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031.白雪ピッツァ(途中別視点有り)

本日1話目ですノ

「フィーさん、どうぞー?」

「え、僕ぅ?」

「場合によってはバラ肉にかけたりも出来るんですよ?」

「このままのがいいよ!」


 僕の誘導にうまく引っかかってもらえ、フィーさんはピッツァを手に取る。

 ごくりとつばを飲み込む傍ら、僕はによによ笑っている。だって、初めてフィーさんに意趣返しが出来そうだもの。楽しくないわけがない。

 ああ、こう言うところがフィーさんやエディオスさんに似そうだなぁ。気持ちがわからんこともない。

 おそるおそるフィーさんは口元に持っていき、少し齧りつく。もぐっと噛みしめると、突然パァっと顔が輝きだした。


「なにこれ、すっごくクセになりそう⁉︎」


 パクリと二口三口目も食べていき、端まで口に放り込んだフィーさんは幸せそうに咀嚼する。


「……フィー様があんなにも?」

「これは僕らも食べてみましょう」


 と言って蜂蜜ピッツァをそれぞれ手に取られ口に運ぶ。先端から5センチくらいにかぶりつくと、お二人とも一時停止。どうやらジェノベーゼの時よりもインパクトあったようだ。


「蜂蜜がくどくない⁉︎」

「むしろカッツの塩っ気をまろやかにしてますよ!」


 デザートピッツァ大成功!

 実はこれイタリアでもオーソドックスなデザートピッツァなんだよね。よくお店で出すのはゴルゴンゾーラやチェダーチーズにパルメザンも加えた『クアトロ・フォルマッジ』ってピッツァが多いけど、市販品のゴルゴンゾーラとかは高いからゴーダチーズだけでも充分美味しいのだ。

 ちなみにベーコンも乗せたりするのはサイトで見つけて実践済みではある。悪くはないお味だったよ? でも、今日出す気は毛頭ない。

 さて、次はお待ちかねの生クリームと果物をふんだんに使ったピッツァだ。

 とは言え、


「フィーさん、見た目はほとんど一緒なんですけど名前が……」

「はいはーい。えっとねぇ……ブルーベリーがフェイ、苺はプチカで桃はリルシェ、リンゴはメロモだよ。ラズベリーはダイラでチェリーはチェイルだね」

「すみません……」


 マリウスさん達が蜂蜜ピッツァ持ってコックさん達の元へ行ってる隙を見て果物達の名前を確認。

 いやあ、わかって良かった。蜂蜜とかは運良かったけど他はてんでわかんなかったもの。そしてフィーさんありがたや。

 しかし、チェリー以外は見事に縁もかすりもしない名前ばっかり。調理師の仕事してたからなんとか食材の名前は覚えられるけども。


「でも、そっちのが呼びやすそうだねぇ。蒼の兄様センスあるなぁ」

「え。てことは食材の名前ってフィーさんが……?」

「ううん。僕の名前崩して入れたりはしてるらしいけど、基本はエディの先祖達がつけたらしいよ?」

「はぁ……」


 じゃあ、『ル』が多いのはフィーさんのフィルザスからか? フィは使いにくいからって……単純だ。

 まあ、それは置いといて。


「生クリームを塗ってっと」


 ケーキで使うようなスパチュラがすぐ見当たらなかったので、スプーンですくっては塗るを繰り返す。ここで、濡れ布巾を用意してからピッツァをカット。べとべとになっちゃった包丁を布巾で拭い、それからフェイ(ブルーベリー)とダイラ(ラズベリー)を散らして、スライスしたプチカ(苺)も満遍なく並べる。これだけでも充分美味しいけど、今日はチョコソースもあるんだ。クレープっぽいデザートピッツァを作りましょう!

 小さいボウルに入ってるチョコソースを小さめのスプーンで軽くすくい、網の目になるようにかけていく。仕上げに粉砂糖があれば良かったけど、見当たらないから見送り。

 とりあえず、これで完成です!


「マリウスさーん、最後のデザートピッツァ出来ましたよ!」

「っと、おお。これはまた美しいですね」


 なんか熱心に語り合っていたようだけど、僕が呼ぶとこちらにやってきて最後のベリーミックスピッツァを褒めてくれた。


「へぇ……これはもう大体味の予想がつくね?」

「とは言え、また驚かされるかもしれないぞ」


 ええ、驚いてくださいな!

 クレープじゃあないけど軽くしょっぱい生地がどうマッチするか確かめてください。その間、僕はフィーさんが手を伸ばすのを身体を張って押さえ込んでいますから!









 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆(セヴィル視点)










「くぁ……終わった」

「昨日済ませば、もう少し楽に終わったが?」

「もう終わったからいいだろ?」

「まったく……」


 朝からの執務を終え、エディオスと共に上層部の食堂へ向かう。

 結局謁見は本当に報告を聞くだけの簡素なもので終わり、たしかにそれだけならばエディオスを出す理由にもならない。だが、そうもいかないのが現実だ。

 あそこは今後色々と必要になってくるために無視はできないのだ。

 たとえ媚びへつらう口調たっぷりで、間接的に聴く側でも嫌気がさすとしても、だ。


「あら、お兄様方。謁見は終わりまして?」


 と思っていたら、アナが食堂の扉前で合流してきた。


「まぁ、なんとかな」

「昨日終わらせればよろしかったのに」

「それよりも、カティアの飯だぜ? ここでも政務の話続けたら不味くなっちまう」

「……それもそうですわね」


 上手い具合に話を逸らしたな。

 まあいい。たしかに今の俺達の目的はそれだ。

 エディオスがノブに手をかけようとした時だった。





 キィ。

 ドガッ!





「って⁉︎」

「ん?」

「え?」


 先に扉が開いてしまい、エディオスの顔面に角が直撃した。しかも眉間に当たってしまったのか、痛そうに奴は手で押さえていた。


「やほー、皆揃ってたね?」


 向こうから顔を出してきたのはフィルザス神だった。あの様子からして、扉向こうから気配と透視でエディオスを狙ったのだろう。相変わらずのことだ。


「……エディオス、切れてはないか?」

「多分……血は出てねぇよ」

「昨日もぶつけられましたわよねお兄様」


 昨日も?

 と言うとその時はアナにか。彼女の場合は本当に具合良く惨事を起こすのだから始末に負えない。天然故と言うべきか。

 とりあえず、エディオスの眉間を確認すると赤くはなっているが傷にはなっていなかった。この様子ならしばらくすれば赤みが引くだろう。


「はーやく入っておいでよ。君らが来ないと生地伸ばせないからさぁ」

「テメェ、フィー。後で覚えてろよ」

「なーんのことー?」

「生地?」

「伸ばすとはなんのことでしょう?」


 いまいち掴みにくい説明を耳にしてから、俺達は部屋の中に入った。


「あ、皆さんお疲れ様です!」


 中に入るとカティアが昨日も着ていた青い服のまま出迎えてくれた。調理をするから今朝来てた服を汚さないがためだろう。それも大変高価な物に見えるが。


「じゃあ今から焼いてきますねー」

「カティア、昨日一番最初に食ったのにしてくれよ」

「はーい。とりあえず他の合わせて3枚は持ってきますから」

「僕も行くよー」


 フィルザス神を伴い、カティアは厨房へ行ってしまった。

 今からと言うことは、すぐ出来るものなのか?

 以前食べたのも下ごしらえさえすればすぐ出来るものだったから、ますます期待度が上がってしまう。

 だが、気になったことが一つ。


「手拭いが何故こんなにもあるのだ?」


 食器は普通にあるが、その横に濡れた手拭いが3本も置いてある。すぐに見てその意味がわからなかった。


「あ、言ってなかったよな? 今から出てくんの基本は素手で食べるもんなんだと」

「えぇっ⁉︎」

「素手で……か」


 だとしたら、あれではない。

 幾分か落胆はしたが、すぐに頭を切り替える。

 カティアの手料理を久々に味わえれるだけで良しとせなば。俺達はそれぞれの席について彼女らが来るのを待った。

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