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051.卵の殻が実は…?

本日最終話ですノシ

 

(証拠隠滅って、え、この殻とってもやばいものなの⁉︎)


 とか僕は焦ったが、こっちに戻ってきたクラウが欲しがってたので仕方なく大きな破片を割ってから与えた。


「まあね。神獣は基本僕の管轄下に置いてるけども、まーだどこかで隠れてるお馬鹿な子達には殻でも価値があるからって裏取引しかねないからさ」

「俺もあたってるが、あれなかなか引っかかんねぇもんなぁ」

「たしかに、そう言った輩にはクラウの卵の殻でも宝石並みの価値はありそうだ」


 怖いお話になってきた。

 僕は出来るだけ聞かないように努めて、クラウにその卵の殻を食べさせてあげる。


「カティアさん、わたくしにもさせていただけませんか?」

「あ、いいですよー」


 僕がそう言えば、やったって言う風にアナさんは嬉しそうに笑い、ちょうど食べ終わってたクラウに新しい殻の破片を差し出した。


「クラウー、こちらも召し上がってくださいましな」

「ふゅ!」


 最初みたくアナさんを怖がることなく、目先の欲望が優先だったのかクラウは臆することなくアナさんが持ってる殻にかじりついた。


(なんか餌付けしてるみたい……いや、間違ってないかも)


 だけど、この殻はそんなにも美味しいんだろうか?

 僕はまた一個を袋から取り出してつるつるのそれを見てみた。

 一見ホワイトチョコレートにも見えなくないけど、表面も内側もオパール石みたいな光沢を持っている。

 チョコ……こっちじゃココルルだけど、クラウは相変わらずバリボリ食べている。

 じんぞくって、多分人間のことだろうけど食べても美味しくないらしい。


(って、さっきカルシウムの塊だと思い込んで拒否したじゃないか)


 だけども、こんなにも積極的に食べてるクラウ見てると美味しそうに見えてしまう。あとは、フィーさんがクッキーみたいに甘いとか言ってたので少し気になってきていた。


(ーーーー…………一口だけ、含んでみようかな?)


 アナさんがクラウに殻を上げてるのに気を向けてるのを横目に見て、僕は手にしてた卵の殻をおそるおそる口に持っていく。


「…………あ、甘い?」


 予想してたクッキーとは違って、チョコのような甘味が口いっぱいに広がってきた。

 ぱきりと噛んで口に放り込めばジャリジャリとしてたけど、ほとんどミルクチョコのような味だった。

 不味いどことか高級チョコ並みに美味しすぎた!


「あれ、食べてみたんだ?」


 気づいたのか、フィーさんが話を中断されて僕の方を見てきた。

 エディオスさんやセヴィルさんはギョッと目を丸くされてたけど。


「カティア、食ってんのかよ⁉︎」

「害はないと思うが食べられるのか?」

「チョ……じゃなくて、ココルルみたいに美味しいです」

「マジ?」


 エディオスさんはまだ信じられないという風だったが、興味はあるようで席を立って僕の方にやってきた。

 僕は殻を食べながらも、手頃なサイズの殻を袋から出してエディオスさんに手渡す。


「ほぉ……こりゃ宝石か洸石(イルマ)に近いなぁ?」


 しばらく殻の破片を色んな角度で見てたけど、やがておそるおそるって感じに先端を口に含んだ。

 が、すぐに口から出しちゃった。


「って、はぁあ⁉︎ 美味くもなんともねぇぞ! 石含んだ気分にしかなんねぇって‼︎」

「あれぇ?」


 僕まだ食べてるけど、チョコみたく美味しいのに?


「カティアさん、わたくしにもよろしくて?」

「俺にもいいか?」

「あ、はい」


 アナさんやセヴィルさんの手にも破片をおくと、未だぺっぺっされてるエディオスさんは放っておかれて、それぞれ口に含んだ。

 けれど、


「美味しいとは思えませんわ⁉︎ エディお兄様と同じく石を含んだようになります……」


 アナさんもどうやらダメだったみたい。


「…………たしかに、ココルルみたいだな?」

「セヴィルさんも甘く感じます?」

「ああ。通常のココルルよりはいくらか食べやすい甘さだが」


 甘い物が苦手らしいセヴィルさんがそう言うならば、これはやっぱり高級チョコの部類に入るのかもしれない。

 と言っても、食べれたのは僕とセヴィルさんに、まだバリボリ食べてるクラウくらいだけど。


「うーん。多分カティアはクラウの主人だからで、セヴィルも食べれたのはそのカティアの御名手だからかなぁ?」


 フィーさんはエディオスさんが持ってた破片を奪い取って、しげしげと眺めがら見解を述べていた。

 そして、自分も試しにと含んでからぱきりと噛み砕いた。


「僕は神だから食べれるけど、ココルルよりはクッキーみたいに思えるねぇ?」

「そんな石の塊みてぇなもんよく食えんなぁお前ら……」

「毒じゃないし、僕別に石でも食べれるけど?」

「そーだったな……」


 石が食べれるって、動物ですか?

 忘れがちだったがこの人神様でしたね……。


「ふゅぅー」

「あ、はい。全部食べてもお腹壊さない?」

「ふゅ」


 まだ欲しいーってアピールしてくるクラウに僕は新しい破片を差し出した。と同時に、クラウはかぷりと食らいついてバリボリ食べ出した。


「口直しにコフィーでも飲むか……」


 パチンとエディオスさんが指を鳴らせば、給仕のお兄さんがすぐにやってきた。


「陛下、いかがなさいましたか?」

「コフィーを人数分持ってきてくれ。あー……クラウどーすっか?」

「聖獣には水でいいと思うよ?」

「んじゃ、追加で椀に水たっぷり用意しろ」

「かしこまりました」


 注文を受け取るとお兄さんはすぐに裏へ戻っていった。

 神獣と言いかけそうだったから危なかった。フィーさんが先に言ってくれなきゃ、僕も口が滑りそうになってしまってただろうから。

 コフィーは珈琲とほとんど変わらない飲み物で、僕は割と好きだな。ミルクも砂糖も入らず、ブラックでもとても飲みやすい。

 それから5分くらいで給仕のお兄さんお姉さんが人数分のコフィーのカップを持ってきて、クラウには銀製のお椀を出してくれた。


「クラウー? 食べるのも良いけど、水とかもお飲み?」

「ふゅぅ?」


 生まれて初めてみる水にまたもやはてなマークを思い浮かべて、どう飲んでいいのかわからないみたいだ。

 なので、僕は手本としてお椀を自分の口に寄せて飲むふりをしてみる。


「こうやって飲むんだよ? 僕が支えてて上げるから飲んでごらん?」

「ふゅ」


 クラウの口元にまでお椀を持ってってあげて、背中の方も支えてあげた。

 ぴとっとお椀の端が口元に来れば、クラウははむっと咥えちゃった。

 少しだけお椀を傾けて水が来るようにしてやれば、


「ふきゅ、ふきゅ」


 勢いよく水を飲み出してしまい、お椀いっぱいにあった水があっという間に空っぽになってしまった。


「けきゅー……」


 満足したようで、ぽんぽんと自分のお腹をさすっていた。

 殻の方はアナさん達から受け取ったのを含めればそんなにない。だけど、証拠隠滅のためもあるからクラウには食べてもらはないとね。

 給仕のお兄さんお姉さんが裏に下がったのを見て殻を寄せれば、またぱくりと頰張り出したけど。


「しっかし、こいつが他の聖獣らに交信させてたとはなぁ?」


 エディオスさんがコフィーを飲みながら唐突に言い出した。


「エディ、それ本当?」

「ああ。俺とゼルがディシャスに聞いたからまず間違いはねぇ。どーも、クラウは卵の状態から周囲に自分の主人になる奴を引き寄せようと聖獣らにずっと言ってたらしいぜ?」

「そして見つかった今日になって、聖獣達が歓喜の遠吠えをするなどと後が立たないようでな。今頃は落ち着いてるとは思うが」


 僕が準備してる間にディシャスのとこに行ったんだ。

 なんだか大変だったらしいけども、ディシャス大丈夫だったろうか? 怒らないでねとはお願いはしたけども、多少なりとは叱られたはずだ。


「ふゅ?」


 僕がなぁに?とクラウ本人は一向にわかってないようだ。


(あ、そう言えば)


 随分と今更な事を思い出した。


「クラウってつけちゃったけど、この子って性別あるんですか?」

「基本神獣にはないよ?」

「んじゃ、どうやって卵とか出来るんだよ?」

「気になりますわ」


 エディオスさん達も同じとこにぶつかったみたいだ。

 フィーさんはコフィーのカップ片手に思い出すように首をひねり出した。


「神獣の寿命は下手したら僕ら神に匹敵するからねぇ。次世代に子孫を残すって考えはあんまりないらしいけど、稀に老成に近いものが自分の神力を絞り出して分身のような存在を生み出すと言われてるんだ。クラウの場合はじい様の世界のものだったから詳しくはわかんないけど、似た感じだと思うね」

「そういや言ってたな……ってことは、クラウもある意味異邦のもんか」

「ふゅ?」


 わからないでいるクラウは最後の欠片を口に入れていた。

 僕はもうないよと手や袋が空っぽだと教えれば、まだ不服そうに耳をしょげていた。

 どうやら、この子はお腹いっぱいを覚えないみたいだ。

また明日〜ノシノシ

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