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【完結】ピッツァに嘘はない! 改訂版  作者: 櫛田こころ
第六章 実り多き秋の騒動
195/616

195.説明と打開策

 僕は全然知らない人だったから、カイツさんが焦る理由がわからない。

 と言うことは、絶対カイツさんよりも上の位の人に違いない!

 苦手とかじゃこんな風に冷や汗だーだーな状態じゃないもの。


「ぐずぐずしてる輩は嫌いだな。開けさせてもらう」


 と言いながら、もう既に開けてるんですが⁉︎

 せっかちさんなのか、扉の向こうにいた人はガンって音を立てて扉を開けてきた。

 カイツさん、僕を誘拐?してきたのになんで鍵閉めておかなかったんだろう。こっちはうっかりさんだと少し現実逃避。


「……そちらの子供は……?」


 入ってきたのは、サイノスさんより少し歳下に見えるクールビューティが印象的な薄緑の髪のお兄さんでした。

 そのお兄さんは、この世界に来て初めて見る細い銀縁の眼鏡をかけていた。

 それがあるせいか、ただでさえ苛立ってる様子なのが余計に怖く見えてしまう。

 僕の右側でがたがたしているカイツさんのことは一瞥されたけど、僕のことを確認すると一瞬だけホワイトオパールのような不思議な色合いの瞳を丸くされた。


「え、えと……こんにちは」


 何も答えないわけにはいかないので、とりあえず挨拶したらお兄さんは僕の前で腰を下ろして屈んでくれた。何故か、跪いたような姿勢で。


「君は……いや、貴女は宰相閣下とよくご一緒だと伺っている方では? 何故そこの者とこのような場所に? 本日は皆様で収穫祭に行かれてるのではないのですか?」

「え、えーっと……」


 どうやら、このお兄さんは上の位の人で正解みたい。

 嘘情報やセヴィルさんのことも知ってるみたいだもの。

 だからって、途中でカイツさんに誘拐されました!って言いにくい。

 お兄さん、絶対容赦ない罰則以上のことをカイツさんにしそうだから!


「も、申し訳ありません、副将軍閣下‼︎」

「ぴ?」

「……状況からなんとなく察したが、やはり其の方が連れ出したのか?」


 カイツさんが謝罪し出したのでもう言い逃れは出来ないが、お兄さんはやっぱり状況はわかってたみたい。

 それと、副将軍さんってことはサイノスさんの部下さんってことかな?


「えっと、お兄さんはサイノスさんの?」

「ああ、失礼。私はジェイル=クローブ=ベルナーレと申します。将軍閣下の部下です」

「か、カティアと言います」


 けど、副将軍さんがなんでここに来ることになったんだろう?

 少し前に説明を受けたけど、ここって倉庫の一室らしいから。


「カティア嬢、その者の処罰は後ですることになりますが……僭越ながら私が会場へお連れ致します。宰相閣下が、かなり慌てたご様子で貴女の守護獣と共にお探しになられてるようですから」

「あ」


 目の前でいなくなっちゃったから、そうなっててもおかしくない。


「え……っと、ジェイルさん」

「なんでしょう?」

「こんな状況になっておかしいとは思われて当然ですが、こちらのカイツさんにはあんまりキツイ処罰しないでほしいんです」

「……何か言い含められたのですか?」

「そ、そそそ、そうじゃないんですが!」


 そんな凄まれたらカイツさん以上に冷や汗まみれになっちゃうが、ここはきちんと言わなくては。


「えと、ジェイルさんは中層の食堂に行かれてるんですよね?」

「え、ええ、そうですが」

「そこで、今も出てるティラミスってお菓子食べましたか?」

「もちろん」


 即答ってことは、見た目と違って甘いものが大好きみたい。


「カイツさんも式典前くらいに食べたらしくって……お家の方で出来る範囲で試作して売り出したらしいんです」

「……少し聞きかじりましたが、この者の実家でしたか」

「ただ、式典で食べて来た市井の人達にはがっかりされたようで、今じゃ閑古鳥が鳴いちゃってるそうです」

「ですと、貴女を連れ出した理由は……完璧な作り方を聞き出して再び盛り返そうと目論んだ」

「概ねそうですが、さっきお断りしました」

「懸命なご判断です。私は商売の事に関してはあまり存じませんが、いくらこの城で出されてるものと同じのを提供しても復興出来る保証はありませんから」


 さすがは副将軍さん。

 僕が言わずとも、言いたいことは汲み取ってくださったようだ。


「なので、きっかけは僕ですから。悪いのも僕です」

「え⁉︎」

「……何故そのような事を。中層の料理長にも聞きましたが、感謝すべきなのはこちら側です。誰も迷惑をかけていません。そこのカイツとやらはやり過ぎですが」

「う゛」

「けど、式典中に何回か僕からレシピを聞き出そうとしてきた別の人達もいたようですから。今回はちょっと驚きましたが」

「その簡易方陣を使ってまでは用意周到過ぎますよ!」

「も、申し訳ありません!」

「お前は黙ってろ!」

「ひゃい!」


 進まないから、さっさと言おう。


「だから、じゃないですが。代替案をカイツさんには提案させてください。実は、ティラミスがきっかけでシュレインじゃ結構大変な目にあったお店が多いようですから、お詫びも兼ねて」

「……将軍にお聞きした通り、貴女はお優し過ぎます」

「僕は僕なんで。えと、ジェイルさんも敬語やめていいですよ? 僕最近まで家のこと知らなかったので慣れてないんです」

「そうは申されても、無断で出来ません」

「そ、そうですか……」


 じゃあ、敬語問題は後で解決するにして、カイツさんの方をなんとかしよう。


「カイツさん」

「あ、え、何?」

「今すぐに代替案は出せないのでちょっと待っててください」

「いや、その、い、いいのか……?」

「事情を知って無視出来るほど、僕は悪い子になれないですから」


 後味悪くてずっと引きずる方が嫌だって、自分勝手なことだけども。


「……カティア嬢がそうお決めになられたのでしたら、私も強くは言えません。ただ、なんらかの減給処分だけは覚悟しておけ。ハインツ殿には後程識札を飛ばす」

「はっ」


 そこは僕も介入出来ない。

 普通に話しかけられなかったから、カイツさんはこんな手段を取ったもの。

 なので、公にさせるわけにはいかないから、カイツさんには仕事場に戻ってもらい、僕はジェイルさんと収穫祭の会場に戻りつつセヴィルさんを探す事にした。


「えと、ジェイルさんはなんであの場所がわかったんですか?」


 ある程度歩いて行けば、あの倉庫があった場所はかなり奥まったとこだと言うのはわかった。

 セヴィルさんとクラウが僕を探してるのを見かけたにしたって、誘拐?されてから割とすぐに見つけられたのは不思議だったのだ。


「……あそこから西の塔に行けば魔法省になります。そこへの書類を渡しに行った時に、あのカイツが見当たらないと聞いたので……見つけ次第叱りつけてやろうと思っていました」

「その途中で、あの倉庫から話し声が聞こえたから?」

「ええ。隠れて打ち合わせするにしては、子供の声が聞こえたのが不自然だったので」


 たしかに、僕以外にこの外見の子供って、お城で働いていないそうだから。

 あといるのは、今日集まった人達の子供さんだし。

 ちょうど中庭辺りに着くと、会場受付がある裏庭にはまだ遠いからちらほら収穫祭を楽しんでる人達がいました。


「ここまででいいです。ありがとうございました」

「いえ、私は当然のことをしたまでです。……ただ、お早い内に宰相閣下の元へ行かれてください」

「え?」

「我々が知る閣下ではないご様子でしたから」

「あ」


 ジェイルさん含めて、大半の人は僕とセヴィルさんの関係を知らないから無理もない。


「おい、ジェイル!」

「って、なんでカティアと一緒なんだ?」


 もう一度挨拶して失礼しようとしたら、サイノスさんとイシャールさんがやってきた。


「今日は書類の配達じゃなかったか?」

「途中で少々、こちらのカティア嬢と会う機会があってな」

「にしたって、ゼルとクラウがいねぇじゃねぇか?」


 それは当然に思われちゃうので、苦笑いしてるとジェイルさんが小さく息を吐いた。


「魔法省にいる者の一人がカティア嬢に聞きたいことがあると連れ出してな。特に怪我も何もなかったので俺がお連れしていたところだ」

「は?」

「何?」


 誘拐?の手口がどうとかは告げずにジェイルさんが説明されれば、彼のマントに思わず隠れちゃうくらい目の前の二人の表情が阿修羅に変わった。


今日は何の日?で対面した時、ジェイルのカティアへの口調は敬語ではないのですが、いずれは外すつもりですノ


今はカティアが没落してても、王族の遠縁と言うのがインプットされているからでーすノ



ではでは、また明日〜〜ノシノシ

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