386.とうとうか?(サイノス視点)
お待たせ致しましたー
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆(サイノス視点)
それは偶然だった。
執務が意外と早く終わったんで、アナと軽く茶でも飲もうかと誘いに行こうとしたら……。
「あら! サイノス様!」
食堂の方から、俺をもう兄と呼ばなくなった愛しい婚約者が、息を弾ませながら廊下を走っていたのだ。
「お? どうした?」
アナがここまで興奮すると言うことは余程のことがない限り、ない。
「サイノス様は知ってらして?」
「うん?」
「エディお兄様とセリカのことですわ!!」
「……うん?」
こいつには、実はあの二人が御名手だと言う事実は知らないはず。
と言うことは、何か進展があったのか。
「御名手の儀式をされましてよ!!」
「…………マジか」
「ええ!!」
どこで、っつーと……エディの部屋か執務の部屋だろうが。まさか、そんな大胆な場所でするとは……イシャールとかも、上層の廊下だったのを思い出した。
「で、お前さんは何を?」
「セリカの召し物を用意するためですわ!!」
「……わかった。俺はエディんとこに行く」
「あら、いけませんわ」
「うん?」
「今行かれては、おふたりの語らいの邪魔でしてよ?」
なんだかんだ、アナは母君似だがこう言うところは兄妹なんだなと思った。
「……わかった。他に知っているのは?」
「皆ご存知ですわ。カティアさんは、きっとお祝いのピッツァをご用意なさっているはずですわ」
「そりゃ楽しみだ」
イシャール達ん時以来だが、あれは何度食っても飽きがこない。
なら、そちらの様子を見に行こうと食堂に向かえば。
扉を開けると、もわっと何か温かい空気が流れてきた。
「あ、サイノスさん!」
中に入ると、料理人用の青い服を着ていたカティアと目があった。
「よ。聞いたぜ? エディ達のために仕込んでいるのか?」
「はい! お祝いですので……特大級のピッツァを!!」
「うん?」
その割に皿がないように見えたが……テーブルを見ると、ギリギリ取り皿が置ける場所以外、布の上に置かれた『ピッツァ』のサイズに口の端が思わず、ひくっとなった。
「あら? サイノスも来てくれたの?」
数日前から、ヴァスシードより来訪していたファルミアもだが、夫のユティに……守護妖の四凶らまで、意欲的にピッツァを仕上げていた。
「…………これが、ピッツァ?」
「はい! 発祥の地では特別なお祝いの時に振る舞うピッツァなんです!!」
いつから仕込んでいたかはわからないが。
アナの様子から見て、そこまで時間は経っていない。厨房からフィーも出てきたんで、時間操作をして仕上げたのだろう。
フィーが、立て続けに御名手の儀式に介入したせいか……めちゃくちゃ疲れた表情でいた。
次回は水曜日〜