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【完結】ピッツァに嘘はない! 改訂版  作者: 櫛田こころ
第六章 実り多き秋の騒動
209/616

209.ふわしゅわ、スフレパンケーキ

 

「あ、イシャールさん。僕もまた厨房お借りしていいですか?」

「あ? またなんか作るのか?」

「ちょっと、お詫びしたい人がいるんです」

「誰だ?」

「えーと……」


 識札で呼ぶように、フルネームはちゃんと聞いたけど来てくれるかどうか。

 すると、休憩室のドアからノックする音が聞こえたのでイシャールさんが返事をした。


「シャルか? いいぞ」

「失礼します。カティアちゃんにお客が来たのですが」

「あ、来てくれました?」

「結構沈んでたわよ?」

「誰呼んだんだよ」

「シェイルさんです」


 僕の護衛さんになってまだ少しで、どう言う感じで護衛してくださってるかわからないけど、カイツさんとの事件があってからは落ち込みが激しくてお仕事が手につかないらしい。

 そのカイツさんも、シェイルさんの名前を聞けば瞬時に青ざめてしまってた。


「俺とお前はメレンゲの練習だ」

「え、え⁉︎」


 イシャールさんがカイツさんの首根っこを掴んで、奥の厨房に行かれてしまいました。

 まあ、お罰も兼ねてのメレンゲ作りなら、腕を酷使しちゃうだろう。

 それに、イシャールさんの指導ってスパルタで片付けられないだろうから、頑張ってと手を振るしか出来ない。


「では、俺は馳走になっただけだが。例のシロップに近いものが見つかれば報告しよう」


 僕とここでお話してからすっかり敬語が抜けたジェイルさんだったが、彼のお役目はもう終わったし、シェイルさんと同席になったらシェイルさんが余計に落ち着けない。

 近衛騎士団と言うのは、サイノスさんやジェイルさんの直属の部下さん達が多い騎士団だそうなので。

 それをジェイルさんもわかってくれてるのか、一礼してから退室していかれた。


「で、私もご相伴に預かれるって聞いたけどいいの?」

「女性同士いいんじゃないかと思いまして」


 美味しいものは、一人より二人で食べた方がきっといい。

 とりあえず、シェイルさんをここに呼ぶようにお願いしてから僕も奥の厨房に入った。


「一定の間隔で泡立てろ!」

「お、俺調理人じゃないっすよ!」

「親父さんに食わせんなら、もうちぃっと頑張れや!」


 中はやっぱり、スパルタ訓練と化していました。

 そろーっと横を通れば、一瞬こっちを見たイシャールさんに口パクで『好きに使え』と言ってもらいました。

 だけど、中途半端に使った材料を主に使うことにして女性向けのスフレパンケーキを作ることにした。

 リコッタチーズは使い切っちゃったから、普通のスフレパンケーキ。

 ただし、盛り付けは写真映えしそうなくらい豪華にさせるつもりだ。


「まずは、生クリーム」


 ホイップクリームたっぷりの予定だ。

 チョコはソースにせずに、さっき砕いた残りを使うから大丈夫。

 果物は収穫祭で集めた残りを、軽く布で拭いたり洗ったり、切ってボウルに入れたりしてどんどん用意していく。

 この工程を済ませただけでも、まだカイツさんのメレンゲが出来てない。

 僕の方が小さいのに、やっぱり体が手順を覚えてるせいかな? そう思うことにしておこう。


「じゃあ、僕もメレンゲを」


 卵の中身を分けて、少量砂糖を加えた卵白のボウルの下に濡れ布巾を置いて、調理台の上でホイップしていく。

 普通の子供なら手間取ることが多いけど、やっぱり作り慣れてる僕だからか10分ちょっとで少し泡立ち、砂糖を何回か加えて混ぜていけば完成。


「おら、カティアは特殊でも出来てんだろ?」


 カイツさんをみれば、とりあえず出来ていてもイシャールさんからみればまだまだの出来なんだろう。

 それをどう使うかと言うと、ここのまかない用のおやつとしてパンケーキにさせたいらしい。

 それなら、メレンゲを無駄にしないだろうって。

 なので、カイツさんはメレンゲ作りだけを繰り返してもらい、僕とイシャールさんはパンケーキ作りに。


「卵黄と砂糖に牛乳を混ぜて、ここにコッテージ入れてもいいんですが今回は甘い物なので入れません」

「あの塩っ気はコッテージか?」

「ええ、そうです。コッテージを入れる時はこっちに砂糖は入れない方がいいんですけど」


 具体的にチーズの種類は違うけど、ここじゃ言えないので誤魔化します。


「綺麗な黄色になってきたら、ふるった粉類にほんの少しの塩を入れて優しく混ぜます。混ぜ過ぎないのがコツです」


 ここに、作っておいたメレンゲを回数を分けて切るように混ぜる。

 リコッタチーズを使う場合は、メレンゲにも砂糖を入れなくてもいいんですがここも省略。


「これで生地は出来上がりました」


 さて、時間がかかりにくいスフレパンケーキの焼き方もあるけど、僕がさっき作ったのはもっと分厚いの。

 これには、あるものを使います。


「俺が使うか使わないかってこの型よく見つけたなぁ?」


 厚さ、5cm以上もある円柱の型。

 これを使って、なんとか焼き上げたんです。

 ただ使うだけでなく、


「バターを引いたフライパンに型を置いて、型に生地を入れたら……型の周囲に大さじ一杯くらいの水を入れて蓋をします」

「蒸し焼きか!」


 どれが正解って言うのもないけれど、僕が好きな厚焼きパンケーキの焼き方は主に蒸し焼き。

 型の中で生地が多少萎んでも、ふわっふわに焼き上がるので時間がある時はこうしてます。

 シェイルさんにも是非食べて欲しいのでこの焼き方にします。

 普通のスフレパンケーキなら、ホットプレートやフライパンに好きな大きさで片面2、3分で出来ちゃうけども。

 厚焼きだと結構かかっちゃうのは仕方ない。

 とにかく、火加減を気をつけて焼いていく。

 イシャールさんの方は普通のスフレパンケーキを教えたから、その焼き方でぽんぽん作っていかれた。

 大きさは一人用でもホットケーキくらい。

 まかないで小さい方じゃ、おかわり続出が予想されるからだって。


「よし、こっちは上手く出来た」


 蓋を開けてひっくり返せば綺麗なきつね色に焼きあがっていた。

 あとは底を焼き上げて、お皿に乗せたら竹串で型を抜いて飾り付け。


「じゃあ、僕は行きますね」

「おう」

「うぅー」


 カイツさんはとにかくメレンゲ増産。

 イシャールさんはパンケーキ増産をされながら、僕を見送ってくれた。

 僕はお借りした台車にパンケーキセットを乗せてから扉を開けました。


「あら、いい匂い」

「……ふぉ、なんなんこのええ匂い!」


 さすがに、焼き立てパンケーキの匂いには沈みまくってたシェイルさんもばって顔を上げられた。

 あ、よく見たらクマ出来ちゃってる。


「これ、お詫びのケーキです」

「お、お詫び?」

「今回は僕の不注意もありましたし、本人は今向こうでイシャールさんにいっぱい働かされてますから」

「……あいつ、か」


 一瞬、殺気立ったような表情になられたがすぐにシェイルさんは大きなため息を吐いた。


「護衛対象の本人に労ってもらうなんてなー……」

「まあ、いいじゃない。本人がこう言ってるんだし、相手もイシャール料理長がこき使ってるなら普通の拷問するよりよっぽどいいわ」

「せやな。それならお任せした方がええか。って、このケーキむっちゃ分厚いけどふるふるしとる⁉︎」


 お二人の前にケーキセットを置けば、彼女が言うようにほんの少しケーキがプリンのように震えた。

 プリンには負けるけど、まあメレンゲ使ってさらに蒸し焼きにしたもの。


「薄焼きケーキをふわふわにしたものです」

「これが⁉︎」

「何が違うのかしら?」

「今カイツさんも作りまくってるんですが、メレンゲですね。イシャールさんはそれでもうちょっと薄いケーキ焼いてます。皆さんのおやつはそれになるようです」

「あら、私もこれいただいていいの?」

「イシャールさんにはさっき食べてもらいましたし、僕ももう食べちゃいました」

「「なら、遠慮なく‼︎」」


 お二人はフォークとナイフを持って、ふわっふわのスフレパンケーキに投入されました。


また明日〜〜ノシノシ

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