202.子供?だけの集い(途中別視点有り)
◆◇◆
場所は移って、僕がお借りしてるゲストルーム。
椅子は人数分ないし、作ることは僕以外の皆もまだまだ出来ないらしいから、必然的にベッドに座ることに。
僕は女の子達に左右を囲まれ、唯一の男の子のサシェ君は靴を脱いでベッドの奥に座ってもらう。
人のベッドだから、一応靴は脱ぐように言われてるらしい。
「なぁなぁ、カティアってここ来るまでどこにいたんだ?」
いきなり直球発言来た⁉︎
予想外ではなかったけど、順番がいきなりだったから、当然驚いてしまう。
(え、えーっと……)
ここはもうフィーさんを頼るしかないか。
焦りつつも考えていたら、頭の中から苦笑いする声が聞こえてきた。
【やっぱりそこかぁ。カティア、神王国じゃないとは言っておいて? あと、場所は『カーシェイ』って】
早速アドバイスが来てくれたお陰で、難を逃れられそうだ。
「カティアちゃん?」
「お姉ちゃん?」
「あ、悪りぃ。言いにくかったか?」
「え、えーっと……その、この国じゃなくてカーシェイってとこだったから」
「「え」」
「どこ?」
アイシャちゃん以外はどうやらわかるところだったようだけれど、なんだか不穏な場所みたい。
「「あ、あんな寒いとこから……?」」
【カーシェイは過疎化が激しい極寒の地だからね? かなり遠方だけど、そこだけは目の前の二人が知ってるくらい有名だから】
なるほど、わかりやすく言えばロシアとかかな?
日本人だと東北や北海道だろうけど、あの国には負けるだろうし。
「う、うん。だから、こっちが雪のないところだから驚いたよ」
【あそこは雪がない季節は春季くらいだよ。夏季は二週間もないから】
それ本当に人が住めるのと思うけど、合わせなきゃ。
「じゃあ、クラウちゃんは?」
「く、クラウはこっちに来てから見つけたんだよ」
経緯は言えないけど、フィーさんも返事がなかったからそこは大丈夫だったみたい。
「ふゅ?」
クラウはお眠だったのが呼ばれたから起きたみたいで、お目々をぱっちりと開けた。
首を動かすとサシェ君は見えないが、女の子二人に顔を覗き込まれてちょっと首を傾げた。
「やっぱり可愛い!」
「ふゅ?」
「う、うん……可愛い」
「カティアちゃん、抱っこしてもいーい?」
「お前話すよりそっちが本音じゃね?」
「兄様だって触りたいでしょ?」
「そりゃな!」
まあ、断るわけにもいかないからエスティオちゃんに抱っこの注意だけしてから渡した。
「ふゅ?」
「ほんと、ふわふわやわらかーい!」
「なんかふにふにしてんなー?」
「ふゅふゅぅ!」
抱っこされるのはやっぱり嬉しいのか、クラウはすぐにきゃっきゃ言い出した。
サシェ君も後ろからクラウのほっぺをつんつんしてても、本人には嬉しいのか気にしてないみたい。
しかし、この双子ちゃんは髪色と目の色が同じ以外は、やっぱり二卵性だから顔はあんまり似てない。
二人ともお父さんに似たのか紫かかった黒髪と少し褐色の肌に、紫が混じった紺色の瞳って不思議な色合いだ。
アイシャちゃんは肌の色は似てても、それ以外はお母さんと色が似てるし。
「まだ見つけたばかりじゃ、大きくはなんねぇよなー?」
「そ、そうだね?」
「俺やエスティのは、もう俺達を乗せられるくらいでかいんだ。だから、今回は連れて来てねぇんだよ」
「まだ騎獣の訓練始めたばかりだもの」
「わ、私、は、まだ守護獣がいない、から……」
「アイシャは一応来年くらいだしな」
基準年齢のようなものはちゃんと設けられてるらしい。
僕のような外見年齢で守護獣がいるのは普通ようだから、ちょっと安心出来た。
不思議がられて追求されたら誤魔化すのが大変だからだ。
「けど、あんな寒いとこであんな美味しいもの作れるって意外」
【そこは、教えてくれた人がいるからってことでいいよ】
フィーさんは本当にモニタリングしてるようで、すかさず助言を挟んで?くれた。
「お、教えてくれた人達がいたからかな?」
「世話してくれた人ってことか?」
「そ、そうだね」
向こうの世界では師匠達にはお世話になったから、そう言うのは間違いじゃない。
「そこからどうして神王国に来れたの?」
【僕が見つけたってことにしといて】
「えと、フィーさん……フィルザス神様が」
「あ、だからカティアって創世神様とあんなに仲良いんだ?」
「あんな?」
「収穫祭で、俺達のじい様に挨拶してた時」
おじいちゃんと言うからレストラーゼさんかと一瞬思ったけど、この子達はミラさんの子供達だからそれはデュアリスさんだと思い直した。
長命や外見に惑わされてたから、中年にも達してない人達がおじいちゃんと呼ばれるのには驚いた。
レストラーゼさんの場合はひいおじいちゃんか。
(な、なんか複雑)
例えるなら、40代後半に見える男の人の子供夫婦にお子さんが出来た感じだろう。
しかも、結構大きいからどれだけ早く結婚したんだとか思えるけど、適齢期とかがこっちじゃ違うから無理もない。
「それとさー?」
「な、何?」
「なんでゼル兄様と普通にしゃべれてんだ?」
「あ、それ私も気になってた!」
第二の直球発言が来た⁉︎
(こここ、これは、どうすればいいんだ⁈)
フィーさんも考えてるのか、すぐに返事が来ない。
彼らの両親にも言ってない御名手って事実を言うわけにはいかないし、どうすればいいだろうか。
ここはもう、誤魔化すにしても僕なりの言葉で言うしかないだろう。
「え、えと……後見人さんになってもらってから話すようになって」
「けど、近い親戚の俺達でもほとんど話してくれないんだぜ? 一応は挨拶くらいするけど」
「でも兄様。カティアちゃんは毎日会ってるから違うんじゃない?」
「こ、怖く、ないの?」
アイシャちゃんが最後にそう聞いてくると、僕は思うより早く首を横に振った。
「怒る顔はやっぱり怖いけど、怖くない人だよ?」
「「え」」
「そ、そうなの?」
「褒めてくれるところはちゃんと言ってくれるし、怖くないよ」
いつも、そう。
最初は御名手だからって理由かと思った時もあったけど、セヴィルさんは誠心誠意になって向き合ってくれている。
そのおかげか、意識するようにはなっても側にいて緊張する回数が減ってきたのだ。
進歩は、僕がこの調子だから一向にないので申し訳ないが。
「……お姉ちゃん、ゼル兄様が好きなんだ?」
「え?」
「「え⁉︎」」
いきなりの発言に、僕や双子ちゃん達も声を上げてしまった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆(フィルザス視点)
「あはは! まーさかそれだけで見抜くなんて、幼子の方がやるねぇ!」
僕は自分が借りてる部屋で、手のひらより大きめの玉を宙に浮かせながらカティア達の部屋の様子を覗き込んでいた。
玉の向こうでは、間抜けた顔の双子達とカティアが首を傾げてるアイシャを見てるとこだった。
「だーいすきねぇ?」
間違ってはないけど、アイシャが言ったのは身内を好きな家族愛と同じようなものだろう。
それでも、セヴィルはあの見た目だからって態度で子供から苦手とされることが多い。
縁戚でミラの子供達な彼らでもそれは同じだったから。
「まあ、そこくらいにはいってるだろうけど」
カティアがセヴィルを本当に好きかどうかまで、あと一歩か数歩必要かわかりにくい。
逢引以降意識はしてるのはわかるけど、想いとしては淡いかどうだか。
だいぶ前に、ミーアが来た初日にセヴィルの初恋を聞かされた時は異常な反応を見せてくれたがあれっきりだ。
「記憶読んでも見つかるかわかんないけど、蒼の世界にいた頃が関係してるだろうね?」
寿命は短くても、経験は豊富だ。
こっちの100年でも、向こうじゃ数年程度の感覚らしいし。
カティアが過去にセヴィルに大好きと宣言してても、あれはクロノ兄様によって封じられてしまってる。
だから、最低その後でも異界渡りする前くらいか。
「遠慮することがあるのも、そこが関係してるだろうし?」
セリカ程じゃないけど、何かを線引きする癖はあるからあの子。
玉を見れば、カティアは盛大に慌てて双子達に落ち着くようになだめられていた。
これは助言しように念話飛ばしても煽るだけだろう。
「ちょっと待つとして……前のカティアかぁ」
カナタだった頃のカティア。
クロノ兄様が創り変えた今のカティア。
僕だけが知ってるこの秘密を、いつ伝える日が来るのか。
最低、あれ以降連絡がない二人の兄様に聞かなきゃわからないけど。
「あ、封印が強化されたことは伝えなきゃね」
出来る人は限られてるけど、本人に聞く前にレイ兄様に知らせないと。
玉を見ながら、僕は少しその日程を考えることにした。
また明日〜〜ノシノシ