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045.帰還と対面

本日最終話でーすノシ

 








 ◆◇◆








 転移の魔法で、洞窟から元のゲストルーム前まで戻った僕ら。

 窓は開けっぱなしなままだったが、何故かドアまで開けっぱなしだった。誰かが見に来たと言うことは、この部屋の様子を見てエディオスさん達に知らせに言ったかもしれない。


「絶対心配かけちゃってるね……」

「ぎゅ、ぎゅぅるぅ……」

「とりあえず、部屋に降ろしてもらえる?」

「ぎゅぅ」


 頼めば、ディシャスは僕と獣ちゃんを部屋の中に降ろしてくれた。ディシャスの手が離れてから、僕は獣ちゃんを抱き直した。


「あとは、この子だよね……」

「ふゅ?」


 ピコピコと翼を動かしてる獣ちゃんはわからずに鳴いていた。

 すると、くるんと振り返ってきてつぶらな水色の瞳で僕をジーっと見つめてきた。


「ふゅ?」

「どう説明しようか……」


 急展開過ぎて、拙い説明しか出来る自信がないよ……。


「……まあ、そんなに経ってないと思うし。ひとまずエディオスさんの執務室にでも行こうかな?」


 だけども、窓の外にいる脱走犯の竜さんはどうしようか?

 主人の名前を出したら、またびくんと体を揺らしてはいたけどさ。


「……ディシャス、自分で帰れる?」

「ぎゅ……ぎゅぅ」


 帰れるようだが、やっぱり無断で脱走してきただろうから罪悪感は少なくともあるみたい。

 獣ちゃんのとこに連れて行ってくれたのは悪い事じゃないと思うけど、いきなりだったからね?


「仕方ない。僕がなんとか怒られないように言っておいてあげるよ。君は獣舎にお帰り?」

「ぎゅぅ……」


 ありがとうと言う風に、ディシャスは僕に頬ずりしてきた。

 そして、建物から少しだけ後ろに下がってから巨大な翼をバサバサ動かし出した。





 ギィシャァアアアア!






「あ」


 そんな大声出したらやばいのでは⁉︎

 でももう遅かったし、準備が整ったディシャスは翼を動かして空中に浮かび上がった。


「ぎゅぅるぅ!」


 またねー、って感じに言い残してディシャスは飛んで行ってしまった。

 僕もなんか言いたかったけど、翼から起こされた風を顔面に受けてたし、獣ちゃんと卵の殻を落とさないよう必死だったから返事は出来なかった。

 やがて、完全に姿を消したディシャスを見送った僕は、落ち着いたらベッドの方に歩き出した。


「君はちょっとここで待っててねー?」

「ふゅ」


 すぐに執務室に行くにも準備は必要だ。

 僕は獣ちゃんをベッドの上に降ろしてからクローゼットに向かう。

 卵の殻をそのまま持っていくと落とす可能性があるので、僕はクローゼットの中から大きめの巾着袋を探し出す。見つかれば、その中に殻を全部入れて紐できゅっと口を閉じた。


「お待たせー。じゃあ行こうか?」

「ふゅ」


 ベッドに戻れば、獣ちゃんは抱っこ抱っこーってして欲しい感じにちみっちゃい手を僕に差し出して足をバタつかせていた。

 安定の可愛さに僕はメロメロになりそうだったけど、袋を肩にぶら下げて両手でしっかりとその子を抱き上げた。





 バァーン!





 扉を叩く音が聞こえて、なんだと振り返った先には息を物凄く乱していたセヴィルさんがいた。


「セヴィルさん⁉︎」

「カティア、無事か⁉︎」


 僕の姿を確認するや否や、セヴィルさんはその場で大げさなくらい大きなため息を吐いた。

 そして、息を整えてから駆け足で僕の所までやってきた。


「ディシャスに連れられたらしいが、何もなかったか⁉︎」

「え、えーっと……」

「ふゅ?」


 今抱っこしている獣ちゃんについて物凄くありましたとも!

 セヴィルさんが当然気づかないわけがなく一瞬顰めっ面をしたが、僕の腕の中にいる獣ちゃんを見ると瑠璃色の瞳を丸くした。


「……なんだそれは?」

「ふゅ?」

「あ、あのですねー……」


 どう説明すればいいんだろうか?


「おい、ゼル先に行くなっての‼︎」

「ゼルお兄様、カティアさんはご無事で⁉︎」


 また場がややこしくなりそうです。


(獣ちゃんのこともだけど、僕の失踪をどうやって説明すればいいんだ!)


 あわあわと口が動いてしまい、顔から背中にかけて冷や汗かなんかわからない大量の汗が流れていく。


「って、ゼル! カティアこっちに戻ってたか⁈」

「あ、ああ。ここに居る」


 エディオスさんの問いに、セヴィルさんは獣ちゃんから視線を外して彼の方に振り返った。

 なので、必然的に僕と抱っこされてる獣ちゃんの姿が見えるわけで。


「お、居たのかよ。って、なんだぁそいつ?」

「聖獣……にしては初めて見る種類ですが、愛らし過ぎますわ⁉︎」

「ふゅ?」


  なぁに?って、獣ちゃんはわからないと言う風に鳴き声を上げた。


「ちょっ⁉︎」

「なんて愛らしい鳴き声ですの⁉︎ カティアさんその子を抱かせてくださいまし‼︎」

「えーっと……」


 僕への心配は一体どこに?

 獣ちゃんに注目が集まるのはしょうがないけども、アナさん興奮し過ぎだと思います。

 扉からこっちまでダッシュしている間の顔が、美人に似つかわしくない鼻息荒い形相です!


「ふゅぅ⁉︎」


 その勢いにびっくりしたのか、獣ちゃんはアナさんに背を向けて僕の服にしがみついてきた。


「まあ、何故こちらを見てくださいませんの?」

「アナが興奮し過ぎだからだろう。少しは落ち着け」


 セヴィルさんは僕ごと抱きつきかねないアナさんの法衣を掴んで押さえてくれた。


(あ、危なかったぁ……)


 抱きつかれるのはいいけど、アナさんの豊満なお胸なんかは僕の顔の位置に来そうだから窒息しかねないところでした。

 獣ちゃんはまだアナさんを警戒してるのか、ぷるぷると震えていた。なので、僕は頭の後ろをよしよしと撫でてあげた。


「怖がる必要はないよ? アナさんはとってもいい人だから」

「……ふゅ?」


 ほんと?って、水色オパールのお目々をうるうるさせながら僕を見上げてきたので、僕はしっかりと頷いた。


「うん、大丈夫だよ? 向こうに顔向けてあげて?」

「…………ふゅ」


 そろりと獣ちゃんはアナさん達の方に振り返った。

 まだ興奮冷めやらぬアナさんだったけど、警戒させちゃったのに少しばかり反省しているようだ。獣ちゃんの顔を見てもさっきみたいに興奮し過ぎた声は上げなかった。手は反対にわきわき動かしてるけども。


「ふゅ?」

「……っ、やはり愛らし過ぎますわ‼︎ カティアさん、その子は一体どうされましたの⁉︎」

「俺も聞きてぇな。どっから連れてきたんだよ?」


 エディオスさんもアナさんの隣にやってくると、上体を少し曲げて獣ちゃんを見やすいくらいにまで顔を見合わせてきた。

 獣ちゃんは始めびくっと体を揺らしたけれど、エディオスさんがアナさんよりはずっと落ち着いてる雰囲気だったからかジーっと見つめ合っていた。


「……ふゅ?」

「おーおー、やっぱ変わった鳴き声だな?」

「ふゅ?」

「……しゃべってるつもりでもお前と契約してねぇからわかんねぇよ。んで、カティア。こいつどこで……の前に、ディに連れられたんだよな?」

「あ、はい」


 振り出しに戻ったけど、ちゃんと言わないとね。ディシャスのことあんまり怒んないでほしいことも言わなきゃだから。

 とりあえず、獣ちゃん誕生前の経緯までは簡潔に皆さんに説明した。話し終えたら、三人ともおっきなため息吐いちゃったけど。


「まさか初日ん時の匂い付けでここまで来るとはな」

「匂い付け?」

「顔に何度もしつこく舐められただろ?」

「そうですね」


 今日も無茶苦茶舐められたけども。


「竜の唾液にも魔力が宿っててな? ディはそれでカティアを探し当てたんだ」

「……なるほど」


 移動に関しては、僕に沁み付けた魔力を辿って転移の魔法を行使したからだろうとエディオスさんは呆れた様子で言った。


また明日〜ノシノシ

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