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【完結】ピッツァに嘘はない! 改訂版  作者: 櫛田こころ
第六章 実り多き秋の騒動
193/616

193.楽しみと突然(途中別視点有り)

 







 ◆◇◆







「ふゅゆ、ふゅゆ、ふっゆゆ!」

「美味しいねー?」


 休憩を挟んでから収穫を再開し、ちょっとなら食べていいのがわかれば、僕もクラウも遠慮なく食べながら収穫していった。

 ただ、果物を食べ過ぎると体を冷やしやすいのはこの世界でも同じだから適度に。

 とは言っても、


「秋イチゴは贅沢過ぎます‼︎」

「ふゅゆゆゆ!」


 野生の木苺とは別の、本当に苺が生ってたのを発見した時は嬉し驚きだったので、とにかく形問わずに収穫しては食べたりしていく。

 味は冬苺に負けず劣らず美味しく、食べたことがある品種なら章姫とかに近い。けど、甘さはあまおうにも負けないと思う!


「プチカはイチゴと言うのか?」

「国によっては、ストロベリーだったりフラーゴラとも言いますね」

「それでも意味は同じか?」

「この世界みたいに共通言語があるわけじゃないので」


 神話なんかで伝承されてることはあっても、それは今もはっきりしていないことが多い。

 僕も、イタリアレストランに勤める夢がなきゃ英語やイタリア語は覚えなかったけど。


(こっちじゃ、ほとんど日本語に近い翻訳がされるから不便がないし)


 なんで?って前にフィーさんに聞いたところ、聖樹水をたらふく飲んだことが原因らしい。

 リーさんに水を抜いてもらっても、効力までは消えないから今も不便はないのは有り難かった。

 今更通じないとなると大変だったもの。


(セヴィルさんや皆さんとお話出来なくなるのが嫌だから……)


 セヴィルさん限定には、まだ出来ない。

 きっと好きだとは思えるようになってきても、少し臆病な僕には断定するのがまだ早いからだ。


(きっと、あの事(・・・)があってからだろうなぁ……)


 言われたことはからかいついでだったかもしれないが、僕の心には今も残っている。

 ツッコミ親友や先輩達には気にするなと言われてたけど、どうしたって忘れられない。


「カティア、手が止まっているがどうした?」

「っ、だ、大丈夫です!」

「? そうか?」

「ふゅ?」


 いけない。

 考え事に少しふけってたみたいだ。

 少し笑って誤魔化したが、セヴィルさんは何も言わずに髪を撫でてくれた。


「このプチカをコンフィチュールにしてパンに塗るのもいいですねー」

「ふゅ?」

「ジャムのようなものか?」

「似てますね? もっと保存しやすいように開発されたジャムみたいなのです」


 でも、こっちのジャムはペクチン使ってないから元々がコンフィチュールと変わらないけども。

 セリカさんのお得意クッキーは果肉を潰してるから、僕が知ってるジャムに近かった。今度作り方を教えてもらう予定でいるので楽しみ。


「あ、いっぱい!」


 プチカを摘み終えて入れていったら、クラウの分と合わせても満杯になってしまった。


「俺もちょうどいいな? 急ぐ必要はない、ゆっくり戻ろう」

「はい」

「ふゅ」


 そう言えば、今気づいたけどこれってお花畑デート以来のちゃんとしたデートなんじゃ?


(ひゃぁあああああ⁉︎)


 お祭りって事に気を取られて、シチュエーションをすっかり忘れていた。

 皆さんにセヴィルさんから絶対離れるなってしっかり言われてたので、頭にインプットされた事を守ってたせいだ。セヴィルさんもいつも通り過ぎたから余計に。

 だから、意識しちゃった今になって緊張してきた。


「カティア?」

「ふゅ?」

「あ、い、いえ、だ、だだだ大丈ぶ───」


 です、と言おうとて一歩踏み出したら、急に足元が赤く光り出した!


「え⁉︎」

「簡易転移方陣⁉︎ カティア‼︎」


 手を伸ばしてくれたセヴィルさんの手を取ろうにも、僕の手はもう透けていたから空振りに。


「セヴィルさん、クラウ!」


 叫んでも、瞬時に変わった視界はお城の敷地内じゃなかった。

 それと、


「急に連れ出して悪かった。でも、助けてくれ!」


 何故か、降りたらしい地面の前で元の僕くらいのお兄さんがいきなり土下座してました。


(───────……えーっと?)


 驚くとか泣くとか出来ずに、いきなりの展開に拍子抜けしてしまう。

 ちょっと冷静になれたのは、まだ土下座したままのお兄さんのお陰だけど。


「……どちら、様ですか?」


 とりあえず、このお兄さん一体誰だろう?








 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆(セヴィル視点)








「くそっ、何故気づかなかった⁉︎」


 常設の方陣とは違い、簡易は消費型だ。

 一度使用してしまえば、それっきり使い物にならない。

 刻まれた黒い陣の跡に拳を突き立てたところで何も出来ないのはわかってるが、頭でわかってても気持ちが追いつかない。

 この焦ってる間にカティアの身がどうなってるか。

 誰の手の者かは判別出来ぬが、浮かれてた俺に気づかせずこれを用意したと言うことは相当の手練れだ。


「誰だ……カティアを連れ出したのは」


 先先代の忠告が当たるとは思わなかった。

 エディオスらとカティアが聞かないところで徹底的に洗ってたから、もう大丈夫だと油断し過ぎていた。


「ふゅ、ふゅ!」

「……クラウ」


 そうだ。

 ここで怒りを無闇に撒き散らしてても意味がない。

 むしろ、クラウのためにも迅速に動かねば。


「簡易なら、そう遠くには行けぬはずだが」


 念のために調べても、魔力の痕跡と質はかき消されている。

 飛ばされたカティアのものしか感じ取れなかった。


「こうなると、急いでフィルザス神を探すしか……いや、待てよ?」


 守護獣のクラウがここにいるのならば、この間これを探す時に使った方法の逆を行えばあるいは。


「クラウ!」

「ふ、ふゅ?」

「お前ならカティアを探せる。彼女を見つけたいと強く思えば、行き先がわかるはずだ」

「ふゅ?」


 きちんと説明したつもりだったが、クラウにはよくわからないのか思いっきり首と言うより身体を右に傾けた。

 エディオスかフィルザス神なら何かしら反応があるだろうが、俺は今そうしてる暇はない。


「クラウ、ゆっくり言うからよく聞け」

「ふゅ」

「カティアがいなくなったのは見ただろう?」

「ふゅ!」


 幼子に言い聞かせる感じでならわかると言うことか。

 とりあえず、急ぐので続けることにした。


「お前はカティアの守護獣だ。自分で会いたいと思えば、彼女がいるはずの場所を見つけられる」

「……ふゅぅ?」

「難しいだろうが、やってみるしかない。カティアのことを考えてみろ」

「ふゅ」


 水色の洸石(イルマ)のように輝く瞳を閉じ、クラウなりに意識を集中させているようだ。

 俺は何も出来ずにじっと待っていたが、少し間を空けたくらいにクラウが大きく瞳を開いた。


「ふゅふゅぅ!」

「わかったか?」

「ふゅ、ふゅ!」

「導いてくれ! 後から追う!」

「ふゅぅ!」


 急いでも俺が追いつきやすい速度でクラウは飛んでいき、俺は籠を魔法袋(クード・ナップ)にしまい込んでから駆け出した。

また明日にわかります(`・ω・´)キリッ

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