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第1話 プロローグ
第1章 はじまりの異世界生活
あれは、寒さも残る3月の春の出来事だ、
はぁ、はぁ、はぁ...と息を切らしながらも
原稿用紙の入った紙袋をガッチリ右手の二の腕で固めながら持ち、全力疾走している男がいた...
男が走る先には 大きなビルが、その横にはビルより少し小さな病院が見える。
どうやら男は出版社の人間で、原稿用紙を持ち帰ろうとしているのだろう。
男が交差点を勢いよく渡っているその時、
キキィ!と甲高い音が鳴った、
...そう男は信号無視で飛び込んできた車にぶつかったのだ、交通事故だ...
男の方は左側から突っ込まれたのか、左側の腕がおかしい方向に曲がっていた、脇腹からも服が赤に染まるほどの出血が見られる。そして、男が大事そうに持っていた原稿用紙の入った紙袋はというと、
先ほど吹いた初春の風で
パラパラパラと子気味のいい紙音を出しつつ、空の彼方に消えていった...