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【完結】ピッツァに嘘はない! 改訂版  作者: 櫛田こころ
第六章 実り多き秋の騒動
207/616

207.はじめてのメレンゲ作り

 






 ◆◇◆







 試食をしていただき、こちらの出した条件もちょっと色々あったけど無事に承諾してもらえました。

 だから、ですが。


「実際に作ってみましょう!」

「……俺包丁使い、普通くらいだけど」

「普通で大丈夫ですし、このお菓子は泡立てるのが主なんで包丁技術はむしろ要りません」

「マジ?」

「マジです」


 カイツさんには変換(アイゼン)でお仕事着じゃないラフな恰好になってもらい、今日もお借りさせていただいたイシャールさん専用の厨房に再び戻ってきた。

 ここで作り方を教えるのは、カイツさんに頷いてもらってからと決めていた。

 なので、まずは説明も兼ねて材料集め。

 イシャールさんはジェイルさんと休憩室の方で待っててもらってます。

 二人がいるとカイツさんに余計な緊張感を持たせちゃうだろうから。今日説明した時にイシャールさんには少し反対されたが……。


『……まあ、家で手伝うのとまた違う環境だしな』


 本当に、本当に渋々って感じで許可をもらえました。

 ただし、何かあればすぐ呼ぶようにとの約束をした上で。

 カイツさんも充分反省してるから大丈夫だし、外にはジェイルさんもいるから一定の緊張感は持てるだろう。

 いないから、煽るような事もない……はず?


「……材料は、俺が最初に食べた時に集めたのとほとんど同じだ」

「今回はフィンガービスケットにも挑戦しましょう!」

「グレイルのやつもか?」

「実は、卵ケーキよりあっちのがほんとなんです」

「……ティラミスって、なんでもありなんだな」


 探そうと思っても、この世界じゃおそらくないお菓子だからアレンジを知ってるのは僕とヴァスシードに帰ったファルミアさんだけだ。

 蒼の世界じゃ、今でもアレンジは無限に作られてるだろうが今は考えないでおこう。

 僕が今まで教わった、知ったティラミスを出来る限りこの人に伝えるんだ。


「あ、先にお聞きしたいことがありました」

「何?」

「カイツさんは魔法省の人ですけど、お父さんやお家の人達ってどれくらい魔法が使えるんですか?」

「君が使うのだとどんなだ?」

「さっきもお話したパルフェの水切り以外なら、冷却ですかね。保存は僕もまだ使えないんで」

「そうだな。それなら、冷却は親父達も使える。水切りについては今回は俺もやってみるが、帰ったらどうするかは相談するよ」

「了解しました」


 なら、お渡ししたレシピの手順通りに作っていこう。

 ビスケットの方が先だけど、まずはヨーグルトの水切りから。

 僕が見本を見せたら、何故か必要以上に驚かれた。


「い、いきなり無詠唱で⁉︎」

「え、普通じゃないんですか?」

「違うって! それ、誰から教わったんだ?」

「えっと……フィルザス神様から、ですが」

「……そりゃ、あの方からならそうだな。無詠唱は、慣れるまで付与が必要なもんなんだ。神霊(オルファ)様やあの方達なら付与なしで出来て当然だけど、初心者にいきなりやれと言われても出来んのが一般的だ」


 どうしよう。

 フィーさんの魔法講義が今までの普通だったし、詠唱使うとこは使うけど大抵は無詠唱で感覚的に使ってた。

 魔法を普段からたくさん使う人に見てもらえて良かったかも。


(だけど、なんで調理場の皆さんは特に注意してくることがなかったのかな?)


 理由をあえて聞かなかったのかもしれないが、あとでイシャールさんにでも聞いてみるか。

 時間も限られてるので、今度はカイツさんの番。


「これに付与をつけるなら……内なる水よ、流れよ落ちろ底の底」


 ヨーグルトから徐々に水分が溢れ出し、薄黄色の水がカイツさんの手の中へ集まっていく。

 これは、あとで使用法をお伝えするのでとりあえず別のボウルに入れてもらいました。


「この状態のパルフェを、ヴァスシードだとカッツクリームと言うそうです」

「たしかに、この見た目じゃパルフェじゃないな」

「これを泡立て器で滑らかにしたら、一旦置いておきます」


 この次が、ティラミスクリームでもビスケット作りでも大変なメレンゲ作りの工程だ。

 今回僕も並行してメレンゲは作るが、実際に作るのは違うお菓子。

 とにかく、カイツさんには死ぬ気で泡立て器を振るってもらいました。


「こ、これ、マジで必要?」

「美味しいお菓子作りには必要ですよー」


 子供の体の僕にだってちゃんと出来てるのだから、大人の体なカイツさんにだって出来なきゃ。

 多分、お父さんに一番こき使われそうなのってこの工程だろうから。

 僕のいたレストランではほとんど手作業だったが、規模が違うとブレンダーや電動ミキサーなんかで手間を省くところもある。

 でも、この世界じゃ魔法が需要してる以上に機械が希薄。

 水道やシャワーは機械に思えても、実は魔法の技術で動いてるからファルミアさん曰く、違うんだって。

 とにかく、合間合間見ながらアドバイスもしつつ頑張ってもらえば、カイツさん流石に疲れたのでひと休みすることに。

 序盤の序盤でこれだけど、ビスケットとティラミスクリーム用いっぺんに作ってるから、これが終われば大丈夫だ。


「なんかうめき声聞こえたが大丈夫か?」


 流石に聞こえてたようで、イシャールさんが覗いてきた。

 シンクの前ででろでろ状態のカイツさんをちょっと見ると、顰めっ面になるかと思いきや苦笑いされた。


「メレンゲ作りか?」

「あ、はい。ビスケットとクリーム両方のを作ってもらってました」

「出来は?」

「初心者さんですが、1回目でもいい方だと」

「お前が言うならいいだろ。ま、頑張れや」


 と言って、扉を閉められた。


「だ、そうです。頑張りましょう!」

「……なんでカティアちゃん、そんな元気なんだよぉ」

「慣れです」

「……慣れ、か」


 それしか言えないので、先にビスケットを作って焼いている間にティラミスクリームを作ります。


「だいたいは、ビスケットの時と同じですが粉の代わりにさっき滑らかにさせたカッツクリームを入れます」

「こんな感じか?」

「はい、大丈夫です」


 やっぱり、料理屋さんが実家だから時々手伝ってるようで手際は悪くない。

 普通に一人暮らしで料理しない男の人より全然出来ると思う。まったく出来なくない人で本当に良かった。


「このクリームは、出来上がったら氷室に入れるか冷温の結界の中でしっかり冷やしてください」

「……カティアちゃん結界も張れるの?」

「僕のだと、通り抜け出来ちゃうんでちゃんとした結界とは言えないんですが」


 そう言うと少し考えられたが、すぐに切り替えて僕がやるよりも早く半円の結界を張ってボウルを囲んだ。

 さすが、若手でも魔法省にお勤めされてる人です。


「じゃ、次にコフィー沸かしましょう」

「コフィーを?」

「はい。卵ケーキだと砂糖を入れたりするんですが、今回はビスケット焼いてるので甘味は入れません」


 コフィーの淹れ方は、フレンチプレスと同じ要領。

 これは、お茶汲みをする事も多いカイツさんが丁寧に淹れてくれました。


「これを、急いでる時は冷却させますが……そうすると味落ちが欠点なので、自然に冷ますか氷水を入れたボウルを使って間接的に冷ます方がいいと思います」

「そんな違うのか?」

「また試してください。今日は氷水の方でしますね」


 その頃にはビスケットも焼けてるだろうから、これでいい。

 他にはどうしようか、並行して作ってるのも少し考えたら、いいことを思いついた。


「ちょっとだけ包丁使いましょうか?」

「え、俺も?」

「少しティラミスにひと手間加えるんです」

「……更に美味くなんの?」

「なりますねぇ」


 なんで、忘れてたんだろう。

 抹茶ティラミスよりも、日本人ならアレンジで使う定番だったのに。

また明日〜〜ノシノシ

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