069.再び情報の共有
昼の部の投稿でーすノシ
僕がサラダとスープを全部平らげてから、クラウのスープスプーンを手に取って掬ってあげた。
「はい、あーん」
「ふぁーー」
零さない程度に8分目で掬ったけど、ゆっくりクラウの口の中に入れてあげる。
はむってスプーンを咥えれば、水色オパールのお目々がキラキラと輝き出した。
「ふゅふゅぅ‼︎」
「美味しい?」
「ふゅ!」
お代わりもっとーって言う風に、手足や翼をジタバタさせたので今度は野菜やマカロニなんかの具も乗せて口に入れてあげれば、賞賛の鳴き声が上がること上がること。
「焦らなくてもスープは逃げないよ?」
「ふゅぅ」
「サラダもちゃんと食べなくちゃね?」
「ふゅ」
半分くらいスープを飲ませてやってから、サラダに移ることにした。
基本、好き嫌いはないようでなんでも美味しそうに食べていた。昨夜の豪華な夕飯の時も同じだったけど。
途中、給仕のお兄さんお姉さんはそんなクラウの様子を見て微笑んでくれました。
「食後のお飲み物はいかがなさいましょう?」
「んー……とりあえず、この子にはお椀に牛乳をもらっていいですか?」
「かしこまりました」
クラウにコフィーはさすがに苦過ぎると思うしね。
僕も子供の体にしちゃ味覚はあんまり大人の時と差異がないんだけど、そこは経験値のおかげかもしれない。
食事も全員静かーに終わって、食後の飲み物も出されてから僕はクラウにゆっくりと牛乳を飲ませてあげた。
「ふゅきゅー……」
お椀いっぱいにあった牛乳をすべて飲み干したクラウはお腹をぽんぽんとさすった。
「ごちそうさま?」
「ふゅ」
朝はこれくらいにしておかないと、お昼にはいーっぱいピッツァを食べる予定でいるから。
「んで、飯も食ったんだからそろそろ話してくれてもいいだろ?」
若干イライラと言うかモヤモヤってされてたのかな?
サイノスさんがコフィーを飲み終えたカップをソーサーに置いて、エディオスさんに聞いてきた。
「ま、話すはいいが……」
「はいはーい。封鎖ね?」
給仕のお兄さんお姉さんはいないもののいつ来るかもわからない。
なので、エディオスさんはフィーさんをチラ見して、気づいたフィーさんがお得意の指パッチンで裏口を隙間なく黒い壁で覆わせた。
これには、一人昨日までの事情を知らないサイノスさんは当然驚かれました。
「入念過ぎねぇか?」
「それだけのことだと認識しとけ」
「ゼルのことだろ?」
「正確には、カティアとゼルのことだ。あとファルのこともちぃっとあるが」
「は?」
さて、どれから話すのかな?
「エディ、僕から言おうか?」
「いや、ここは城の主である俺の方がいいだろ。とりあえず、サイノス。さっきのゼルの笑顔以上に驚くのは構えておけよ?」
「……マジ?」
「大マジ」
「……わかった」
あ、と言うことは?
「つい一週間前程度にだが、カティアとゼルは御名手同士になった」
「え……って、はぁあ⁉︎」
ガタンと椅子を倒してサイノスさんが立ち上がった。
そして、エディオスさんもだけど僕やセヴィルさんを交互に見てきた。
「おいおいっ⁉︎ タチの悪い冗談じゃねぇよな?」
「事実だ」
すぐに返答したのはセヴィルさん。
僕は恥ずかしいのでコフィーを飲みつつ黙っています。
「いや、だっておかしいだろ⁉︎ 年の差がかつてないくれぇ離れ過ぎやしねぇか?」
「まだ続きはあんぞ? カティアは今の見た目こうだが、実際は成人してんだ」
「……100未満の見た目で?」
「お前とさっき会った時変だと思ったとこはねぇか?」
「え、あ……まあ、やけに大人びてんなとは思ったが」
僕の実年齢言っても信じてもらえないだろうね。
だって、こちらの成人年齢の10分の1程度だもの。
「見た目とかはひとまず置いとく。それよりも最たるもんがあんだ」
「え?」
「カティアは異邦人だ」
「は?」
「それに付け加えるけど、私も前世はカティと同じ世界の出身者なの」
「ちょ、ファルもか⁉︎」
もうどこから驚けばいいのって言うのがありありとわかりますね。
サイノスさん思わず頭抱えちゃい出したもの。
「それを俺以外全員が知ってる……?」
「俺やミーアとかも昨日知ったばっかりだよ?」
「にしては冷静過ぎねぇか?」
「まあ、妻の事情だけは最低知ってたし?」
「なんで黙ってた?」
「ミーアの実家があれなのと、言って信じられると思う?」
「……思わねぇな」
ファルミアさんのご実家のことはサイノスさんも知っていたようだ。そっちの詳しい事情はまだ僕はよくわかってないけど、あんまり表沙汰しにくいことらしいからね。
「はー……とりあえず聞くが、なんで異邦人が一人どころか二人もこの世界にいんだ?」
「どっちも原因不明。ミーアに関しては特にわかんない。管理者の僕でも知ってはいたけど転生だったからどうしようもなかったし?」
フィーさんでも原因不明なことがあるんだ。
って、僕のこともそうだった。
「ちなみに異邦人って証拠はあんのか?」
「そうね。カティ、ちょっとお話しましょうか?」
「と言うと?」
「今日のピザ……ピッツァのメニュー決めをここですればいいのよ。あ、食材の名前はあちらのままにしましょうか」
「わかりました」
それは物凄い助かります。好き嫌いとかも聞くのにちょうどいいから。
それでサイノスさんが信じてくださるかは微妙だけど。
「ソースはベーシックにトマトソースかしら?」
「ここで作らせていただいたのには、ジェノベーゼとマヨネーズもですが」
「あらバジリコソース? 松の実は需要ないからナッツかクルミを入れたの?」
「ですね」
「男性にはいいわね。うちは男所帯多いから助かるわ。マヨネーズには何を乗せたの?」
「照り焼きチキンです」
「テリマヨ……鉄板過ぎるわ! 私も照り焼きチキンは得意だけどメインかサンドイッチ程度にしか考えてなかったもの」
それから更に話題はぽんぽんと進んでいく。
「トマトソースは無難にマルゲリータとかなの?」
「お肉系にはベーコンポテトとソーセージポテトにしましたね。あとはデザートピッツァに生クリームをベースにして、ベリーミックスやハニーチーズもしましたが」
「え、ハニーチーズ?」
「イタリアではオーソドックスなピッツァですよ。チーズも一種類よりはゴルゴンゾーラも入れて四種チーズにしたかったんですが見当たりませんでしたし」
「おいおい、もういい。料理人同士の会話は後でしてくれ」
「あら、全然メニュー決めてないのに?」
僕も話し足りなかったけど、サイノスさんが待ったをかけてきたのでとりあえず口を閉じました。
「いや、参った。そんなけスラスラ言えるんなら俺も受け入れる。ただ……」
「ただ?」
何を懸念されてるのかな?
「カティアの実年齢はいくつだ?」
「あら、それは私も聞いていないわね?」
「そうだね」
そう言えば、ヴァスシード側にもまだお伝えしていませんでした。
「え……っと、ファルミアさんはそこまで驚かれないでしょうが、向こうの成人年齢は20歳で僕もそうです」
「……嘘だと言ってくれ」
「すみませんが、事実です」
サイノスさんこれは受け入れ難いというかなんかで項垂れちゃいました。
「あら、そうなるとこっちに合わせたら大体280歳前後ってところね」
「え? そうなんですか?」
「ええ。200は蒼の世界基準にすると外見は16歳前後の高校生くらいなの。20歳基準は日本の最近の法律で変わったことだし、18歳以下で成人出来るのは海外だとちょこちょこあるそうよ」
聞いたことがあるようなないような?
だけど、日本の法律って色々変わってきてるし選挙権の審議もしょっちゅうされてたから。
「え、じゃあカティが元の身体に戻れば見た目も280程度になるってことかい?」
「元に……って、この見た目じゃねぇのか?」
「あ、そうそう。たしか封印術が何かしら施されてるそうなんだよ」
「穏やかじゃねぇなぁ……」
封印はやっぱり穏やかじゃないそうだ。
どう言った経緯かは未だ不明だけど、僕の体と魔力は何故か封印状態らしいし。
「んで、御名手には何故なれたんだ? 異邦人同士じゃあり得ねぇと思うが」
「そこは本人同士の話し合いもまだだから、僕らも聞いちゃダメだよー?」
「あ? なんかあんのか?」
「んふふー、とりあえずはそっとしといてあげてよサイノス」
「まあ、フィーが言うならそうしとくが」
是非そうしておいてください。
「っかし、とんでもねぇ内容ばっかだったな。そりゃ、あれぐらい封鎖する理由も頷けれるぜ」
「あ、もう一つあるぜ?」
「何?」
「そこにいるクラウは聖獣とかってカティアが誤魔化しただろうが、実際は神獣だ。しかも、昨日ここの地下の聖洞窟奥で生まれたばっか」
「…………それが、神獣だと?」
「ふゅ?」
呼ばれてクラウはこてんと首を傾いだ。
相変わらず、自分がどう注目されてるかわかんないみたい。
「それがなんでカティアの守護獣になったんだ?」
「ディシャスが昨日無理にカティアをそこへ連れてって、卵から孵したカティアを主人と認識したからだそうだ。まあ、見ての通りカティアにえらく懐いてるだろ?」
「……あの遠吠えん時にそんなことが?」
「カティアとゼルの事もだが、これは極秘だぞ?」
「言えるわけねぇだろ」
言ったところで誰も信じられないような内容ばっかりだし、サイノスさんも無闇に吹聴するような人ではない感じなのは僕でも思う。
人がいいと言うか、雰囲気から頼れる兄貴!な感じが漂っているもの。一種のカリスマ性とでも言うのかな?
「じゃあ話もまとまったことだし、私とカティはピッツァ作りに入らせてもらうわよ」
「あ、そうですね」
今日の大所帯じゃ、生地を仕込むのもいつも以上に時間がかかっちゃうもの。
「お、そうだな。んじゃ、サイノスも昼はこっちに来いよ。滅茶苦茶美味いもんが食えるぜ?」
「さっきのメニューの話じゃよくわかんなかったが、たしかパンの一種ってカティア言ってたよな?」
「はい。カッツをーーふが」
と僕が詳しく説明しようとしたら、白い手によって口を塞がれてしまった。
「まあまあ、中層のも美味しいけど期待しておいてよ。君もきっと気に入るだろうから」
誰だと思ったら、フィーさんでした。
「ほーぉ。エディもだがフィーがそんなけ言うんならすげぇもんなんだな?」
「俺もまだ食べてないけど、そんなにも美味しいの?」
「ああ。神域で俺は初めて食ったが、そこいらのバルなんか行くより断然美味かった」
「そりゃ楽しみだ。んじゃ、昼にまた来ればいいんだな?」
「ふぃーしゃん、まふぁはずしてくふぇないんでふ?」
「ああ、ごめんね?」
窒息はしないけど、息しづらいに変わりはない。
手が外されれば、僕は一度大きく深呼吸した。
「あ、そうでした。サイノスさんやヴァスシードの皆さんの苦手な食材ってありますか?」
これ聞いとかないといけないいけない。
「俺はないよー」
『特にない』
「私もこれと言ってないわね?」
「俺もなんでもいいぞ」
好き嫌いアレルギーがないことを確認出来たならば、本日もピッツァ作りに繰り出しますか。