426.とうとう知る-③
お待たせ致しましたー
「……わかった。出来るだけ戻してみるけど、辛かったら、すぐに教えて」
「はい」
僕が強く頷くと、フィーさんは僕が握っていた手をほどき……今度は僕の両手を自分の手で包み込んでくれた。
そのあとに、僕らには聞き取れない呪文を唱え……だんだんと、僕の意識が遠のいていく。
遠のくにつれ……意識が、真っ暗になった。
ここはどこだろう? と思っていると、聞き覚えのある声が……僕の耳に届いた。
慌てて探すと、暗い闇が少しずつ晴れてきて……暗いは暗いけど、街灯か何かで少し明るい。
まさか、と歩いてみると……僕は空を飛んでいるようだった。夢の中だから、なんだって出来ると思ったりはしたが。
とにかく、声を頼りに目的地に向かうと……いたんだ。
『奏樹』の姿が。
街中を、くたびれた様子で……黑の世界にトリップ、ううん、転生する前の姿。二十歳の調理人見習いの僕の姿が……ちゃんとあった。
ここは……夢ではあるけど、僕の『記憶』だ。
ここから先……僕が何で『死んだ』かをきちんと自分で確かめなきゃいけない。
僕は誰にも見えないようだから、遠慮なく『僕』に近づけられるけど……それは、すぐに起こった。
「きゃああああああああああ!!?」
女の人の叫び声。
『僕』も振り返ったけど、何が起こったのか一緒に見ると……黒ずくめの格好をしているけど、鋭いナイフをあちこちに振り回している誰かがいた。
発狂者? 無差別?
どちらにしてもここは危険だ。
『僕』も逃げようと、人並みをかき分けて前に進もうとしたが……あちこちの人がナイフの餌食になっているのと、他の人も慌ててしまっているせいでうまく進めない。
そして……とうとう、『僕』のところに来て。
「ああああああああ!!?」
僕も……餌食のひとつと、なってしまったんだ……。
(……ああ、そうか)
記憶がリンクしてくる。
何が起こったのか……思い出せた。
けど……辛くない。今はきちんと受け止められるから。
『僕』の遺体を見ても……僕は、大丈夫だった。
場面は……切り替わり。
何故か、今度は暗闇に戻って。
『僕』が、十歳くらいの子供の姿で……泣き喚いているのが見えたんだ。
体中に……ナイフで傷つけられたように、切り傷と血まみれで。
次回は水曜日〜