いつも一緒
衝動に任せた短編です。
お暇な一時になればと思います。
ーーーーーーカチッ、コチッ、カチッ、コチッ
広い部屋のなか、僕の耳に心地よく規則正しく聞こえるそれ。
僕はこの音が好きだ。
この音が聞こえているときは自分もまた生きているんだと実感できるから。
こいつが止まったときが僕も死ぬときなんだろうと思っているから。
君がいる限り僕は生き続けるんだから。
「君は僕。僕は君さ。君とはいつまでも一緒だよ」
誰かが言ったような気がする。
あれは誰だったかな?
ずっと昔だったような、それともごくごく最近のことだったか・・・・・・。
今となってはそれを知るすべは僕にはない。
ーーーーーートクンッ、トクンッ、と音がなる。
ボクはいつまでもその音を聴いている。
この音を聴いているとボクはなぜだか安心する。
キミがボクを忘れない限り、ボクは生き続けられるような気がするんだ。
キミがいなくなったときはボクが死ぬ。
なぜだかわからないけどなぜかそう思うんだ。
「キミはボク、ボクはキミだよ。ボクらは生まれたときからいつも一緒さ」
・・・・・・ダレかが言った。
あれはダレだったかな?
懐かしいような、それでいて近しい感じは。
まぁ、イマとなってはもはやどうでもいいさ。
もう、イマはそれを知るすべはないのだから。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「・・・・・・ご臨終です」
「そんな。父さん」
「お養父さんっ。う、うぅっ・・・・・・」
今さっきおじいちゃんが息をひきとった。
年齢もかなりいっていたし、そろそろヤバイとは誰もが思っていた。
人が死ぬのはあっけないものだ。誰もそれを止めることは出来ないのだから。
泣き崩れている父さんと母さんを尻目に妙に冷静な俺は部屋に置かれていた柱時計を見やった。
今ではもうアンティークの部類にまでなっているぜんまい式の柱時計。
毎日おじいちゃんはこれを巻くのが日課だった。
『ワシとこいつはな、いっつも一緒だったんじゃ』
ことあるごとにそう言うおじいちゃんはとても優しげで嬉しそうだったことを覚えている。
まるで本当にこの柱時計をもうひとりの自分だと言わんばかりに。
「あれ?」
ふと、なにか引っ掛かりを覚えた俺は柱時計に近づく。
柱時計はぜんまいを巻いてその動力で動く。そして柱時計は巻かずにいると数日で止まる。
しかし、それを巻いていたおじいちゃんはこの2、3日間ベッドから起きることすらできずにいた。
なのでいつか止まるのは当然なのだが、僕は止まった時計を見て驚きを隠せなかった。
時計は、おじいちゃんが死んだ時間ぴったりで止まっていたのだ。
これが偶然なのか、それとも・・・・・・。
今となっては、知るすべはなにもないのだ。
最後までお読みいただきありがとうございます。
なにか残るようなものがあれば幸いです。
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