197.誤魔化しと不満
ただ、戻ったら戻ったで大変なことが起きました。
「か──てぃ──あ──、ごめんよ──っ‼︎」
「ぐぇ⁉︎」
「ふゅぅ⁉︎」
会場に戻ったら、突進してきたフィーさんにそのまま抱きつかれました。
倒れそうになるのも籠の死守も、セヴィルさんが請け負ってくれたのでなんとかなりました。
「あんな、あんな古典的な魔法で君を連れてかれると思わなくって‼︎」
「ふぃ、フィーさん! 声が大き過ぎます⁉︎」
「大きくもなるさ⁉︎ 一大事かとこっちは心配だったんだよ?」
「え、ってことは……」
「ガキはともかく、大半の連中にはカティアの行方不明が知れ渡ってるはずだ」
「そりゃそうさ」
イシャールさんのため息にフィーさんは強く頷いた。
「何箇所か簡易の方陣があるから何事かと思ったよ。どーも、カティアじゃなきゃ反応しないようにしてたから、相手は若い子でも結構やり手だったね」
まだ僕から離れてくれないので、サイノスさんが無理に剥がしてくれたからちょっと息をつけた。
「その輩は、ジェイルが見つけて処分は後になってる。お前さんは口出しするなよ?」
「なんでさ⁉︎」
「カティアが気にすっからだ。一応打開策とか考えてるらしいから、今回は穏便にさせてくれ」
「カティアが? 連れてかれたのに?」
「きっかけが僕でも、色々あったので」
詳しい事情説明をしようとしたら、奥からダッシュしてくる音が聞こえてきた。
「カティア、無事か⁉︎」
「ご無事ですの、カティアさん⁉︎」
エディオスさんとアナさんがダッシュして来たので中断せざるを得なかったからです。
「ご、ご心配おかけしました」
「あったりまえだ⁉︎ 一体なにがあった!」
「きっかけは、カティアっつーか俺がフィーに頼み込んだティラミスのせいだ」
「は?」
「あのお菓子がですの?」
ほぼ全員が揃ったので事情説明をすることに。
セリカさんは今グラウディアさんと話してるからいないみたい。
けど、彼女の記憶を掘り下げる要因になる事態だったから今聞かないでおいた方がいいかも。
「……シュレインにある例のバルか」
エディオスさんは僕と見に行ったから、あの時の繁盛の具合は知っている。
「模倣はよろしいですが、完璧なモノを仕上げるのに誘拐してまでカティアさんを連れ出すだなんて!」
アナさんはまだおこのようです。
「統括補佐として、一度副将軍と話させてくださいエディお兄様! その処罰だけでは甘過ぎますわ!」
「俺だってなんかしてぇが、今回はやめとけ。ハインツに報せたんなら、お前以上に激怒してなんかしてるだろ?」
「そ、それは……」
お話にちょっと出てくるハインツさんと言う人は、どうやら結構怖い人みたい。
「それに、事を荒げたくねぇってカティアの希望なら今回は神王じゃなく、一個人として内密にしとこう。ゼルとはぐれたのは、簡易方陣を踏んだ事でどっかに飛ばされたにしとけ」
「ほぼ、その通りですが……」
「まあ、他のは僕が消しといたから探査しても無理だけどー」
大事にならない?ように既に手は打ってくれてたみたい。
とりあえず、順位は僕とセヴィルさんは最下位決定で、皆さんは探してくれてたようだ。
全員で戻ると、飛び出してきたグラウディアさんにフィーさんと同じように抱きつかれてしまった。
「ふぁ⁉︎」
「んもぅ、どこに行ったか心配したのよカティアちゃん!」
「ぐ、グラウ、ディアさん……く、くるし!」
豊満なお胸に顔を埋めるって事態にも驚いたが、抱きしめる力が強過ぎてすっごく苦しい!
「これ、見つかったのならいいだろう? 離してあげなさい」
「あら」
ギルハーツさんのお陰で窒息は免れた。
だけど、完全には離してくれずに何故かお子ちゃま抱っこさせられました。
「ふぇ⁉︎」
「うちの子が見失って、ほんとごめんなさいね? 怖い思いはしてなくて?」
「だ、だいじょ、ぶです」
それよりも、この羞恥プレイをどうにかしてほしい!
「……母上。カティアが恥ずかしがっているのですから降ろしてください」
「まあ、ダメよ? せっかく抱っこ出来たんですもの」
「カティアは人形ではありません」
ここでセヴィルさんが取り返して?くれたので、地面に降ろされてからようやく落ち着けれた。
「まあまあ、無事で何よりだ。エディオス達には後で聞くとしてそろそろお腹も空いただろう? 皆で昼餉にしようではないか?」
デュアリスさん達もやってきて、嬉しい知らせを教えてくれました。
◆◇◆
用意してくださったお昼ご飯は、収穫した果物を使った甘いモノ以外にも塩っぱいモノまで種類豊富でした。
全部は食べれないから、ひと口ずつクラウと食べることに。
中には、マリウスさん達にお伝えしたクリームチーズを使ったフルーツサンドもあって、子供達には大人気だった。
あの大人しい感じのアイシャちゃんも、お母さんのミラージュレインさんと美味しそうに食べていた。
「……美味しい」
「そうね。ちょっと酸味もあるけれど、食べやすいわ」
「ミラ姉、それ考えたのカティアだぜ?」
「あら」
「え、エディオスさん!」
大したことしてないのに、そんな大声で言わないで⁉︎
他の人達からも注目集めちゃったから!
「式典の時に聞いてはいたけど、本当にカティアちゃんが?」
「え、あ、は、はい……」
誤魔化すことは出来ないので、正直に頷いた。
アイシャちゃんより濃いめのサーモンピンクのまとめ髪に水色の瞳にがじーっと僕を見つめてきたが、ふいにお皿を卓に置いて僕の肩を掴んできた。
「今晩の夕餉、うちの人達も一緒にお邪魔していいかしら?」
「ぴ!」
「おい、ミラ姉。前言ったのは今日無理だぞ?」
「あら、時間がかかるものなの?」
「仕込みがねー? 僕も手伝っていいけど」
「あら……」
「だが、明日もいるんだろ? ならちょうどいいから、昼餉来いよ」
「お前らだけずりぃぞ!」
「イシャールは仕事だから無理だろ?」
「くっそー!」
どうやら、ピッツァを新しい人達にお披露目決定のようです。
「おや、子供達でずるいね? この父達もダメか?」
「親父達はまたな? ミラ姉達は年に数回も来れるかわかんねぇだろ?」
「手厳しいね?」
先代さん達にも、いずれ作ることが決定しちゃいました。
まあ、最低レストラーゼさんは考えていたけど。
「儂もまだなのにミラめ……っ!」
既に拗ねていたので、ここはスルーしましょう。
「……あ、の」
「う?」
服を引っ張られたので誰かな?と振り返れば、アイシャちゃんがもじもじしながらスカートを少し引っ張っていた。
「どうしたの?」
「お、お姉ちゃんのご飯って、なーに?」
「え、えーと……わかりやすく言うとパンみたいなのかなぁ?」
「パン!」
よっぽど好きなのかほっぺがピンク色になって、薄青の瞳をキラキラと輝かせた。
「ふふ、この子はパンに目がないのよ」
「う、うん……」
「えと、苦手な食べ物ってありますか?」
「私や他の子とかは特にないけど、アイシャはアナと同じでシュラムだけがダメなの」
「しゅ、シュラム……!」
「い、入れないからね!」
アナさんと同じキノコ嫌いはどうしようもない。
シュラムはキノコ全般を指していて、主に食卓に並ぶのはエリンギやマッシュルームのようなものだ。
僕は普通に食べれるが、アナさんの場合は別の料理が出てきてる。
克服しようにも食感と強い香りが苦手と、キノコ嫌いの典型的な理由だ。
アイシャちゃんも同じようで、それなら無理に入れることはない。
「じゃあ、とびっきりのピッツァパーティーしましょう!」
「儂は手伝ってはダメかね⁉︎」
「レストは今回ダーメ!」
まだ駄々をこねたレストラーゼさんは、この間のようにフィーさんからハリセンの制裁を受けてしまった。
では、また明日〜〜ノシノシ