379.自信はないけど-①
お待たせ致しましたー
◆◇◆
すっごく、いい匂い。
とってもとってもいい匂い。
オーブンこと窯の前で、クラウと待機しながら眺めていたけど……片付けもあったので、だいたい焼き上がってから取り出し。冷ましている間に、片付けをちゃちゃちゃ。
そのあとは、完全に冷めるのを待ちながら皆さんの方をお手伝いしようとしたら。
「ふゅゆぅ!!」
僕の守護獣、クラウが焼き立てクッキーにお手手を伸ばそうとしていたので……素早くキャッチ!
「ダメだよ、クラウ? 焼き立ては火傷しちゃうから!」
「……ふゅぅ?」
「お手手が痛い痛いになるよ?」
「ふゅ!?」
しおしおと僕の腕の中で、ぐにゃりとなる様子が可愛らしい。けど、火傷は本当に油断出来ないから……我慢してもらうしかない。
その間に、アナさんやセリカさんも準備が出来たようで。
セリカさんは、ケーキ型を窯へ。
アナさんは、トリュフチョコの成型へとファルミアさんのお手本を見ながら頑張っていました。
僕はクラウを頭に乗せながら、セリカさんと一緒にまたお片付け。
「美味しく出来るといいですね?」
「……そうね」
セリカさんは応援されているとしても……複雑な心境なのだろう。エディオスさんがセリカさんを好きなことも知らないけど、御名手のことも。
だから、自信がなくて……気落ちしているかもしれない。
「……セリカさん」
「? なあに?」
「セリカさんは……エディオスさんが別の女の人と結婚したら、どう思います?」
「え?」
「セリカさんは、エディオスさんが大好きです。けど、自分が相応しくないと思っていませんか?」
「それは……」
アナさんに啖呵切った時は別だけど……基本的に、セリカさんの根本的なところは僕と似ている。
僕も、今の体のこともだけど……あんなにも美形な人が婚約者になってくれるだなんて思ってもいなかったから。
だから……セリカさんにも、エディオスさんにちゃんと気持ちを告げてほしい。
「大丈夫ですよ! 収穫祭でも神霊さんに言われたじゃないですか、お似合いだって!」
「……そうかも……だけど」
「僕は通じ合っても、まだまだ障害があります。セリカさんもあるでしょうが……今はきちんとお貴族様の御令嬢ですよ?」
「! 私……」
「はい。ほとんど身分のない僕とは全然違います!!」
それは本当なので、ぎゅっとセリカさんの手を握ってあげると……セリカさんからも手を握り返してくれた!
「……頑張るわ、私」
「はい!!」
ちょっとでもお手伝い出来たようで、僕も思わず笑顔になった。
次回は水曜日〜