261.ユティリウスとの出会い②(ファルミア視点)
お待たせ致しましたー
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆(ファルミア視点)
結局、私が折れるしかなかったが。王子様は、家臣の娘の料理だと言うのに、毒味役も伴っていないから嬉々として……私が作ったシュークリームを食べてくれることになった。
「中には、二種類のクリームが詰めてあります。勢いよく食べると、あふれ出てくるのでお気をつけください」
「この中にクリームが??」
「……毒はありませんので、どうぞ」
「うん!」
ライトグリーンの瞳もだけど、顔まで輝かせているわ。……なんで、そんなにも私の料理に興味を持つのかしら??
さっきも感じた鼓動が速まっていくんだけど!?
この王子様に……私なんでドキドキしちゃうのかしら??
で、王子様はためらわずにシュークリームをカブって食べ始めた。注意したけど、ちょっとはあふれちゃったから、チョコのクリームが手についちゃったわ。
「殿下、ハンカチを」
「いいよいいよ、このくらい。けど、すっごい美味しい!! 宮城で出されているのより、俺こういうのが好きだなあ?!」
って、なんてないことのように言うけど……えろいから!?
手についたクリーム舐めるだけなのに、何だかエロく見えてこっちが恥ずかしくなったわ!?
だから、勝手だけど自分のハンカチを使ってベトベトの部分を無理に拭った。
「失礼しました。ところで……何故、私のような貴族でも特異な者にお声をかけてくださったんですか??」
ハンカチを適当に畳んでから仕舞い、姿勢を 正して彼の本命を聞いてみることにした。
だって、直属護衛部隊の隊長の長女に会いに来る理由が弱いと思うもの。私が四凶達とお弁当とかおやつを食べているところを何度か見たにしたって。
わざわざ、学園の後輩でもある小娘のところに来る意味もわからない。
「んー? 理由はあるっちゃあるけど」
王子様はまだ半分残っていたシュークリームをぱくぱくと食べながら、言葉を紡ぐのを考えていたわ。
「であれば、我らが代わりに答えるか?」
「窮奇??」
ほかにも、饕餮達まで……イケメンバージョンで控えてくれていたのに、立ち上がったのだ。人間じゃない存在だからか、彼が王子様でも主人の私に何かあってはいけないからと……立ち向かおうとしているかもしれない。
私は慌てて王子様の前に、四凶達から庇うように立った。
「「「「ファル??」」」」」
「疑問は私の方こそ聞きたいわ。この方は紛れもなく、王太子殿下よ? 無礼なことをしないで。あなた達でも容赦はしない」
「「「「…………」」」」
なんて言ってみると、今の外見が大の大人なのに縮こまって子どものように見えてしまったわ。言い過ぎたかしら??
「はは!! 四凶達とそこまで信頼関係を築いているんだ? 見てた時よりも面白い!!」
そして王子様は、面白いものを見たかのようにお腹を抱えて笑った後、立ち上がってからまた私の髪を撫でた。撫でるのが癖なのかしら?
それと、とびきりの笑顔をしてから……体術が得意らしく、いきなり地面を蹴って飛び上がり、木の枝を渡ってどこかに行ってしまった。
けど、私もそろそろ教室に戻らなきゃだから、彼もそうかもしれない。
「……本当に、なんだったのかしら??」
王子様……ユティリウスとはこれ以降しばらく会う事はなかったけれど。
次回は金曜日〜