032.ピッツァ実食!-①
2話目ですノ
皆さんが揃ったので、なるたけ急いで生地を伸ばしてソースと具材を乗っけていく。
エディオスさんに頼まれたマルゲリータは勿論、インパクト大のジェノベーゼにベーコンピッツァをご用意します。
この石窯、業務用で大きいから25センチサイズのピッツァを一遍に3枚も焼けるので凄い。聞くに、パイ包み焼きとかを大量に仕込む為にこのサイズにされたようです。ライガーさんに聞いたらミートパイをよく焼くそうなので、今日の夕飯に出してあげようかと聞いてくださった。
ここはエディオスさんのお城なのに勝手に決めていいのかと言うと、そのパイは彼の好物だし、ここ最近出せてないからちょうど良かったと言ってくれました。
などと思い返しているうちに焼けました。
「……よし、焼けました‼︎」
「はいはーい」
ささっとピールを引いて3枚ともお皿に移し、フィーさんがカットしていく。
フィーさん、給仕さん達のまかないを準備してた際にカットしていくのにはまってしまったらしく、進んでカットしてくださるのです。しかも丁寧に美しく。
準備が出来たのでフィーさんと一緒にVIPルームに戻っていく。皆さんは何か話していたようだけど、僕らが戻ってきたらエディオスさんが『待ってました!』と声を上げてくれた。
「あら、何か香ばしい?」
「この匂いは……?」
「まあ、食ってみりゃわかるって! お前らも座れよ」
「もちのろん!」
「はーい」
中央にお皿を置いて、僕達も席につく。
すると、アナさんの引きつったお顔が見えた。
「な、なんですの⁉︎ この緑色のものは‼︎」
予想通りジェノベーゼに引いてますね。セヴィルさんも見てみると、同じく顔を引きつらせていました。
「ヘルネを使ったジェノベーゼピッツァですよ」
「へ、ヘルネ? ああ、驚きましたわ」
「これがヘルネだと……?」
やっぱり緑色のソースには馴染みがないご様子。すぐには手を伸ばされない感じだ。
「結構美味いぜ? んじゃ、俺がまず食ってみるか?」
「え、エディお兄様?」
「エディオス⁈」
驚くお二人を放って置かれて、エディオスさんはジェノベーゼに手を伸ばしてくださった。それは躊躇いもなく半分もぱくりと頬張った。
「ん。やっぱこっちのもうめぇな!」
「ありがとうございます」
さて、他の二人はと視線を戻すとまだ手を出すのが躊躇われていらっしゃった。
「二人共ー、そっちがまず難しいならこっちのマトゥラーのピッツァ食べなよ?」
「……あら、こちらはマトゥラーですの?」
どうやらトマトソースまで異常なものに見えかけてたようだ。
フィーさんが説明してくださると、やっとお二人はピッツァをそれぞれお皿に取ってくれました。セヴィルさんがマルゲリータでアナさんがベーコンピッツァ。
「いただかせていただきますわ」
アナさんは流石に手で食べるのは躊躇われてナイフとフォークを使って切り分けていく。先端を少し切っておそるおそる口に持っていき頬張った。
「な、なんですの⁉︎ このお味は‼︎」
それから二口三口と切り分けては口にしていき、もごもごと咀嚼されていった。
「この白くて香ばしいものはカッツでしたのね! こちらには燻製肉が使われていますが、マトゥラーのソースとよく合いますわ‼︎」
「お口にあったようで良かったです」
良かった良かったと今度はセヴィルさんを見ると、一口食べられてからなんだか固まってしまわれていた。
「ゼル?」
「…………」
「ゼルお兄様?」
エディオスさん達が声をかけてもセヴィルさん継続して固まったまま。
(あれれ? ど、どうしたのかな?)
僕が揺すってみたものの、一向に変化なし。
「……しゃあねぇ。おい、ゼル!」
「……あ」
ぽかりとエディオスさんがセヴィルさんを軽く殴ってくれたら、ようやくセヴィルさんがはっと我に返ってくれた。
「ったく、驚かせんじゃねぇよ」
「す、すまない」
でも本当にどうされちゃったんだろ?
「……あぁ、違うぞカティア。その……すごく美味かったのに驚いてな」
「え?」
僕そんなに顔に出てたのかな?
昨日もだけど、すぐ顔に出るのは恥ずかしいです。すぐにぷるぷる顔を振って、不安気な表情をふり払おうと努めてみたものの、
「くっ……カティア、そんなことしなくてもお前はわかりやすいぜ?」
全く意味がなかったようです。
仕方なく、僕もベーコンピッツァを食べ始める。
(ふぉお、ライガーさんが言ってた通り良いお肉っ!)
噛みしめるとジュワッと肉汁が。マルゲリータは安心のお味でジェノベーゼは塩っぱくもニンニクの香りも相まって舌鼓を打っちゃう。もっと食べたいけど僕はとりあえず一枚ずつと事前に決めていた。今日は作る方だからね。
皆さんには断りを入れて、僕は照りマヨピッツァを焼くべく厨房に向かう。その後ろから、何故かフィーさんが付いてきたけども。
「あのテリヤキチキンってのがどうピッツァになるのが気になってさぁ」
だそうです。
生地をまず2枚伸ばしておいて、その後に照り焼きチキンを薄ーくスライス。3枚にして1枚を厨房の皆さんにもって思ったけど肉の枚数から無理そうでした。次回に機会あれば作らせてください。
生地にオーラルソースを塗り、アリミンのスライスを散らしてチキンを1ピースに1枚ずつとなるように丁寧に並べる。その上から軽くテリヤキソースを振りかけてカッツを乗せる。これで焼きに入れます。
本当は刻み海苔が欲しいところだけどなさそうだから今回はパス。だけど、お隣の国にならもしかしたらありそうかもしれない。文化圏が結構違うって聞いたし。
そうして焼けましたならば、今度は僕が両方ともカットしていきます。
「うわぁ、いい匂いー」
「まだですよ、皆さんのとこに戻ってからですよ⁉︎」
「わかってるって、信用ないなぁ」
試食用を食べたからですよ。
しかし、早く戻らないといい匂いが充満しそうで厨房の人達の目がギラギラしかけていた。すぐにマリウスさんから喝が入れられて雰囲気が切り替わったけども。
「お待たせしましたー」
戻ると、ピッツァはそれぞれ2、3枚くらい残してある状態だった。
「お、次のが来たか?」
「カティアさん、先程は驚き過ぎてすみません。このヘルネのピッツァも大変美味しゅうございましたわ」
「ああ、驚いてすまなかった」
「良かったです!」
食べてもらえたのなら本望ですよ。謝る必要はありません。
そんな皆さんの前に僕は照りマヨピッツァを出します。
「……あ? この肉ってどこかで」
「ヴァスシードのあの子が作るのと似た料理だよー?」
早速食べてくださったエディオスさんは思い出そうと首を捻ってらしたら、フィーさんが正解を付け足してくれてました。
「あら、言われてみれば」
「たしかに、あいつが作るのと似ている……」
お隣の国の王妃様が作られたのを皆さんも食べたことがあるようだ。ますます謎になってきた王妃様。
けど、照りマヨピッツァは鉄板の美味さ!
この甘じょっぱさは日本人ならではだと思うの。
さて、デザートピッツァを残すと他はソーセージピッツァだけだ。それと追加でマルゲリータがエディオスさんから入ったのでそれも作って持っていく。
「へぇー、今度はルーストか? これ、ヘルネのにも合うんじゃね?」
エディオスさんが新たな組み合わせを提案してくだすった。
しかしですね、エディオスさん。これ以上食べられるとデザートピッツァがお腹に入らないと思うのですよ。なので、次回以降に持ち越しです。
それを皆さんに伝えると、アナさんが目をキラキラと輝かせました。
「まあ、デザートになるものまでありますの⁉︎」
やはり女性だもの。デザートには目がないよね。
とりあえず、お腹の具合も様子見てベリーミックスピッツァと例の蜂蜜ピッツァをお出しします。
そしてやっぱり、フィーさん以外蜂蜜ピッツァを怪訝そうに見られました。
「これカッツだけだぞ?」
「いいえ、エディお兄様。何かかかってますわ」
「カティア、一体これは……?」
ふふ、っと僕は小さく笑ってしまった。
フィーさんをちら見すると同じように笑っておられた。なら、躊躇う必要はありませんね。
「蜂蜜をかけたカッツのピッツァです!」
「「「は?」」」
僕が公表すると皆さん一様に口を開けられちゃったよ。やっぱり、こっちじゃ蜂蜜ってそんなに需要がないものなのかな?




