゃ』


 ことあるごとにそう言うおじいちゃんはとても優しげで嬉しそうだったことを覚えている。

 まるで本当にこの柱時計をもうひとりの自分だと言わんばかりに。


「あれ?」


 ふと、なにか引っ掛かりを覚えた俺は柱時計に近づく。

 柱時計はぜんまいを巻いてその動力で動く。そして柱時計は巻かずにいると数日で止まる。

 しかし、それを巻いていたおじいちゃんはこの2、3日間ベッドから起きることすらできずにいた。

 なのでいつか止まるのは当然なのだが、僕は止まった時計を見て驚きを隠せなかった。

 時計は、おじいちゃんが死んだ時間ぴったりで止まっていたのだ。

 これが偶然なのか、それとも・・・・・・。

 今となっては、知るすべはなにもないのだ。

最後までお読みいただきありがとうございます。

なにか残るようなものがあれば幸いです。

感想、評価などありましたらコメントしていってください。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ