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087.中層副料理長

昼の部の投稿でーすノシ

「ああ、カティアは知らねぇのも無理はねぇ。俺ぁ、『見解』の魔眼持ちなんだよ」

「けんかいのまがん?」


 某漫画とかで出てくるような邪眼?を一瞬連想させちゃったけども、イシャールさんの瞳は色彩が派手なくらいで至って普通の瞳孔。

 動物の目だったりとか、おでこに第三の眼があったりもないし……どう言うことなんだろ?


「何万人に一人の割合でも現れるかどうかと言われている異能だ。カティアの年齢ではまだ教わらないだろう」

「そ、そうですか」


 年齢云々にしたって僕は異世界人だから、無知だけで済まない問題だものね。ここはセヴィルさんの言うことに合わせておこう!


「見解の魔眼の特性っつーか、俺が得意なんは体のどっかに魔法をかけてれば大抵見透かすことが出来る。相手が創世神のフィーでもな」

「フィーさんもですか?」


 フィーさんも呼び捨てですか?

 あの人見た目中学生だけど、この世界の神様でど偉い人のはず。サイノスさんは王族のご親戚さんだったからわからなくもないけど。この人の場合、どう言う関係なんだ?


「ああ。で、お前も魔眼持ちか?」

「カティアの場合は違う。色彩が普通ではほぼ無い色だからだ」

「は? なんか万華鏡みてぇに重ねがけしてるようにしか見えねぇが……マリウス料理長やライガーとかは知ってんだろ?」

「上層は彼女の生活区画だから毎回かけるわけにもいかないだろう?」

「それはそうだな」


 なので、僕の虹の眼についてはこの辺で中断。

 それより、ここに居たらいつまで経っても中層調理場に行けない。


「ゼル、空き札ないのかよ?」

「あいにくと今は識札程度だ」

「俺もそんなとこだな。普段持たねぇしよ」


 魔法のことはまだまだちんぷんかんぷん。しきふだと言うのは何回か見てるからわからなくもないけど。





 バンっ‼︎





「お?」

「ん?」

「ぴょ?」


 ここからは人だかりで見えないけど、なんか扉が開いたようだ。


「ここは人が出入りする場所ですが、野次馬が集まる場所ではありませんよ‼︎ 営業妨害として各署に識札を送りますが?」

「「「「『すいませんでしたーー⁉︎』」」」」

「「「「『戻ります‼︎』」」」」


 まさに鶴の一声。

 多分、お姉さんだけど、ハスキーボイスが人だかりに一喝したら、あっと言う間に散り散りになって騎士さん達やメイドさん達とかがいなくなりました。


「ははっ! 俺が出るまでもなかったなぁ‼︎」

「関心している場合か。あれはお前の帰りが遅いのもあるのでは?」

「イシャール料理長‼︎」

「げ⁉︎」


 お姉さんはイシャールさんと同じ黒いコックスーツで、髪はボブショートの猫っ毛で薄いオレンジ色。目は紺色だ。

 その目が超絶怒ってますよーって感じにつり上がってるから怖い! 僕はセヴィルさんのマントの後ろに隠れてじっとすることにした。


「下層とのメニュー決めになーんでここまで時間がかかっているんですか⁉︎」

「あー……まあ、色々あってな?」

「いつもならここまで時間がかかるわけがありません! またミュラド料理長と試作でもしていたんですか⁉︎」

「お、それは半分あってんな? あいつに会ったんでよ」

「あいつ……? って、閣下⁉︎」


 お姉さんがセヴィルさんに気付くと、さっと顔色を青ざめさせてから思いっきり腰を折ってしまう。


(セヴィルさん怖くないのに?)


 でも、僕の知らない事情が色々あるんだろうね。


「シャルロッタ、イシャールが言いたいのは俺ではない。こちらの者だ」

「え?」

「ぴ?」


 僕とシャルロッタってお姉さんの目があったのはほぼ同時だったと思う。


「…………女の子?」


 シャルロッタさんは髪もだけど、目も猫っぽい印象を受ける。猫って、こっちの世界じゃまだ見たことはないけどなんて言うのかな?

 紺色の瞳がぱちくりと見開かれて、僕を凝視してきた。


「……イシャール料理長」

「ん?」

「もしかして……この子が野次馬連中が騒いでいた料理人ってことじゃ」

「お、そうだぜ? 腕も悪かねぇ!」

「ええ⁉︎」

「は、はじめまして……カティアと言います」


 無視するわけにもいかないから、ちゃんと挨拶しなきゃ。


「あ、ごめんなさい。私は中層調理場の副料理長で、シャルロッタと言うわ。でも、本当にこの年齢で料理人?」

「あ、はい」


 女性の役持ちの人はアナさん以外だと初めて見るね。

 僕が頷けば、シャルロッタさんはまた猫目をぱちぱちと瞬いた。


「なんならカティア? さっきの即席カッツをシャルの前で作ってやってくれよ」

「即席カッツ?ですか? それが遅れた理由なんですね?」

「お、お前も見りゃわかるって!」


 シャルロッタさんの尻に敷かれてる感じ、あとが怖いから言わないけどね?


「……作るかはともかく、カティアを案内している途中なんだが」

「え、あ、はい! 噂だけで結構飛び交ってましたね。ここが最後ですか?」

「カティアが来ても問題ない場所としては、だがな」


 お子ちゃまな上に急な来訪者だもの?

 とりあえず、僕らはイシャールさんとシャルロッタさんに続いて中層の食堂に入ることになりました。







 ◆◇◆








(これって、ビュッフェスタイル?)



 所謂バイキング形式で、部屋半分と中央に食事の乗った卓が置かれてて、他は下層のようなテーブル配置になっていた。

 食事の方は無くなったら取り替えやすいようなスタイルは僕のいた世界と変わらないけど、今はおやつ前だから食事している人は少ない。

 少ないんだけど……。


(そんな物珍しいもの見るみたいに僕達を見ないでーー⁉︎)


 下層以上に視線が突き刺さるのが嫌でもわかるよ!

 人だかりだったお姉さんお兄さんとは別で本当に食事しに来てる人達は、僕らが通る度にぎょって目を丸くするんだもの。もう、恥ずかしさなんて書き捨てでセヴィルさんのマントにつかまりながら厨房を目指します!

 それが余計に視線を集めててもこの際無視!


「こちらが厨房になります」


 もう厨房入り口の扉にやって来た。


「お前ら戻ったぞ!」

「「「「『はい、料理長‼︎』」」」」


 ……板長さんとかの集まり?

 って思うくらい、テンションがそう言うのと似てました。見た目は全員黒のコックスーツだから違ってたけど。


「カティア、ゼル。こっちだ」


 雰囲気に呑まれそうだった僕だけど、セヴィルさんと一緒にイシャールさんに呼ばれて更に奥に行くことに。

 途中、やっぱりチラチラお姉さんお兄さんのコックさん達に見られたけど、そこはイシャールさんやシャルロッタさんがなんらかの指示をして撒いてくれました。

 着いた場所は、下層でもあったような料理長さん専用の調理場っぽいところ。

 イシャールさんはそこの前で待つように言ってからどっか行っちゃったけど。


「………………」

「え、えーっと」


 実は、シャルロッタさんの視線が一番痛いです。

 首をくるんと上げれば、猫目がぱちぱちと僕を見下ろしていた。


「……カティアちゃん」

「え、はい」

「イシャール料理長の言葉を疑うわけじゃないんだけど……具体的にどういうものを作ったの?」

「あ、それですか?」


 僕自身のこともだけど、イシャールさんが僕の腕を認めてくれたのが気になってんだね。


「塩分の少ないカッツを作って、それをプチカと蜂蜜と和えて簡単なデザートっぽいのを作りました」

「カッツに……蜂蜜⁉︎」


 シャルロッタさんの最後の言葉に、厨房にもどよめきが広がっていきました。

 やっぱり、蜂蜜にチーズは異色の組み合わせに思えちゃうんだろう。


「俺も魂消たが、結構いけたぜ? コッテージもいいが、シャルにはまず普通のカッツ炙ったの作ってやってくれねぇか?」

「あ、はい」


 材料を取りに行かれてたイシャールさんが、僕でも届きそうな台の上に材料を次々と置いていく。

 それでも、顔を覗き込めるくらいだったんですぐに乗り易い台を持って来てくれました。


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