346.ここでバレて
お待たせ致しましたー
◆◇◆
抱えられて連れて来られたのは……今はイシャールさん専用の厨房室。
僕とクラウは中に入るとあっさり下ろされたけれど……イシャールさんがちょっと怖い目で僕を見下ろしてきたんです!?
「い、イシャール……さん?」
「カティア……一個聞いていいか?」
「はい?」
「ふゅ?」
なんか、仁王立ちのように僕達を見下ろしている様子が怖い……。でも、何か重要なことかもしれない。ここに連れてきたのは、ゴルゴンゾーラを含める料理をまた作ってくれないかと言われるだろうし。
「……お前、本当に今の外見通りの歳か?」
「へ?」
「ふゅ」
全然違うことを聞かれたため、僕も変な声が出てしまった。
僕の反応に、イシャールさんは何かを確信したのかニヤついた笑顔になっていく。
「目についてはまだはっきり視えねぇが……なんだ? さっきお前を見かけた時に、視えたんだぜ? お前の身体がセリカくらいでかく視えた」
「……はい??」
「俺は見解の魔眼持ちだぜ? 特に綻びかけてる封印なら……っで!!?」
僕がダラダラと冷や汗を流していると……イシャールさんの後ろから大きなハリセンが登場して、イシャールさんの後頭部を強く叩いた。
誰だと言うまでもなく……やっぱりフィーさんで。イシャールさんが床に倒れたら、ぐりぐりとハリセンの先で頭をいじっていく。
「は〜〜……、やっぱりイシャールにはバレたかぁ」
「フィーさん」
「ふゅ」
イシャールさんが大丈夫か少し気になったけど、うめいていたから……多分大丈夫みたい。
「封印がちょーっと解けかけていたからって、イシャールに見つかるとはねぇ? セリカにもちょっと相談されていたし……まさか、問い詰めるとは思わなかったけーどーぉ?」
「……離しやがれ」
「言いふらさない?」
「お前が関わってんなら……よっぽどだろ」
「ん」
最後に軽くペシペシと叩かれてから……痛かったのか、頭を撫でながらイシャールさんはゆっくりと起き上がった。
「んで? 俺が見えたカティアの身体はセリカくらいだったぜ? 一瞬、どこぞの令嬢かと思いかけたが」
「ぼ、ぼぼぼ、僕が……ですか!!?」
大した容姿なんて持ち合わせていないのに、恥ずかしいですよ!!?
ぶんぶんと両手を顔の前で振ると、イシャールさんは何故か首を横に振った。
「いや、マジで。お前なんだぁ? 前に先代らの前で発表したような家柄とかにしたって、おかしいぞ??」
「え、えっと……」
「まだまだ封印は僕でも解けないんだから、カティアに問い詰めないの!」
「……わかったから、それはやめてくれ」
にゅっと、フィーさんがハリセンをイシャールさんに突きつけたので、イシャールさんは大人しくなりました。
けど、もう秘密には難しいので……僕がこのお城だけでなく、この世界に来た事情と……つい先日、セヴィルさんの婚約者もとい、御名手になったことをフィーさんがかいつまんで教えると。
「ってわけ」
「…………………………あり得ねぇ」
思いっきり頭を抱えて、しゃがむ……と言うか、ほぼ土下座体勢で床に突っ伏しちゃいました。
「……えっと……すみません?」
「カティアが謝ることじゃないよ?」
「けど……イシャールさんがうまく飲み込めないようですし」
「多分、半分はカティアの心配と違うことだよ?」
「へ?」
と、今度はイシャールさんがいきなり起き上がった。
「ゼルが!? ゼルの初恋がカティアだった!!? おまけに御名手!!? カティアの今の外見だったら犯罪だが、俺が視えた奴なら超絶美男美女じゃねぇかよ!!?」
「…………ね?」
「……あはは」
美女と言うところは訂正していただきたいけど……どうやら、受け入れてくださらないわけではないようでした。
次回は月曜日〜