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166.語らいの続き

 その感情が嬉しくて、つい照れ笑いしてしまったが……なんでセヴィルさんまで盛大に照れてるんでしょう?


「セヴィルさん?」

「…………くれ」

「はい?」

「…………そ、ういった顔は……俺の前だけにしてくれ」

「え」


 まさかここでそんな爆弾発言を投下されると思うだろうか? 思わないよね⁉︎

 どう返事を返していいのかわからず口がはくはくと上下運動を繰り返すばかり。キャパシティの方も暴発直前で頭の理解も追いつかない!

 だって、独占欲丸出しの発言なんて、最初のお散歩デート以来久しぶりだったから。


(ししし、しし心臓に悪いっ‼︎)


 顔も熱くなってきてぱたぱた手を仰いでも一向に冷める気配はない。当然っちゃ当然だけども。


「え、えええ、えーっと……」


 とにかく何か言わなきゃと口を動かしても吃るばかり。

 おろおろしながら考えても何も浮かばず、とりあえず手にしてたままのお茶を飲んで一息吐こうとした。結果は、ほんのちょっとだけ落ち着けたくらいだ。


「……すまない。俺の一方的な願望を言ってしまっただけだ」


 謝罪してくれたセヴィルさんは、これでもかとお顔が真っ赤っか。

 彼も彼で口にしてしまってから、恥ずかしさが頭もだけど体いっぱいになっちゃったんだろう。

 僕は気にしてないと言う意味合いを込めて首を横に振ったつもりが、彼には違う意味に捉えたのか苦笑いさせてしまった。


「……聞き分けが良すぎやしないか?」

「そ、そうでしょうか?」


 嫌なことはきちんと嫌だと言ってるつもりではあるけども。

 エディオスさんが式典期間中無理に抜け出された時とかはきちんと言ったつもりだ。

 実際は有無を言わせずに連れ出されてしまったんですが。


「もっと自分の意見を言ってもいいんだが。俺が見てる限り、料理以外では受け身でいる感じが強い気がしてな」

「巻き込まれると止めようがないですしね……」


 今回の提案も然り、その他諸々。

 流されてる感じもあるが、たしかにほとんど拒否することもなく受け入れていた。エディオスさんの脱走劇にも最終的には諦めてたし。


「たしかに、ファルミアの主張は止めようがない。会った当初はああではなかったが」

「そこはやっぱり、セヴィルさんが神王国の宰相さんだからですか?」

「多分な。今も変わりないが公式の場ではこの国以外の者は、基本的に意見を言う者が少ない。会議は別だが、公的な場ではあまりない」


 けれど、今はほぼプライベートタイムの時は言いたい放題言える良い友人関係だと思う。

 そこは、主にユティリウスさんのお陰だそうだ。


「あれとエディオスの出会いが出会いだったしな。その後にヴァスシード国王として来訪してきたユティリウスがファルミアを嬉々として紹介して……色々あったが、一年以内には今のように話す関係にはなれた」

「気になったんですけど、式典って他の国の人達もいっぱい来てたんですよね?」

「そうだが?」

「ファルミアさん達以外に交流がある人達っていないんですか?」


 ほぼずっと、ヴァスシードの皆さんとしか食事とかもご一緒にしていない。

 悪いことじゃなくても、国同士の交友関係ってきっと大事だろうから。


「……なくはないが、国交関係で根強いのがエディオスの場合だとヴァスシードが筆頭だからな。他国も邪険にしてるわけではないが、食堂にまで連れてくるのはあれら以外早々ない」

「まだ、50年だからですか?」

「そうだな。神王自らが他国に出向くこと自体少ないから、必然的に関わってくる者は限られてくる」


 50年って長い年月でも、この世界じゃたった数年程度の感覚でしかないようだ。

 ただ、シュレインに行った時にエディオスさんは15年も来てなかったって騒がれてたけど、あれは別なんだろうか。

 って、あれ?


「お互いのことじゃなくて、皆さんのことになってましたね……」

「あ、ああ……」


 僕が聞いたからだけども、聞きたいことだったからこの話は一旦置いておこう。


「えっと……セヴィルさんが辛いものを好きなのって、何がきっかけだったんですか?」


 これ、実は結構聞きたかった。

 いやだって、昨日の激辛エクレアだけども。

 普通の食事はもちろん食べてくれますが、特に辛いものが出てくると雰囲気がぐっと変わることが多い。

 だけども、ピリ辛よりは激辛派。

 昨日のように麗しの微笑みを僕に見せてくださるのも一回や二回じゃない。


「辛いものか? きっかけは……エディオスだったな」

「エディオスさん?」

「俺の食べる予定だった菓子にカラナかシノニンを大量に混ぜ込んだのをどこからか用意してきてな。それを俺に無理矢理食べさせたんだが、舌が受け付けてしまった。以来、大抵の辛さじゃ物足りなくなった訳だ」

「それで昨日の激辛エクレアは大丈夫だったんですか?」

「ああ、あれは好みの部類だったな」


 おそるべし。

 そして、あれでもまだ平気だってのが怖い。

 最初に食べさせられた辛さがどんなのだったかも怖いけど……。


「あ」

「どうした?」


 辛いもので思い出したことがあった。

 ピッツァの必需品の一つとも言われてるのに、なんで僕は忘れてたんだろう!


「ピッツァに必要なものを思い出したんです!」

「と言うと?」

「辛いんですけど、少し酸っぱい調味料だったり、リンネオイルにカラナを漬け込んだのをピッツァにちょびっとかけると、味を変えられるんです」

「……辛いものを?」

「人によっては、ずっと同じ味だと飽きがきてしまうんで」


 この世界の人達はそうでもないけれど、元いた世界では普通のレストランならタバスコ。イタリアレストランだとオリーブオイルに唐辛子を漬け込んだものを使用する。

 それを説明すれば、辛いもの大好きなセヴィルさんの瑠璃の瞳が輝きを増したように見えた。


「それは、ピッツァ以外でも使えるのか?」

「僕がいた国だとメインはピッツァになりますが、麺料理だったりソースとして使ったりと色々ですね」


 あとはパーティ要素としてだったり。

 噂に聞いた面白ソースって言われる激辛ソースは流石に作れないけれど。


「……興味があるな」


 そう言うと思ってましたよ。


「明日か明後日には仕込んでみますね」


 ヴァスシードの皆さんが帰還される日にちも近いから、最後にはピッツァを食べてもらいたいし。

 オリーブオイルのは下っ端だった僕でも仕込むのを頼まれてたし、タバスコは家で自分が食べる量を作ってたりもしたのだ。


「そうか。……あまり食べてないが、やはり体の大きさが関係してるのか?」

「そうですね」


 ちまちまとは食べてはいたものの、成人の体に比べればずっと少ない。

 サンドイッチ数個とお惣菜がちょっとだけで結構お腹がいっぱいになってしまうのだ。

 本音はもっと食べたいんですが、今の胃袋と相談すると絶対無理と返事が返ってきちゃうほど。違う意味で早く元の体に戻りたいと切実に思う。


「……しかし、残しておかねばクラウが怒りだしかねないな?」

「あり得そうです」


 まだ戻って来ないけれど、きっとお腹を空かせてるだろうから。

 お弁当は、セヴィルさんがある程度食べ終えてからひとまとめにして籐籠タイプのバスケットに詰め込みました。


「語らうのも、ずっとは疲れるだろう。少し休むか?」

「そうですね」


 ただなにかを忘れてるような?と思ってたら、頭の中に大音量で叫び声に近いものが聞こえてきた。


『まだ帰って来ないのか⁉︎ 待ちくたびれたぞ!』

「い⁉︎」

「こ……の、声は」


 セヴィルさんにも聞こえてたようで、僕のように頭を押さえていた。


『うふふ。あの方は待つのが苦手ですもの』

『そうね』

『そうだわ』


 とここで、リチェイラさん達が戻ってきた。

 クラウは何故か上機嫌でぷかぷか宙に浮いてた。


「ふーゅふゅぅ!」

「機嫌いいね、クラウ?」

『ご馳走した果実がいたくお気に召したそうなの。ただ、全部は阻止したけど』

「あ、ありがとうございます」


 この子の場合全部食べ尽くすとかあり得そう。

 とりあえず、リーさんを待たせ過ぎちゃいけないからと片付けをしてから洞窟の中に戻ることにした。

また明日〜〜ノシノシ

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