282.先生らしい仕事-②(カイツ視点)
お待たせ致しましたー
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆(カイツ視点)
魔術を行使出来る事に意識が向きがちではあったが。
カティアちゃんの術は、よく見れば荒っぽさが目立つ。
いやむしろ、それが普通……でもない。80歳がここまで出来るのも異常ではある。それなのに、自分が今まで魔術を行使したことがほとんどないのが不思議だ。
彼女の家名である『ゼヴィアーク』と言うのは、市井である俺では当然知らない。陛下や先代方についてはご存知かもしれないが……こんな逸材の両親がいないだなんて、不自然過ぎる。
それに、カティアちゃん本人も子供らしくない。両親がいないこの世代はもっと、子供らしく他人に甘えたいのに。
(……妙に大人びている)
加えて、かなりの調理技術を身につけている。リチェルカーレ料理長と同等……いや、それ以上。あの方達の知らない料理も多いときた。
(……だが、俺なんかがそこを追求しても意味がない)
今は、この子が万が一の事態に対処出来るように、魔力のコントロールや他の魔術などを教えていくだけだ。
それが俺の罪滅ぼしであり、陛下方から課せられて任務であるから。
許可をもらって、カティアちゃんの腹部に触れているが……魔力の循環は術の精度と同じく、いくらか荒れている。水系の術で渦を繰り出すイメージで言うと……穏やかではあるが、強く渦がうごめいている感じだ。これが、カティアちゃんの魔力コントロールは荒削りな証拠。
俺は今から、これを安定させていく修練方法をこの子に伝えなくてはいけない。
「カティアちゃん、イメージの仕方はだいたいわかっていると思うけど」
「はい」
カティアちゃんは、俺を真っ青な瞳で真っ直ぐに見つめてきてくれた。俺が誘拐した時も、こんな真っ直ぐな瞳で見つめてきたんだ。だから、誠心誠意込めてまず謝罪しちゃったんだが。
「その渦を……自分也に落ち着かせる。わかりやすく言うと、水たまりの水が波打ってないとか……みたいな感じわかる?」
「はい、大丈夫です」
「ん。それをイメージしながら……腹部を触ったまま落ち着かせていくんだ」
「わかりました」
魔法省に勤めて数十年程度の俺でも、腹部を触らずともコントロールは出来るが、他人に教えるのはこれが初めて。
カティアちゃんから離れて、カティアちゃんがコントロールの修練している様子を見てたんだが。
(……やっぱり俺、必要なくね??)
あっと言う間程ではないけど、徐々に徐々に彼女に帯びている虹色の魔力が収束していく感じが目に見えた。
カティアちゃん自身は気づいていないだろうけど……この年頃でこれが出来るって、所謂『神童』レベルじゃないか!?
口で説明したら即実行って、大人でも普通出来ないのに!?
「ふーゆゅぅ!!」
「あ」
神童レベルの理由がもうひとつあった。
カティアちゃんの隣に座りながらはしゃいでいる、クラウちゃん。
あの子が聖獣でなく、神獣であるから帯びている力も属性含めて尋常じゃない。
それを納得すれば、カティアちゃんのとんでもない逸材レベルが理解出来たし、魔力量を生かした魔術を教えてあげようと決めた。
次回は金曜日〜