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【完結】ピッツァに嘘はない! 改訂版  作者: 櫛田こころ
第六章 実り多き秋の騒動
225/616

225.何があったのか?

 

「ほとんど、気ぃ失ってんのと同じだろ? つか、神霊(オルファ)にそれだけ言われてお前さんはなんで普通なんだ?」


 サイノスさんがセリカさんから離れ、上座にいるエディオスさんの方へとどんどん近づいていく。

 横顔しか見えないけど、サイノスさんなんだか怒ってる?


「お、おい、サイノス?」

「幼馴染みとしてもだが、セリカのはとことしちゃ黙ってらんねぇんだよっ」


 イシャールさんが今回居ないから、ある意味セリカさんのお兄さんって事かな?

 それなら、怒って当然。

 セリカさんの気持ちを踏みにじっていなくても、ほとんど反応を見せてないまま彼女を抱えてたのは、非常におかしいからだ。


「他に何言われたんだよ。セリカが正気に戻らねぇくらいってのは?」

「言わないなら、僕からミュラーに聞いちゃうよー?」

「ちょ、そ、それは、やめてくれ‼︎」


 フィーさんが割り込んだ途端、引きつった顔が首まで真っ赤に染まってしまった。

 これには、真近にいたサイノスさんも少し驚いていた。


「エディ……?」

「き、ききき、聞くな! つか、言えるか!」

「どっちだ⁉︎」


 これまで一度も見たことがないくらいに慌て出したエディオスさんに、サイノスさんが軽くチョップした。

 当然そのままテーブルに頭をごっちんこさせてしまうが、エディオスさんはすぐにむくりと赤い顔を上げた。


「……最低、女達には言えねぇ」

「まあ、何故ですの⁈」


 アナさんは納得いかずにほっぺを軽く膨らませた。

 僕も納得出来ないけど、セリカさんが元に戻ったら聞けるかな?と思って黙っておくことにした。


「……つーことは、後で俺やゼルには言えるってか?」

「う゛⁉︎」


 さすが、サイノスさん。

 見事にエディオスさんの揚げ足を取られました。


「んー、僕はいない方がいいー?」

「なんか用でもあんのか?」

「ちょっとねー?」


 サイノスさんが聞いても、フィーさんはウィンクするだけでした。

 それからなかなか正気に戻らないセリカさんは責任持ってエディオスさんに運んでもらい、本邸に移動するために小屋の外に出るとお空はもう夕闇に変わっていた。


「ちょーっと待っててねー?」


 一人駆け足で開けた地面に行くと、フィーさんはその辺に落ちてた小枝を使って何かを描いていった。


「こうして、こーして……ちょいちょいちょいっと!」


 落書きするように言ってても、出来上がっていくのは大きな大きな魔法陣みたいな複雑な模様。

 ちょっとだけ、カイツさんが僕を捕まえた時に使った転移方陣に似てるような気がしたけど、規模が段違い!

 僕達全員が円の中心に入っても余裕過ぎるくらい大きな魔法陣だった。


「ん、いい感じ! おーい、おいでー?」


 来い来いと手招きするので、線を踏みすぎないように足を運んでみた。

 けど、線はそこそこ深く刻まれてるのか、簡単に消えなかったので少しほっと出来た。

 全員がフィーさんを囲むように立てば、フィーさんはにっこり笑ってまだ持ったままの枝を空に向けた。


「ΞΘΦΣΔΖΞΛ、ΜΝΩΧ!」


 久しぶりに聞く、フィーさん特有の呪文!

 最後の力強い掛け声のようなところになると、魔法陣が一瞬黒く光ってから次に銀色の光が視界を埋め尽くしていく。

 思わず目をつむったら、誰かに肩を掴まれた気がしたがクラウ落とさないようにするのに必死でした。


「つーいたよー!」


 フィーさんの大きな声が耳に届くと、銀の光はもう消えていた。

 目をゆっくり開けてみたけど、今の僕はお子ちゃまサイズなので皆さんが見えてるものはまったく見えない。

 すると、となりのにいたセヴィルさんが僕の肩に置いてた手を離して、来い来いと手招きしてきた。


「ここからなら見える。フィルザス神の本邸だ」

「え?」

「ふゅふゅぅ!」


 セヴィルさんが指した方向を見た途端、目が飛び出るかと思いました!


「ここここ、これが、フィーさんのお家⁉︎」


 今僕らは少し丘のようなところに固まって立ってて、少し坂を下った先にはフィーさんの本邸がありました。

 エディオスさんのお城程じゃないけど。

 貴族のお屋敷って行ったことないけど。

 ヘクタールとか坪とかがわからないくらい、建物の高さも規模も例えようがないくらいの豪邸が眼下に広がっていたんです!


「僕と仕えてくれてる子達しか住んでないから、だいぶ小さいよ?」

「あれでですか⁉︎」


 今思い出した、世界遺産や文化遺産なんかの豪邸に負けないくらい大きいのに!


「とにかく、行こっか? コボティの子達には知らせてあるから」

「コボティ?」


 聞き覚えがあるような、って首を傾げたらフィーさんにくすくす笑われた。


「君が来た日にちょっとだけ話した子達だよ。聖獣の一種で、知能はヒトの子と変わらないくらいあるし、手先が器用なんだ」


 早く早く、とも言うので、彼の後についていきながらちらっとエディオスさんの方を振り返った。

 腕に抱いてるセリカさんはもう眠ってしまったようで、それを見てるエディオスさんの表情は愛しいものを見るような優しい表情だった。


(……ちゃんと、自覚出来たんだ)


 御名手のことは教えれないけど、良い兆候だと思う。

 いつ、どのタイミングでセリカさんとその時(・・・)が来るか僕にはわからないけど、良い結果になって欲しい。

 エディオスさんは自覚したばかりでも、セリカさんの想いが成就されてほしいから。

 それにしても、近くにつれてフィーさんの本邸の凄さにますます圧倒されちゃいます。


「お、大っきい!」

「ふゅぅ!」


 クラウと一緒に見上げても、首が痛くなっちゃうくらいの大きな鉄格子の門。

 その鉄格子には色んな草花のような模様が浮き彫になってて綺麗でした。


「じゃ、改めていらっしゃーい」


 フィーさんが僕らの方に振り返ってからそう言えば、鉄格子の門が音を立てて内側に開いていった。


「ふゅふゅぅ!」


 クラウは見るもの全部が珍しくて不思議だから、こう言う自動ドア的なのも面白いみたい。


「お待たせしましたぞ!」


 奥の方から、とことこって走る音と一緒にちょっと不思議な語尾の声も聞こえてきた。

 フィーさんの横から覗いてみると、奥から服を着たテディベア?、いやヨークシャテリア?って感じの生き物が走って来ました。

では、また明日〜〜ノシノシ

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