322.卵酒の効果(サイノス視点)
お待たせ致しましたー
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆(サイノス視点)
御名手を経て、婚約者となったアナが久しぶりに風邪を引いた。
引き始めに気づいたのはカティアだったが、その時は大丈夫そうに見えたものの……朝餉を済ませた後に、部屋で寝かしつけられた。
神霊の血をいくらか継いでいても、人間に変わりない。
アナは女官らにベッドで寝かしつけられ、カティア達が風邪の時に良い飲み物を持ってきてくれるまで……俺は遠征から帰ってきたら執務をジェイルに任せて、つきっきりで看病することになった。
(風邪だなんて、いつぶりだ?)
アナから少し距離を置かれた時にもあったのは何と無く覚えているが、アナ自身が統括補佐になってからは思い出せない。
となると、五十年くらいは罹っていなかっただろう。兄のエディについては、病気のびの字もないくらいピンピンだ。討伐などで得た傷はともかく。
とりあえず、今アナは……少し前にフィーとカティアが持ってきてくれた『卵酒』と言うのを飲んで、だいぶ落ち着いていた。
俺にも、とフィーが渡してくれたが。酒と言うよりクリームを飲み物にした味わいだった。
アナも当然喜び、だが熱いのでゆっくりゆっくりと飲んでいた。顔の赤味は引いていないが元気は出たらしく。
それと、自然に眠気が出たのか……飲み終えたら、静かに寝始めた。辛そうな表情ではなく、とても穏やかに。
「……あどけない顔しやがって」
成人して随分と経つ、妙齢には程遠い女性にはなったが。母親である前王妃に似た面立ちは……まだまだ幼い。
つい、可愛くて頬に口づけを贈ったが目は覚さなかった。
「……早く、良くなれよ??」
それから、アナはぐっすりと眠りについたので。さすがに手持ち無沙汰になった俺は女官に頼んで執務室から書簡を持ってきてもらい。
しばらく、仕事で暇を潰していたが……アナが起きた時、彼女の服装にひどく驚いたのだ。
「ま、まあ!?」
アナ自身も驚くほど、身体中に汗をかいて服が肌に張り付いていた。流石に目の毒過ぎたので、女官を呼んでから俺は部屋から出た。いくら婚約したからって、真昼間から病人を襲うわけにはいかない。
「…………とりあえず、あの飲み物は効果的面ってことか??」
ポワゾン酒でない、ウルス米の酒。
エディらも多分飲んだだろうが、報告はするかと奴の執務室に行けば。
伝えた直後、悪ふざけで襲ったのかと聞かれて、思いっきり拳骨はお見舞いした!!
次回は土曜日〜