542.関係の先(アナリュシア視点)
お待たせ致しましたー
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆(アナリュシア視点)
(素敵だわ〜〜!!)
誰が、と言うのはゼルお兄様とカティアさんの事。
後ろからちらっと拝見してしまったけれど……愛の口付けをされていらっしゃるところを、たまたま目にしてしまったの。
冷めた性格から、かけ離れた『愛おしい』感情を顕にされていらっしゃるの。抱擁、口付けを惜しみなく与えられるだなんて……素晴らしい事だわ!!
お二人とも、とてもお美しくていらっしゃるから……お似合い過ぎて、つい見惚れてしまうわ。ほぅとため息をついていると、わたくしの目を覆うように大きな手が視界を塞いだ。
「まあ、サイノス様?」
遮ったのは、わたくしの愛おしい御方……サイノス様だった。御名手となったことで、もうお兄様とは呼ばないように気をつけているのだけれど。その方が何故かわたくしの前を手で塞いだ。どう言う事なのかしら?
「見過ぎだ。あいつらの邪魔するようなことをするな」
「そんなつもりはありませんわ」
「ガン見してたじゃねぇか」
「見惚れていただけです」
「言い方変えても一緒だろ」
それよりも、とサイノス様は何故かわたくしを懐に抱きしめてくださいましたの?! たくましい腕と厚い胸板が! わたくしの少しふくよかな身体を強く抱きしめ、離してくださいません!?
「さ、サイノス様!?」
「せっかくの休暇だ。俺らだって、少しはいちゃつきたくないか?」
「ま……まあ!」
御名手になる前は、将軍と統括補佐としての職位。神王の妹と六大侯爵家の一員。幼馴染みなどと、関係は色々あったけれど……それらを乗り越えて、今があるのだ。もっと前からわかっていたかもしれない事だったが、わたくしの一方的な後ろめたさから……サイノス様を避けていた。
それが間違っていたのだけど……皆様のおかげで、サイノス様と向き合う事が出来た。生涯を共にする御名手にもなることが出来た。
だから、今が大事なのは誰もが同じ事。
わたくしもそれを実感しますと、大きな背に腕を回したわ。
「……なあ、アナ」
顎に手を添えられ、上向けにされますと……すぐに温かい口付けが降ってきた。見られるかも、と言うのを気にしてはいけない。四凶様とフィルザス様以外、ここでは御名手ばかりですもの。
何度か口付けを繰り返した後に、わたくしは返事をすることにした。
「何ですの?」
「……そろそろ、この問いかけをしていいと思ってな」
「そろそろ?」
何のことかわからずに首を傾げると、サイノス様は耳元で囁いてくださった。
「今夜、俺の部屋に来ないか?」
それは、わたくしの髪色以上にわたくしの顔を赤くする衝撃的な問いかけでしたわ!?
だけど……嫌などと思う気持ちはなかった。わたくしもいつか……と望んでいたことだから。なので、少し間を置いてから頷いた。
その反応を見せた後に、サイノス様は嬉しそうに破顔され、ゼルお兄様がカティアさんにされたのと同じような……情熱的な口付けをわたくしに施したのだ。
次回は火曜日〜