587.懐かしのパンツェロッティを-①
お待たせ致しましたー
美味しいお茶を飲んだら、小腹が空いてきてしまった。
緊張が高まっているのに、体は正直だ。虫の音も響いたので、セヴィルさんには苦笑いされたのでありまする。
「何か用意するか?」
「……ここって、使用人さんとかいるんですか?」
「管理人のようなものは置いているが、常駐ではない。俺が作れなくないからな」
「セヴィルさんが?」
「城ではほとんどしないが、俺もエディオスらと昔はあちこち行ったりしていたからな。簡単なものなら出来る」
「……じゃあ、いっしょに作ります?」
セヴィルさんと共同作業ができたら、きっと楽しいだろう。なので、提案してみればセヴィルさんは頷いてくれた。
「貯蔵庫に行こう。食材は保存の魔術がかかっているから、悪くなっていないはずだ」
それでも定期的に入れ替えてはいるらしく……案内された貯蔵庫に行けば、新鮮な野菜から保存のきくものまでなんでもあった。これがセヴィルさんのために、と用意されているものだと思うと……料理する姿がどんなものになるのか、想像するだけで楽しい。
とりあえず、僕らの思い出の味であるピッツァ……パンツェロッティを作ることにしたよ!
「生地の仕込みに必要な材料もあるだなんて」
「俺は作れないが、たまに管理人が自分でパンを作るらしい」
「なるほど。セヴィルさん、時間操作の魔術……出来ます?」
「? 生地に使うのか?」
「はい。僕だとまだ成功しにくくて」
「わかった」
発酵の手間を省けるのであれば、ここは協力しなくちゃだからね。セヴィルさんだと無詠唱でパパッと出来るから、相変わらず凄い。
具材はシンプルなトマトソースとベーコンにチーズ。
もう片方は、ジェノベーゼ。にんにくあるけど。僕らだけだから気にしない。
キス……するかはわかんないけどね!?
それはともかくとして、セヴィルさんの料理技術は普通より少し上くらいだった。つまり、手際がいいのだ。
「閉じて……セヴィルさんひとつずつでいいです?」
「とりあえずはそうだな」
「余ったら、クラウが全部食べちゃいそうですもんね」
「違いない」
緊張が少しずつほぐれてきたけど……やっぱり、ずっとドキドキしちゃう。
バカンス以来だから、セヴィルさんとこんなにもたくさん話すのが。
なので、進展はともかく……セヴィルさんともっとたくさんいっしょにいたい。
料理も嬉しいけど、そんな穏やかな時間も過ごしていきたいのだ。
パンツェロッティは、美味しそうに出来上がったから食堂の部屋で食べることになった。クラウは起こしてあげたら、いい匂いってよだれを洪水のように流したので、拭くのが大変だった……。
次回は月曜日〜