354.ムカつくが(エディオス視点)
お待たせ致しましたー
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆(エディオス視点)
ここが執務室で良かった。
いきなり来た……イシャールもだが、久しぶりに会うシャルロッタの……御名手の儀式をしたと言う報告に、近侍らを下がらせて……マジで正解だった!
驚き過ぎて、思わず椅子から盛大に転がり落ちたくらいだからな!?
「……マジかよ!?」
「マジだぜ? その後に、フィーからの証言もちゃんともらった。証人もひとり居る」
「……誰だ?」
「カティアだ」
これには、ゼルと一緒に黙ってしまう。
見た目、80代のガキだが……実は成人年齢のカティアが証人であるのは強みになる。
イシャールは魔眼で見抜いてしまったが……カティアの封印がほころびているのか、セリカくらいの見た目とダブっているそうだ。ゼルとしてはいち早く見たいだろうが、フィーの忠告でまだ封印が解けない。
とりあえず、またひとり秘密の共有者が増えたが……そいつにまで御名手のことも先を越されるとは思わなかった!?
「……なんだ。おめでとう」
「おう」
「……ありがとう、ございます」
祝いには違いないので、神王と言うよりも個人として祝いの言葉をかけた。
イシャールの笑顔がいちいちムカつくが、事実は事実なので仕様がない。儀式が済んだと言うことは……明日には全体公表をしなくては。
フィーからの証言もあるのなら、俺がひと言添えれば周りは何も言わないだろう。多少、俺にはまだかとかうるさいジジイ大臣達は言うだろうが……俺は、セリカ以外には認めない。
(つーか、セリカとの接点がどんどん減ってく!?)
目の前のイシャールの妹……。
もし、マジで俺の御名手がセリカだったら……イシャールを義理の兄と呼ばなくちゃなんねぇのか……。
微妙にムカつくが、そうなったら仕様がないので……受け入れるしかない。
「んじゃ、報告はこんなとこだ。仕事あるし、戻るぜ?」
「……婚姻を結んでも、シャルロッタはそのままか?」
「ったりめーだ。ガキ出来るまでは俺の右腕だ」
「りょ、料理長!?」
幸せなことで。
マジで羨ましいし、ムカつくが……お互いを想っているのには全然気づかなかった。普段からなかなか会わないせいもあるだろう。
「……お前はどうするつもりだ?」
完全に、イシャール達が退室した後に……ゼルが俺に聞いてきた。
「……イシャールが鉄壁だぞ? 簡単に言えるか?」
「……そうではない」
「…………イシャール抜きにしても。拒絶されるのが怖い」
「拒絶?」
「……最初、セリカはこっちに戻ってくるのを諦めようとしていた」
サイノスと説得しに行ったあの日。
俺が強気で……セリカに戻って来いと言わなければ。
セリカは城下町で一生を過ごし……御名手かどうかわかんねぇ相手と結婚して、ガキを生んだ生活をしたかもしれない。
本能的に、俺はそれが嫌だった。
今思えば……セリカを見つけて、こいつだとわかった時に。俺はセリカが自分の唯一だと思い始めたのだろう。
御名手かどうか……は、自分でもまだ納得が出来ていないが。
「……年が明けたら、また少し忙しくなる。少しは……俺とカティアのように、茶でも誘えるようになればいい」
「……簡単に言うなあ?」
だが、俺以上に諦めの境地に居たこいつに言われると……耳が痛かった。
次回は金曜日〜




