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【完結】ピッツァに嘘はない! 改訂版  作者: 櫛田こころ
第六章 実り多き秋の騒動
227/616

227.過去の事、これからの事(途中別視点有り)

 

「え、あ、いえ、だだだ、大丈夫です!」


 それより、お顔を下げてください!

 余計に僕の心臓が持ちません!


「セーヴィル、君無駄に顔がいいんだからカティアが恥ずかしくなるでしょ?」


 ここでフィーさんの助太刀が。

 それを聞いたセヴィルさんは少し不機嫌な表情になって、僕から離れると今度はフィーさんに近づいていく。


「父上似だから仕方がないのだが?」

「だーからだって。カティアは君の外見だけを見てなくても、いきなり目の前にそれがあれば恥ずかしくなるもんだよ?」


 前もあったでしょ?

 フィーさんがそう言うと、セヴィルさんはようやく自覚したのか息が詰まった音が聞こえてきた。

 多分だけど、これまで以外の、特に収穫祭で顔を近くで見た時を思い出したのかも。

 あれは、今思い出しても非常に恥ずかしかったです!


「てゆーかぁ、独り身の僕の前でいちゃいちゃしないでほしいよー」

「それが本音か⁉︎」

「進展については君達含めてほとんどなかったようだしねー? とりあえず、食堂に行こうか」

「フィルザス神!」


 恥ずかしさから軽く小突こうとしたセヴィルさんの拳を、フィーさんは受け止めることなくさっとかわしてしまう。

 それから僕とクラウのとこに来て、行こう行こうと空いてる手を掴んで引っ張る。


「セヴィルの性格じゃ、気軽にこう言うのも出来ないしねー?」

「ふゅゆぅ」

「わ、わ、ふ、フィーさん!」


 転けたりはしなかったけど、セヴィルさんを置いてきやしないだろうか?

 ちょっと振り返ったが、セヴィルさんは何故か肩を落としながらなんとかついてきてました。


「ふふ、セヴィルがあーんな積極的に関わろうと動くのなんて。後にも先にもエディ達を除いたら君だけだよ」

「へ?」


 変な声が出ても、フィーさんは気にせずに口笛を吹いた。


「ごくごく限られた子達にしか心を開こうとしなかったからねぇ? それと昔神域にエディが無理に連れてきてた頃とかは、さっきみたいな行動なんて考えられなかったさ」

「……違ったんですか?」

「うん。一応神だから敬意は払ってくれてたけど、この見た目だから全然構ってくれなかったしねぇ?」


 僕の知らないセヴィルさんが、たくさんあることはわかっている。

 けど、昔とは言えフィーさんすら関わろうとしてなかったなんて、何かあったのだろうか?


「聞きたいなら、セヴィルに直接聞きなよ。僕が思ってること全部が合ってるわけじゃないし、君はあの子にとって特別だもの」

「特別、ですか」

「御名手抜きにして、惚れられてるんだから自信持ちなよ?」

「そ、そそそそ、それ……は」


 告白されたことは、直接的に皆さんに伝えてはいない。

 セヴィルさんも特に教えてはないようだけど、僕への対応の仕方で大抵の人にはバレてしまってる。

 特にフィーさんは、触れなくても相手の記憶が読み取れるらしいから、言わなくてもバレてるでしょう。


「あ、もう着いたっ」


 とんって、フィーさんが止まれば目の前には黒い木か石で作られた立派な扉。

 玄関に負けないくらいの大きさと彫り物がされてて綺麗だ。


「ここが、食堂なんですか?」

「と言っても、客間に近いかな? エディ達を通すのはゲストルーム以外だとここくらいだし」

「他は、特に通されたことがないな」


 セヴィルさんも追いついてきて、僕の隣に立つ。

 そして、まだ掴まれたままのフィーさんの手を、僕の腕からぺいっと引き剥がした。


「すーなおじゃないんだからー?」

「余計なことはいい」

「はいはーい」


 扉のノブをフィーさんがゆっくり開くと、中は客間?って言ってたようにすっごく広かった。

 エディオスさんの執務室以上に広いお部屋には、ゆったりくつろげれるソファ以外には食事用の長いテーブル。

 机にはまだ食事が乗っていないから、ディックさんのようなコボティさん達があとで持ってきてくれるのかな?

 他は大きな砂時計以外、目立った家具が少ないくらい。

 砂時計の時刻は、(ゆう)二から夜一の間。大体夕方の6時前ってところだ。


「お茶はさっき飲んだから、とりあえずくつろいでていーよー」

「ふゅふゅぅ!」


 フィーさんの言葉にクラウは僕の腕からすぽんと抜け出し、早速と言わんばかりにソファまで飛んでいった。

 座るなんて当然しなくて、クッションの上で飛んだり跳ねた。


「クー、お行儀悪いよ!」

「ふーゅふゅぅ!」

「言うこと聞かなきゃ……どーなるかわかってる?」

「ぶ、ぶゅぅ!」


 後半、わざと声を低く落としたら、クラウは跳ぶのをやめてディックさんみたく敬礼のポーズをした。


「別に気にしてないよ?」

「そうは言いましても、癖になっちゃダメですよ」


 それに、どれだけ高級なソファかわからない。

 もし壊したら、お金を持ってない僕じゃ弁償すら出来ないもの!


「けど、最初にここに来たエディと同じことするからちょっとびっくりしたよ。あのソファが座り心地いいのは当然だけどぉ」


 エディオスさん、一体いくつの時にこのお屋敷に来たんですか。









 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆(エディオス視点)







「こちらですぞ!」


 ディックに案内され、アナとサイノスが無理についてきてようやく到着したセリカのゲストルーム。

 ただ、今回女達は一人部屋じゃないらしい。

 ディックが言うには、アナくらいしか本邸には泊まったことがないから、カティアとセリカが一人だと不安がるからだと。

 指示したのは当然フィーだが、あのふざけた態度とは違って気遣いはさすがだな。


「お開けしますので、お待ちください!」


 ノブの前で、ディックは軽く指を振った。

 途端、鍵を開けたような音が耳に届き、扉もひとりでに開いていく。

 俺達からしたら、なんて事のない魔法でもカティアが見たらどう思うか。


(きっと、『何ですかこれ⁉︎』とか言いそうだ)


 それよりも、アナに早く入れと言われたので、セリカの身体を少し抱え直してから中に入った。

 造りは以前も借りたことのある一人用のゲストルームよか広い。

 三人分の荷物は端に寄せてあり、ベッドは少し間隔を空けたのが三つ。

 どこにセリカを寝かせるかと悩むが、せっかくだからとアナが真ん中を指したのでサイノスと協力してそこに寝かせる。


「よく、寝ておりますわね」

「こうして見ると、ガキの頃と変わらねぇな?」


 あえて口にしない、あの事件前後のこと。

 あれがなければ、もっと違う人生だったかもしれなかっただろうが……それがなかったら、セリカはカティアと出会うこともなかった。

 ほぼ同じ年同士でも、カティアは実年齢とかを気にしてるからセリカにも敬語だ。

 セリカの方は、出会いが出会いだったからカティアの正体を知っても敬語にすることはなかった。

 いいことではあるが、まだセリカからぎこちなさは消えない。

 俺はまだ神王だからわかるにしても、はとこであるサイノスすら遠慮しがちなとこが多いそうだ。


「ではでは、セリカ様がお目覚めになられるまでこちらにおりますか?」

「そうですわね。エディお兄様だけでは何があるかわかりませんもの」

「……お前、引きずるなぁ?」

「自覚されて間もない殿方ほど、油断出来ませんわ」


 それなら、お前のサイノスへの気持ちとか本人がいる前でバラそうか?

 だが、下手したら俺以上に片想い歴の長いこいつを、不用意に傷つけられない。

 実は両想いだったってことと、俺が茶化したらサイノスが何を言うかわからんからだ。


「では、わたくしめはいつものようにお呼びしていただけましたら、すぐに駆け付けますので」

「おう」


 ディックは深く礼をしてから出て行き、あの小さな身体からじゃ想像もつかない力で扉を閉めてくれた。


「で? ぶっちゃけ進展あったのか?」


 ディックがいなくなるなり、サイノスが速攻で聞いてきた。


では、また明日〜〜ノシノシ

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