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ピッツァに嘘はない! 改訂版 作者:櫛田こころ

第一章 異界渡り

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04.LETS ピッツァ‼︎-①

本日1話目
 流されるまま連れてかれた場所は、厨房だった。
 勤めてたレストランとは当然違う様式だったけど、たしかに厨房。
 それと目に入った石窯にはテンションがMAXにまで上がっていくのが自分でもわかった。

「大っきな石窯ですね!」
「パンを焼くのとかしか使わないけどねー? あれみたいなの使ってたね」
「オーブンで焼けなくもないですけど、香ばしさも食感も段違いです」
「それはいいね。じゃあ、僕も手伝うから材料集めようか?」
「はいっ」

 どこまで元の体くらい出来るかわからないが、やるだけやってみようと意気込んだ。

「小麦粉はパンで使うのと同じでいい?」
「はい。あとイーストやオリーブオイルとか」
「……ごめん、それなに?」

 どうやら名前が違うものがあるみたい。
 他も聞いてみれば、トマトやチーズに調味料まで全然わからないと首を傾げられてしまった。なんでパンや小麦粉は一緒なのか不思議だ。
 一個一個確認しても拉致があかないので、フィーさんにまた記憶を読んで確認してもらうことにした。

「あー、はいはい。見た目はほとんど変わんないけど、名前が違うくらいだね? チーズはカッツって言って、トマトはマトゥラーだよ」

 それと見ながら説明してあげるよと、僕を貯蔵庫まで連れて行ってくれた。貯蔵庫は裏口のようなドアの向こう側で、中はクーラーがガンガンのかけてあるくらい涼しいところでした。

「こっちの世界には、蒼の世界にあるような貯蔵の箱はなくてね? 代わりに氷室って部屋を貯蔵庫にしてるんだ。もちろん、腐りにくいように保存の魔法もかけてあるよ」

 つまり、ここが冷蔵庫兼冷凍庫ってわけか?
 専門学校時代に一度職場体験させてもらったホテルの冷蔵室とかに近いね。

「僕のいた世界のことは、さっき記憶を読んだからですか?」
「ううん。蒼の世界の管理者が僕の兄様でね? と言っても、他にも平行してる世界の主軸の神々はみーんな僕の兄弟姉妹だよ。僕は末っ子だけど」

 末っ子。僕と同じだ。僕は二男一女の家族構成。そして他の親戚はほとんどが男。その関係で口調こそはならなかったが、自分のことを“僕”と呼ぶようになってしまったんです。さすがに小学校に上がる前は親に矯正させられたんで言わないようになったけど……一人になるか余程親しい友人の前となると素に戻って使ってしまうことは多い。
 今はフィーさんに訂正することが出来ずに使ってしまってるが、彼は特になにも言わないから訂正するのをやめたのだ。男には多分思われてないだろうけど……。
 それよりも、ピッツァの材料調達だ。

「とりあえず、材料は僕がこの籠に入れてくから。必要なのを言ってって?」

 彼がパチンと指鳴らしをすれば、床に立派な籐籠が現れた。
 魔法らしい魔法を初めて見ることが出来て、思わず拍手してしまう。

「そんな珍しい魔法じゃないんだけど?」
「手品じゃこうもいきませんから」
「ああ、奇術ね? ま、これからいくらでも見ていけれるよ。ほら、材料集めよ」
「あ、はい」

 そう言えば、お客様が来るんだった。生地やソースを仕込むには時間がかかるから早い内に取り掛からないとね。
 材料達は本当に見た目はほとんど同じなのに、名称が違うものが多かった。トマトはわりかし近い名前ではあったけど、玉ねぎはアリミン。コンソメはポルト、にんにくはオラドネ、乾燥オレガノはヘルネだけどハーブの類は一部を除いて特定の名称をつけないそうで総じてヘルネと呼んでいるらしい。塩や胡椒は同じでこれはミルに入っていました。
 カッツと言うチーズは見た目ゴーダチーズっぽい塊だったのに、ちょっと柔らかいパンチェッタチーズに近かった。これはもっと熟成させれば硬くなるそうだけど、このままでも使うことがあるそうなんで拝借することに。

「うーん、一種類にすべきか……」
「どれだけあるの? 僕が見たのは赤いソースの上に白っぽいのが溶けたのと生のヘルネが添えてあったのだったけど」
「ひと口じゃ語れませんが、組み合わせ次第で何百通りもありますね!」

 特に多いのがデリバリーピザのメニューだけど、僕がいたレストランもイタリアンがメインなので10種類程度は出していた。
 だけど、時間が限られているのでそんなには作れない。

「じゃあ、とりあえず2種類にしてよ。ソースも別々がいいなぁ」
「わかりました。ただ、そうすると欲しいヘルネや野菜があるんですよね……」
「菜園ならこの小屋の裏手にあるよ。自家野菜とかも作ってるんだー」
「……神様ですよね?」
「自分で出来ることは出来るだけ魔法抜きにしてるんだよ」

 なるほど、完全に魔法頼りな性格じゃないんだ。
 なら、そこにいくのは後にして先にトマトソースや生地を仕込むことにします。
 調理台は当然今の身長じゃ手どころか顔も出せないので、フィーさんにお願いして簡易的な木の台を出してもらいその上に乗りました。
 台の上には並行して用意しておいた道具類がずらりと。この道具達に関しては、何故か名称が元の世界と同じでした。

「重いものは僕が入れてくから、力加減を見るのに自分でこねようか?」
「はい」

 なんで、生地に必要な材料を全部ボウルに入れてもらう。レストランじゃ若手でもピッツァ担当だったんで目分量で計量は出来るよ。師匠や先輩達にも鍛えられてからやってるんで文句も言われたことないし。

「乾燥されてるイースト(サルベ)は少しぬるま湯でふやかして」

 粉末状じゃないから、あとで加えるお湯とは別で少しふやかしておく。生イーストや粉末タイプのイーストなら問題ないけど、かなり固いから念のため。
 小さいボウルに入れたそれが少し溶け出したら粉の方に入れて、塩と砂糖にオリーブ(リンネ)オイルと適温のお湯も入れてから両手でしっかり混ぜていく。

「……出来てる?」

 小学生の体なのに、力加減が大人のそれと変わりない。
 生地の混ぜ具合にまとまり方は幼い体じゃ大して出来ない経験は自分が本当にこの体だった時には一番苦戦したのに……実際はそんなハンデを抜きにして簡単に出来ていた。気づけば表面がツヤツヤした丸い生地が。

「うーん。副作用は抑えられたけど、身体の補填は一部出来てたのかも」
「ほてん?」
「穴埋めだよ。身体の成長とかが出来ない代わりに、体力とかが元と変わりないようにさせたりね。僕の目測でしかないけど」
「でも、これなら」

 他の作業も同じかもしれない。
 実際に包丁技術や調理技術も、完璧に元どおりにはならなかったが子供にしては大人並みに出来ていた。
 あ、生地はラップがないからボウルに濡れ布巾をかけて発酵させてるよ。
 この間にソース作りだ。まずは時間がかかるトマトソースから。

「あ、火ってどうつけるんですか?」

 コンロ口はあるけど、下に薪ストーブ的な部分がない。

「ああ、こっちじゃ一部を除いて火の魔法でつけるんだよ。今回は僕がつけてあげる」

 これもまた指鳴らしで点火してくれました。ついでに石窯の方もつけてくれたよ。
 コンロの上に大きめの鍋を置いて軽く温める。
 それから玉ねぎをスライスしたのをオリーブオイルで炒めたニンニクの中に入れて、しんなりするまでこれまた炒める。
 これが出来たら角切りにしたトマトをたっぷり入れて、上から木ベラ(ターナー)で原型がなくなるまで潰しまくった。これにはフィーさんちょっと引いたけど気にしない。

「味付けは縁が軽く泡立ってからにします」

 計量はしておくけどね。必要なのは塩胡椒とコンソメに乾燥オレガノ。全部同じボウルに入れておいて大丈夫。

「じゃあ、今のうちに菜園に行っていいですか?」
「いいよ、こっちから行こうか」








 ◆◇◆








「……綺麗」

 到着した場所には、イングリッシュガーデン並みに綺麗に植え込まれた野菜やハーブの数々。
 これを隣に立っている少年神様一人で育てているなんてちょっと信じがたかった。

「あんまり頻繁に来れないから、時々この辺を管理してるコボティにお願いしてるけどね?」
「コボティ?」
「魔獣に近い聖獣の一種だよ。蒼の世界じゃそう言う存在もたしかいなかったよね」
「全然いません」

 魔法もだけど、モンスターや精霊なんて皆無だ。
 UMAとかなんやかんやの目撃情報や研究は盛んでも……実在してたのは化石で発見された恐竜とかくらいだ。まさかああ言うのは生存してないよね?とちょっと怖くなってきた。

「さて、どれが欲しい? ほとんどが食べ頃だよ」
「え、ええと……まずはバジルリーフですね」
「乗っかってたヘルネだよね?」
「はい」

 作るピッツァはマルゲリータ以外にもう一つ。
 ジェノベーゼソースをベースにした野菜たっぷりのピッツァだ。お肉とかはどうしてかなかったんでその二つにすることにしたんです。

「それはこっちだね」

 植わってる場所は菜園の端。
 バジルは普段だとハーブのサラダに使うそうな。
 だから、予想以上にたくさん植えられていた。

「たくさん使っていいですか?」
「いくらでもいいよ? 僕も手伝うね」

 二人で持ってきたボウルいっぱいになるまで収穫してから、今度は野菜の方。
 色は日本で手に入る定番のものから見たこともない色彩のものまで。欲しかったパプリカじゃ紫や青まであったよ。さすがに青は遠慮しておきました。
 これらを収穫し終えてから厨房に戻れば、トマトソースの鍋はちょうど沸騰し始めてたところだった。フィーさんに野菜達をお願いしてから、僕は脇に寄せておいた調味料のを鍋の中に入れてターナーで軽く混ぜる。これをもう少し煮て火を止めればこのソースは完成だ。
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