260.ユティリウスとの出会い-①(ファルミア視点)
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☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆(ファルミア視点)
だけど、すぐにその特徴的な髪色とライトグリーンの瞳に思い当たる事があり……私は地べたに座っていた姿勢を正して、彼に向かって最敬礼をした。貴族の嗜みと言うか地獄のマナー特訓の成果ゆえに出来ることだ。
「ユティリウス殿下、ご機嫌うるわしゅう。ムスタリカ家のファルミアと申します」
ほんと、いきなりで驚いたけど……なんで、王太子殿下がこんな辺鄙な学園の裏庭にいるのよ!?
ものすっごくびっくりしたわ。
けど、私とは違い、四凶達は彼に最敬礼など一切しなかった。素の自分を出すわけにいかないからそのままにするしかないけど!?
「へー? ムスタリカの? じゃあ、彼らが君の四凶??」
「……はい」
王家の直属護衛部隊などを輩出している家の事は知っているようだ。
気配を探ったが……護衛らしき存在が誰もいなかったわ? 四凶達がいるから恐れているのかしら??
だとしたら、すっごくだらしないんだけど!!
「? ああ、心配する必要はないよ? 俺の護衛はまいてきたんだ」
「……振り切って、きたと?」
「そう。面倒くさいから」
なんだか、顔のイメージとは違って……結構ルーズな性格なのかしら??
けど、そんな王子様がなんで、将来の護衛になるかもしれない私なんかに会いに来たのよ??
色々意味不明だけど。
あと、私笑わないわけじゃないけど……家族や四凶以外だと表情が死んでいるらしいのよね?
だから、王子様が私の顔を見て言い当てたのが、少し驚いたわ。
そして、その王子様は……私の髪を撫でた後、自分の着ている服を気にせずに地面に座ったわ。
「……殿下?」
「何か食べてたの?」
高級素材の服なのに、良いの!? とか言いたいけど……王子様はにこにこ笑っているだけだった。どう言うわけか、私と話をしたいようだ。
「……デザートですが」
「甘いもの! 俺好きだなあ」
「……召し上がられるんですか??」
「うん! 実は、君が四凶達と何回かこの辺で食事してるのみてたんだ。今日こそは、って俺は君の料理食べてみたかった」
「……!? 見て、いらした?」
「会話もちょこっと聞いてたよ? 貴族令嬢なのに、君は結構手の込んだ料理が作れるらしいね?」
異世界の転生者だと言うことは……多分、バレていないはず。
そして、王子様は私の後ろにあった漆塗りの箱をためらいもなく手に取った。
「!? それは」
「……これがお菓子? 俺見たことないけど」
箱にあったのは……この世界でも最初に作ったシュークリームだ。中身はチョコと生クリームのダブルシュー。見た目は拳大の茶色いまんじゅうのようだから、彼が知らなくて当然。
何回か、こっそり城下町に行ったことはあるけど……ヴァスシードって国は中華文化が強い国らしく、服装もだけど食文化も西洋と中華を混ぜた感じだ。
だから、この王子様が知らないのも無理はない。
そして彼は、シュークリームを食べてみたいのか、ライトグリーンの瞳を輝かせていたわ。
「…………殿下に召し上がっていただけるような仕上がりではありません」
「けど、四凶達とは食べてたんでしょー? 俺は食べたいなあ?」
「…………」
ここは折れるしかないのか、どうしようか。
窮奇を見ても、首を横に振られただけだったわ。
次回は火曜日〜