307.クアトロフォルマッジ-②(フィルザス視点)
お待たせ致しましたー
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆(フィルザス視点)
カッツだけのピッツァ。
そこに、僕がこの城に連れてきてから……最初に作ってもらった蜂蜜のピッツァと同じように、蜂蜜をたっぷりとかけているピッツァ。
ただ、カッツを使うんじゃなくて……青いカッツとかカッツクリームとか色々。
臭いもすんごいのに、作ったカティアは美味しそうに食べている。僕だって、神でも青いカッツは献上されても放置するかコボティ達に食べてもらうだけだったのに。
でも……カティアが作ったピッツァもだけど、料理はなんだって美味しい。兄様も欲しがるくらいの逸品揃い。それを味わえるんだ……と思ったら、手を伸ばしたくなるんだ!!
そーっと手を伸ばし、カッツの伸びが強いピッツァをひと切れ。キラキラと表面は蜂蜜で輝いている。前のシラユキピッツァってのも美味しかったけど……似た味か未知な味か。
口にゆっくり入れてみると、まずムワッて青いチーズに臭いはしたけど……!?
「ん?? ピリピリする? 胡椒? じゃないけど、辛い?…………美味しい!!」
青いカッツの部分は、こんな味だとわかると……意外にも口は受け付けた。多分、青いのだけだったら無理だけど……蜂蜜もあるし、他のカッツも混ざっているから中和されているんだよね?
そして、その味がクセになるとひと切れをあっという間に口に入れていった。
「ふ……フィー……様?」
「そんなにも……??」
「うん、結構美味しいよ? ふたりも食べてみたら??」
マリウス達にも勧めてあげたら、ふたりも恐々とピッツァを持ち上げた。ゆっくり口に入れたら、あとは僕と同じ反応。
たしかに、カッツが好きなカティアには好きな味だろうね??
「これを今日のおやつにしましょう!!」
エディ達に食べさせる時間になってから食堂に持って行けば、エディ達は目を丸くした。臭いもまあ強烈だからエディやサイノスは鼻をつまんでいた。アナとかセリカはハンカチで鼻を押さえていたけど。
「「なんだ、この臭い!!?」」
「なんですのぉ!?」
唯一、鼻を押さえたりしていないセヴィルがワゴンの前に来ると、流石に顔をしかめた。
「これは……カッツか??」
「青いカッツです!!」
「「「「青いカッツ!!?」」」」
「サイノスとかが好きなシラユキピッツァの豪華版だってさー?」
「これが豪華か!!?」
「ふゅぅ!」
僕はおかわり食べたくて、ちょっとうずうずしているのに説明している時間がもったいない。
僕は自分の分を持っていくと、席で食べることにした。ちょっと冷めているけど……甘じょっぱいから美味しい〜!!
「「フィー!!?」」
「フィ、フィルザス様……そんなにも美味しいんですの??」
「美味しいよー??」
あとちょっとでまるまる一枚食べ終えそうになったから、僕は魔術で皆の前にひと切れずつ皿に載せたのを置いてあげた。カティアは『いっただきまーす!』って言いながら、すぐにクラウと食べ出した。
「おいひいー!」
「ふゅぅ!」
僕以上にふたりは、美味しい美味しいと言いながら食べている。クラウも最初は臭いを嫌がっていたのに、今は平気なようだ。
ふたりの様子を見ると、まずセヴィルが食べ出した。相変わらず無表情ぽいけど、甘いのは得意じゃないのにカティアのはちゃんと食べるんだから。
「……不思議な味だが。悪くない」
って言うんだから、気に入ったんだろうね? その後も食べ続けるくらいだから。
「…………ゼルが言うなら」
次にエディ、その次にサイノス。
口に入れた直後は面白い顔したけど、すぐに美味しいとわかればがっついたのだった。
「まあ!」
「不思議な辛味……それにいくつものカッツが混ざって!!」
アナ達も食べてくれたから、良かった良かった。カティアは全員が食べてくれたことでニコニコしていたし、それから全員でクアトロなんちゃらをお腹いっぱい食べた。
カティア以外、まともにその名前は言えなかったけどね??
(こんな日常で……今はいいんだ)
封印の綻びは強化され、クロノ兄様のお陰でカティアの魂の傷は修復出来た。
だから、セヴィルへの想いを自覚出来そうになっている。
それの手助けを、僕で出来るのならなんだってしよう。
雪深い季節はまだ続くが、この日常も大事だから。
次回は水曜日〜