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【完結】ピッツァに嘘はない! 改訂版  作者: 櫛田こころ
第六章 実り多き秋の騒動
220/616

220.インターバル?(途中別視点有り)

 







 ◆◇◆







「神域って広いですよねぇ……」

「ふゅぅー」


 どこまで飛ばされたかはわからないが、神域ってすっごく広い。

 今休んでる所に来るまで、セヴィルさんが走っても走っても木以外は泉とか川とかばっかりの、自然豊かな風景だった。

 道は平坦とは言いにくいけど、思ったより凸凹してない。


「セヴィルさん、この神域ってフィーさんの小屋や本邸以外は建物ってないんですか?」


 僕がそう聞くと、セヴィルさんは少し首を傾げながら口を開いてくれた。


「一応、端には神殿のようなものがあるが、ほとんど奴専用の転移方陣に近い。そこを訪れた者達が、フィルザス神に知恵を借りたい時にあいつが手を貸す程度らしいが」

「らしい?」

「俺達は奴に直接会えるからな。話には聞いてても、奴自身その事については何故か誤魔化すんだ」

「そこって、遠いんですか?」

「ここからだと、フェルディスを使わなければ無理だ」


 転移魔法の札でも到底無理で、前にカイツさんが僕に使った簡易版の方陣も同じく。人間の魔法では、ワープって結構難しいのだそうだ。

 そこをなんとかしようと研究する人達は多くても、神様であるフィーさんに及ばないのは当然。

 進化はしてても、方陣ってワープゲートがないと出来ないのが現状らしい。


「行ってみたいのか?」

「いえ、どんなとこかなって思っただけです」

「そうか。この神域は一応神王国内になるが、国土の四分の一程あるから一日や二日で回れない」

「そ、そんなにも?」


 前にファルミアさんが、神王国の領土がアメリカ大陸くらいあるって言ってたけど……それの四分の一?

 日本よりももっともっと大きいって言われても、凄いとしか思えない。

 実際に来た場所が、まだごく一部だから無理もないかな?


「セリカには、まだ習っていないのか?」

「ほとんど、文字の勉強の延長ですね。最近、ちょっとずつ歴史みたいなのは習い始めてはいるんですが」


 その中に、神域は文字通りフィーさんの領域としかまだ習っていない。

 フィーさんが招かない限り、ただの人間では入る事が出来ない禁域ともセリカさんは言ってはいた。

 僕は何故最初その中でも、象徴と言われる聖樹の前で5歳児になってたのかはわからない。

 それは、僕をこの世界に送ったフィーさんのお兄さんの一人が関係してるだろうが。


(……今、考えるのはよそう)


 封印が強化された理由も、あの日以来フィーさんは僕を調べる事もなく一人で動いているようだ。

 それについて、僕は聞こうとしない。

 いや、怖いかもしれない。

 その結果が、何なのかわからないからだ。


「? どうかしたか?」

「あ、いえ!」


 考え込み過ぎて、セヴィルさんに少し心配かけたみたい。

 なんでもないと誤魔化したら、一瞬彼の眉間にシワが寄ったけどすぐにいつもの無表情に戻ってくれた。


「とりあえず、神域についてはフィルザス神に聞くのが一番だな。すべては無理でも、カティアにならエディオスくらいまで教えるだろう」

「そうなんですか?」

「経緯はともかく、あれがエディオスと同等くらいに接する人間は限られているんだ。意外に思うかもしれないが、神王家周辺の輩にはそこまで接しない」

「マリウスさん達は普通ですけど?」


 むしろ、親しいと言っていいのに。

 それにフォックスさんとも親しそうではあった。

 最後に会った時はハリセンで叩かれてた記憶しかないけどね。


「それは、ある程度付き合いがあるからだ。大抵の奴ならフィルザス神の正装を見て気づき、敬意を表すだけだな。俺はエディオスが昔無理に神域へ来た時に巻き込まれて、だが」

「あれ? 人間は簡単に入れないんじゃ?」

「ふゅ」

「俺やエディオスには、神霊(オルファ)の血が流れてるからだ。だいぶ薄れていても、エディオスは直系の王子。俺はその従兄弟だから入れたんだ」


 同じ神霊(オルファ)のリーさんが言っていた、エディオスさん達のご先祖様。その血が流れている人間の場合、神域に訪れていい条件に合うみたい。


「っ、フィルザス神との馴れ初めまで話していたら、取りに行くのが遅くなるな?」

「あ、そうですね!」


 なので、休憩を終わることにして再び抱っこされて出発しました!









 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆(サイノス視点)








 マジで甘い雰囲気とかならねぇ……。


「ここは道なり、星の形の岩が見えれば右ですわ」


 とか。


「サイお兄様、そちらではありませんわ! 左の曲がった道です!」


 指示してくれんのはありがたい。

 ありがた過ぎるんだが……一応年頃の男に抱えられてんのに、安心しきってんのか今回の遊戯を楽しもうとしてるだけだ。

 恥ずかしがってた気配は引っ込んで、とにかく突き進もうと先を急ぐ姿勢。

 だが、結構走ってるからいい加減休憩を挟んだ方がいい。

 バテてはないが、飛ばし過ぎても急ぐのは帰りだからだ。


「アナ、近くに川とか泉はないか?」

「ありますが、どうかされましたの?」

「ちぃっと休もう。あんま飛ばし過ぎっと、帰りがキツくなるしな?」

「そ、そうですわね! 申し訳ありませんわ!」

「いーいって。んで、水場はどっちだ?」

「この道を左に逸れて、樹々の向こう側にですわ」

「よっしゃ!」


 方向転換するために一度踏み止まり、その勢いを利用して左に向いたら地面を蹴り上げて、少し先の樹まで跳ぶ。

 幹が目の前に来たら、アナをもう少し抱えて利き足を幹に向かって伸ばす。足裏が幹に着いたら、そのまま蹴って身体を上へ飛ばした。

 すぐに枝が目の前に来たので、次はそれを蹴って避けてを繰り返しながら頂上に向かう。

 上へ出たら、次は隣の樹へ跳ぶ。

 それを繰り返して、水場に向かうって寸法だ。


「久しぶりですわ、この方法!」


 前を向いているから顔は見えないが、声の感じから怖がる様子はなく楽しんでるのがわかる。

 たしかに、俺は単独でする以外誰かを抱えるなんてない。

 男なんて怪我人以外はまずないが、アナをこうして抱えたなんて覚えてる範囲でも150年以上前。

 そりゃ、淑女が抱えられる機会なんて早々ない。

 あったとしても、想う相手か御名手か。


(アナ、のか……)


 御名手はわからずとも、想う相手くらいいたっておかしくない。

 俺だって同じでも、想う相手を今腕に抱いている。

 この事態だけでも奇跡でしかないが、仕組んだのは御名手を知ってるフィーだ。

 お互いが御名手と気付くまでは創世神とて告げない慣習。こう言う時だろうと思っても、俺もアナも特に変化がない。


「あそこですわ!」

「お?」


 力強い声に意識を前に向ければ、聖樹水の泉程じゃないがそこそこ大きい泉が目に飛び込んできた。

 聖獣とかは見当たらないが、休むにはちょうどいい。

 俺は岸辺に近い樹の上で一旦止まってから、アナに負担がかからないようゆっくり地面に降りた。


「ほい、お疲れさん」

「ありがとうございますわ……あら、少しふらつきますわね」


 そう言いながら、彼女が俺の腹辺りに背を預けてきた。

 反射で抱きしめそうになったが、堪えて受け止めるように彼女の肩を支えてやった。


「抱えられてても、体力は結構使うしな?」

「す、すみません! すぐに離れますわ!」

「いいって」


 不意打ちでも、想う相手に触れるのは嬉しかった。

 例え、幼馴染みでも兄貴分にしか見られなくても。


「エディ達がすぐに追いつくとは思えねぇし、少しくらいゆっくりしてていいと思うぜ?」

「……エディお兄様、セリカに無茶させていないでしょうか?」

「……わからんなぁ」


 俺以上に意識しまくりなあいつの行動は、今回限り予想しにくい。










 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆(セリカ視点)







 他の皆様にどれだけ遅れたかわからないが、とにかくエディお兄様に指示を出そうと頑張っている。

 エディお兄様が走ってるから、会話がほとんど出来ないのは当然だけど……ディシャスに乗っていた時と同じくらい無言が続くのはやっぱり淋しい。


(せっかく、お兄様と一緒なのに……)


 少し前に抱える抱えないで押し問答してた時が、よっぽど良かった。

 今日お兄様とお話したのは、ほとんどが確認事項についてだ。

 会話らしい会話って、宮城へ戻って来てからほとんどしてない気がする。


「……どーした?」

「え?」


 移動を始めてから、指示を仰ぐ以外聞かれなかったので少し驚いてしまった。

 顔を上げれば、すぐ目の前にエディお兄様の男らし過ぎるご尊顔があって顔から火を噴きそうになる。


「え、え?」

「え?は俺の方だ。急に黙ってどーした? 疲れたか?」

「だ、だ、だいじょ」

「まー、ちいっと休憩挟むか。どっか水場あんなら移動するか」


 休憩は決定みたいで、急に立ち止まらず少しずつ速度を落としてから止まってくれた。

 それからもう一度私を見ると、何故かため息を吐く。


「俺達程じゃなくても、お前だってカティアの家庭教師とか自分の教養を身につけ直すのに忙しかっただろ? 無理してたなら言えよ?」

「む、むむむ、無理してない!」


 たしかに、シュレインの学園にいた頃以上に忙しい毎日でも、家庭教師以外急ぐことではなかった。

 教養は貴族令嬢として必要不可欠だし、別に苦じゃない。

 それを伝えようにも、いざお兄様と二人っきりって現実になると上手く話せれないなんて。

 この人が私を説得しに来た日には、あんなに話せてたのに。

 とりあえず首を横に振っても、エディお兄様はまた小さくため息を吐かれた。


「とりあえず、水場行くぞ。近いか?」

「え、え、えーと……あ、その茂みを右に少し進めば川よ」

「んじゃ、行くか?」

「ひゃ⁉︎」


 地図の通りに言ってすぐに、お兄様は私をしっかり抱え直してまたいきなり走り出していった。

 川にはすぐに到着して、岸辺でお兄様が止まると私を立たせやすいように降ろしてくださった。


「あ、あら?」


 ただ抱えられてただけなのに、足元がおぼつかない。

 それを見たお兄様が、すぐに肩を抱えてくださったので転けなかったけれど。


「やっぱ、疲れてたんだろ」

「そ、そうかな?」

「俺も急ぎ過ぎて悪かったぜ。負けたくねぇのは嘘になっけど、アナに負けなきゃいいしな?」


 お兄様と、少しだけ話せてる。

 それが嬉しくて、ふらついていた身体が落ち着くなんて単純だわ。


「お姉様だけ?」

「ゼルは競い合うのにあんま興味ねぇし、カティアと久々に二人っきりになれたんならそっち優先だろ」

「たしかに! ついこの間、ゼルお兄様がカティアちゃんのお部屋に行ったって聞いたわ!」

「……事情知らなねぇ奴が知ったら、危ない奴に見られるな」

「そ、そうね……」


 他に聞かれない状況でも、今の話題は良くなかったかも。

 けれど、お陰で緊張感が抜けたみたいで、エディお兄様とお水を少し飲んでからもお互いのことや皆様の事を教えてくれました。

では、また明日〜〜ノシノシ

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