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【完結】ピッツァに嘘はない! 改訂版  作者: 櫛田こころ
第六章 実り多き秋の騒動
210/616

210.忙しく動く(途中別視点有り)

 








 ◆◇◆







 女性二人にスフレパンケーキを堪能していただいてから、僕は上層に戻ってマリウスさんに厨房をお借りしてからまたスフレパンケーキを作った。

 今度は、別の人達に食べてもらいたいからです。


「出来た、と」

「これは素晴らしい! 蒸し焼きにさせる事でさらに泡を潰さないように出来るんですね?」

「中層じゃこれではないんですが、まかないは薄焼きケーキにするそうです」

「そうなのですか、では我々もそうしましょうかな」

「是非。特に女性の皆さんが食べたそうにしてますし」

『あ⁉︎』


 いやだって、コックさんもですけど給仕のお姉さん達が物欲しそうに見てきたのはバレバレですから。


「そうですな。女性はこのような食べ物が特に気になってしまうでしょう。もう少し薄い方は片面がきつね色になれば大丈夫ですか?」

「はい、そのくらいで」


 焼き方を教えれば、早速と言わんばかりにマリウスさんはライガーさんや他にコックさんに指示を飛ばしていく。

 お姉さん達も食べれるとわかればいつも以上に張り切って仕事に励んでいく。

 その意気込みを、これから食べてもらう人に分けて欲しいとも思うが無理かも。

 なにせ、自分の休みのために必死こいて働いてもらってますから。

 準備が出来てからワゴンで運んでいくと、食堂はやけに静まり返っていました。


(あー……)


 フィーさんはセリカさんとクラウをあやしてくれてましたが、他の皆さんはぐったりと疲れていました。

 エディオスさんは顔を机に突っ伏してたけど、アナさんやセヴィルさんは片手で顔を支えていて、サイノスさんは椅子にもたれて天井を仰いでた。

 相当、皆さんお疲れです。

 理由は、当然あと数日後に控えた神域での収穫祭だ。

 なにせ、ここにいるメンバー全員がお城を空けちゃうんだもの。


「お、お待たせしました」

「あ、来た来た!」

「ふゅゆ!」


 クラウはすぐに飛んできて僕の頭に抱きついてきた。

 よしよしと撫でてあげれば、きゅっと小さな手が僕の髪を掴んできた。

 半日くらい離れてただけでも、先日のこともあったから余計に寂しくなったのかも。

 けど、今日はカイツさんのこととかがあったからフィーさん達にお願いしてたのだ。


「僕は先に食べちゃったんですが、薄焼きケーキの改良版です」

「どー見ても薄焼きじゃないよね?」

「向こうだと、スフレパンケーキって言うんです」


 とりあえず置こうにも、エディオスさんが起き上がる気配がないのでフィーさんが無理に体を起こしてくれました。


「……なんか、いー匂い」


 やっと覚醒されたようで、目の前に置いたパンケーキセットを見るや否やぱぁってお顔を輝かせた。


「なんだこれ⁉︎ 普通のケーキじゃねぇ!」


 エディオスさんの喜びように、他のぐったりされていた皆さんも顔を上げてくれました。


「うぉ⁉︎ 分厚!」

「まあ、可愛らしいケーキですわ!」

「……俺のだけ、食事にも見えるが?」

「セヴィルさんは果物より辛い方がいいと思いまして」


 セヴィルさん以外は通常の生クリームやハニーコームバターなどのデザートタイプだが、セヴィルさんのは挽肉に唐辛子をたっぷり使ったソースを添えたもの。

 ハンバーグじゃ重たくなるだろうから、折衷案として挽肉のソースにしてみました。あとハーブサラダも添えて。


「なんだこれ、泡みてぇ⁉︎」


 エディオスさん早速がっついてくれて、もう二つ焼いたうちの半分を食べ終えそうだった。


「美味しー!」

「絶品ですわ!」

「本当に泡みたい!」

「美味いなぁ?」


 皆さんも賞賛の声を上げてくださったので、ちょっとこそばゆく感じた。

 セヴィルさんは、声に出すよりも食べ進めることで評価を出してくれていた。

 下手するとお代わりとか言われそうな勢いだったが、ストックもうないんだよね……。

 僕はクラウにひと口ひと口食べさせてあげれば、クラウは体全体をぴこぴこさせながら喜んでくれた。


「あー……食った」


 全員食べ終えてから、給仕さんにコフィーを出してもらって食休み。

 だけど、エディオスさんは急いで飲んでから立ち上がった。


「美味いもん食わせてくれてありがとな! もうひと頑張りしてくるわ!」


 と言い残してから、行ってしまわれました。


「神王があの調子じゃ、俺も戻らねぇとな? カティア、ありがとな?」

「わたくしもですわね。本当にありがとうございます」

「済まない、カティア。俺も戻る」


 役職がある皆さんまであっという間にお礼を言ってから出て行かれ、広いお部屋にはクラウ以外三人になってしまった。


「まー、提案した僕が言うのもなんだけど。ちょっと急かせ過ぎちゃったかな?」


 フィーさんはまだゆっくり味わうように食べてくれていた。


「……けど、上の人がお城を開けちゃいますから無理ないですよね?」

「僕らは手伝えないしねー? あと数日だけ我慢するしかないよ」

「……はい」


 セヴィルさんとのお散歩も当然出来ないけど、こんなに皆さんが忙しく動いて時間を一緒に出来ないのはやっぱり寂しい。

 もともと、朝ごはん以外食事の時間はバラバラだったらしいが、僕が来てからは極力一緒にしてくださってると知ったのはここ最近。

 式典前はお仕事を調整されてたから知らなかったが、フィーさんの提案はイレギュラーだった。

 一人だけならまだしも神王様も含めて、上の役職を持ってる人が大勢出掛けるとなれば出来るだけお仕事を終わらせたり割り振らなきゃいけない。

 とは言え、僕も差し入れ以外にすることはある。


「私達もお勉強ね?」

「はい」


 クラウに全部食べ終わらせてあげてから、僕とセリカさんも立ち上がった。


「じゃあ、クラウは僕と散歩行こ?」

「ふゅ」


 今日はミニテストを行う予定でいるので、クラウがベッドでお昼寝してると気になっちゃうからだ。

 フィーさんにクラウを預けてから、僕はセリカさんと食堂を後にした。









 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆(フィルザス視点)








 自分で提案したとは言え、女の子二人の寂しそうな笑顔にどうすればいいか僕も悩んだ。


「どーしよーかなぁ?」

「ふゅ?」


 抱えてたクラウはくりんと首を僕の方に向けた。

 相変わらず、念話を送る方法も僕が送りかけても返事がなく鳴き声だけなので会話が出来ない。


(裏庭だけど、暗部の子の気配が増えてるから無闇に独り言でも言えないし)


 唯一話せるフォックスは、セリカの護衛。

 今はカティアも一緒にいるから娘のシェイルは近衛に戻されてるだろうから、いないのは好都合でも任務中に雑談するなんて出来ない。

 前にレストにバラした時は特別だったからさ。


(兄様達に連絡するのも、ちょうど神域に帰るからしない方がいいよね)


 封印が強化された件については、別の方法で伝えはしておいたけど返事が返って来ない。

 何かあっただろうが、あちらで接触してる最中かもしれない。


(なんで、わざわざ強化したのかな……?)


 戻ると、不都合かむしろ逆の状態になってしまうのか。

 聞こうにも、あの人の場合いつもの方法じゃ応答してくれない事が多い。

 カティアとも、多分あの時夢路を通してあっただろうが。


「あ、それだ!」

「ふゅ?」

「クラウ、いいお昼寝場所知ってるんだ。ちょっとお昼寝しようか?」

「ふゅ!」


 場所は交信に使った水たまり近くの、この城じゃ比較的大きな木の上。

 僕は背を預けやすい枝に飛び乗ってからクラウをしっかり抱え込んだ。


「ここで、ちょっとお昼寝しようか?」

「ふゅ」


 そう言うとクラウはすぐに寝息をたてながら眠りに落ちた。

 僕も、少し深呼吸を繰り返してから目を閉じる。

 ただし、意識は深い夢の中に落ちるようにさせてから。

また明日〜〜ノシノシ

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