599.女でよかった
お待たせ致しましたー
◆◇◆
同棲スタートのために、服が必要なのは引っ越しと同じだからわかる。
今までの服は、ほとんどアナさんのおさがりをサイズダウンしたりしてたから新調しなきゃいけないのもわかる。体が成人サイズになってからは、コロネさんが何着か仕立ててくれたのもあったけど⁉
「さあさ! カティアさん? お好きな生地をお選びくださいな!」
今回は生地から選ぶって、どんなけ大がかりな着せ替えごっこになるわけ⁉
「こ、こんなにも⁉」
「ふゅぅ(布いっぱーい!)」
アナさんの部屋に、どんどん生地の束が運ばれてくる。これでも少ない方らしく、メイドさんたちが下がってからは、セリカさんとシャルロッタさんがささっと手に取り出した。
「青がよくお似合いですから、この色は外せませんね?」
「ですね、シャルお姉様。カティアちゃんは、本当に青がよくお似合いですもの」
「……セリカ様。あの、事実上義姉にはなりますが。貴女様は神王妃殿下になられる御方ですよ? 敬語は」
「今までがそうだったので、今更直せませんよ? お姉様も昔通りでいいですから」
「……それは、さすがに」
「ふふ。姉妹の仲を深めるのもいいけれど、今はカティアさんのお洋服づくりへの準備よ?」
「「あ、はい」」
「カティアさーん、どうぞこちらにいらしてくださいな?」
「……はい」
交友を深める光景を眺めているだけではいけないようなので、おとなしく合流することにしました。
色々な布があったけれど、個人的に気になったのを手に取ったら、横にいたセリカさんが『まあ』と声を上げた。
「そのお色、ゼルお兄様のお目のお色ね?」
紺というか、藍色にも近い。でも、ちょっと紫も混じっているような暗色系。だけど、光沢もあってすごく綺麗な布だ。色も気に入ったけど、布としても気になって……どんな服に出来るのか、試したくなったんだよね?
「これ、どういう服に出来るんですか?」
「ドレスもいいけど、カティアちゃんとしてはワンピースもいいわ。動きやすい服も欲しいでしょう?」
「さすが、セリカさん」
庶民としての育ちもあるから、僕と服装の意見は一致してくれるところは助かる。僕はまだまだ前世の生活が長かったから、ジーパンやTシャツばっかりイメージしちゃうけど。でも、セヴィルさんと結婚するならお貴族さんになるのと同じだから服装は少し気をつけなくちゃいけないもんね。
「まあまあ! でしたら、布の余裕もありますのでワンピースとドレス一着ずつ仕立てましょう!」
「デザインは愛らしい寄りがいいですね、殿下」
「美貌を活かす方も捨てがたいわ」
「ですと、三着」
「多いですって⁉」
「たっぷりご用意するのですから、もっと必要ですわよ?」
「えぇ……」
セヴィルさんはどうなっているかわかんないけど……色んな服を着て褒めてくれるのなら、いいのかな?
セヴィルさんは、なんだって似合うって言ってくれるけど。まだ子どもの姿だった時にフルドレスでお披露目した時は一番驚いてたから。
なら、と僕は皆さんにそのことをお伝えすると。
「閣下に最高に驚いてもらいましょう!」
「小物とかはお任せくださいまし!」
「最高に綺麗にしましょう!」
僕が男でいたいって、前世ではわがままな性質もあったけど。
大切な人ができると価値観が変わるって本当なんだな。『女』でよかったって、今なら思えるから。
次回はまた明日〜




