334.言い逃げされた(セヴィル視点)
お待たせ致しましたー
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆(セヴィル視点)
あれは本当に不意打ちだった。
カティアが風邪で寝込み、俺はひと晩中看病をしている時だったが。
服を変えさせることは出来ないが、出来るだけ拭ってやろうと……ぬるい湯で湿らせた布で拭いてみた。カティアは多少息苦しそうではあったが、昼間よりは呼吸が安定していた。
フィルザス神からの薬飴や……不甲斐ないながらも、俺が作った料理で回復しているからだろうか?
とにかく、早く元気になって……いつものような笑顔を見せて欲しい。執務に明け暮れて……最近はなかなか逢引きも満足に一緒に過ごせていなかったから……治ったら出来るだけ時間を作ろうと決めた。
カティアと一緒に寝ている、クラウも共に。
愛らしい寝息を立てて、主人の横でくーくーと寝ている。
「……熱は、引いてきたな?」
カティアの額に手を当てれば、彼女が寝入る前に比べれば熱がだいぶ下がってきた。この調子なら、フィルザス神が言うように……たしかに、明日以降には体調が落ち着くだろう。それでも、完全に回復するまで無茶はさせられないが。
とりあえず、冷やすための布を取り替えようと布を外した時。
カティアが、うっすらだが目を開けたのだ。
「……すまない。起こしたか?」
「…………」
「カティア?」
まだ夢の中かもしれない。
寝ぼけて、身体が反応して目を開けただけかと。
眠った方が良いと……声をかけようとしたら、いきなり柔らかい笑みを浮かべたのだ。
「……セヴィル、さん」
「……カティア??」
起きたのか? ともう一度聞こうとしたが……カティアはさらに幸せそうな笑顔になって、とんでもないことを告げてきた!?
「…………大好きですぅ」
「か、カティア!?」
寝ぼけているのか??
今のは正気なのか??
とにかく、嬉しさが込み上がり……顔に熱がこもっていくのがすぐにわかった。
寝言か? 正気か? と、いつものように冷静に判断出来ずに……頭の中がぐるぐると考えがまとまらずになっていると、カティアは笑みを引っ込めて、また眠ってしまった。
(…………………………寝言?)
つまり、今のは無意識か??
「あーりゃりゃ? 寝言みたいだねぇ?」
「フィルザス神!?」
いつから居たかわからないが、フィルザス神が俺の横に立っていた。つまりは……聞かれていたと言うこと!!?
「ぷぷー! めちゃくちゃ面白い顔してるけど、騒いだらカティア起きるよー?」
誰のせいだ、誰だ!!
と言いたいが、騒ぐとカティアが起きるので口にするのを我慢したが。
「……交代か?」
とりあえず、フィルザス神が来た目的を聞くことにした。
「うん。もう朝一だし、ご飯食べて来なよ? あと、軽く仮眠も取っておいで??」
目の下、軽くクマになっているから。と、フィルザス神が言うので……頭を冷やす意味も兼ねて、あとを任せてから俺はカティアの部屋を出た。
(……だが……だが!)
寝言とは言え、カティアの口から俺に好意を示す言葉が出てきたのだ。
だが、逆に寝言だと封印された記憶が漏れ出て、昔のカティアの気持ちになって紡がれたかもしれない。
そう思うと……今のカティアの心情がうまく読み取れず、喜んでいいのかどうかわからなくなってきた。
今日は仕事自体休みなので……食事をしてからカティアのところに戻ろうかとも思ったが、エディオスにどうしたんだと俺の変化を問い詰められたので。仕方なく……言うことにした。
笑われはしなかったが、哀れみの情をかけられ……とりあえず、誰かに打ち明けられた安心感を得てから、再びカティアの部屋に行くことにした。
次回は日曜日〜