162.神霊からの言葉(途中別視点有り)
デート?側に戻りますノシ
◆◇◆
「俺はリージェカイン。長いから気軽にリーと呼んでくれていいぞ?」
「え、っと……じゃあ、リーさんで」
「敬語もいいのにな?」
「無茶言わないでください!」
神霊さんことリーさんが自己紹介してくれたんですが、無茶振りしてきたんで速攻で拒否しました。
この人?の上の存在でもあるフィーさんにも敬語でいるのに出来ますか!
と言うか、敬語外してる相手ってクラウとディシャスくらいだ。
クラウはまだ産まれて間もないし、ディシャスはなんとなくだったから……考えが逸れちゃう、リーさんに話を聞かなくちゃ。
「あの、リーさん。なんで200年もここで寝てらっしゃったんですか? たしか、神力不足って言ってましたよね?」
「あ、うん。そのまんまだな。俺が神脈に行くのサボってたから神力が抜け落ちて休眠してたわけ」
「サボってたら、寝ちゃうんですか?」
「うっかりしてるとな。これ一回目じゃないし」
「その場合はどうしてたんだ?」
「一応は、離れてるとこに住んでる神霊とかが様子見しに来るけど。今回は200年程度じゃ誰も見に来なかったんだ」
「てことは、前はそれ以上?」
「長いと1000年はあったなぁ」
「学習能力身につけてくださいよ⁉︎」
ほとんど自業自得とは言っても、周囲に迷惑かけてるじゃないか!
「なーんか、俺って結構楽観的だからさ? 大丈夫、って思ってたらこうー」
「うっかり忘れてて、さっきみたいな状態になると?」
「そうそう、そんな感じで」
「「はぁー……」」
さすがに呆れて、セヴィルさんと一緒にため息出ちゃうよ。
「今回は運が良かった。偶々お前達が近くに来て聖精達がカティアを見つけて連れて来てくれたしな?」
「僕だと魔力が少ないのに、どうしてリーさんを起こせたんですか?」
「言っただろう? お前の魔力は微量でも質が良い。あとは、そっちの神獣殿と契約している性もあるな。加護を受けてるのならば、神力を受けてるのと同じだ」
「ふゅぅ?」
クラウは難しい言葉を並べられると、理解が追いつくのに時間がかかるのか理解してないのか。よく首を傾げちゃうことが多い。
「魔力は豊富さも貴重ではあるが、質もまた稀少価値が高い。それに神力を纏う程の加護とくれば、お前は非常に稀有だな。その容姿……色彩までもが稀有だ」
髪や目の色については、気がついたらこれだったから未だに実感がわかないけども、リーさんの真剣な口調から珍しいことは理解出来た。
元の世界でも虹の瞳ってのはなかったから当然ではあるが。
「その稀有な魔力は、ヒトの仔もだが聖獣達を引き寄せやすい。だから聖精達はすぐに寄って行って、そして気づいた。俺を起こすのに、必要不可欠な存在であると」
『ええ、そうね』
『この仔は稀有だもの』
『眠られてる神霊様のお声は届くでしょうし、繋ぎを伝って神力を分け与えてくれると』
「じ、実感はありませんが……」
「まあ、ヒトは自覚を持てるのが稀薄だから無理もないな。しっかし、この近くに来てたと言うことはあれか? 逢引か?」
「い、一応……」
はい、とかきっぱり言えないんでどうも遠慮がちな返事になってしまう。
今絶対顔がゆでだこ状態なはずだ。
「器……身体の大きさは不釣り合いだが、魂の調和は出来てるな? 事情が色々とありそうだから、俺は聞かないでおこう」
「はあ……どうも」
「けど、嫌がってないのならカティアは好いてるんだなセヴィルを」
「す⁉︎」
たった一言で心臓を突き刺された衝撃を得た。
遠回しに好意を持ってるかもしれないとは、エディオスさん達から時々指摘はされてきた。
だけど、リーさんのように直球的にはなかった。
きっと僕を気遣ってくださってのことだろうが、リーさんはさっき出会ったばかりか遠慮がない。
ばくばくばくばく、血管が沸き立つくらいに鼓動が速まって体中に熱が広がってく感覚に襲われる。
これはあれだ。
セヴィルさんの初恋だとファルミアさんに告げられた時に起こったような、体が追いつかない程の衝撃。
「ちょ、ちょっと失礼します!」
気絶はしないが、居た堪れない気持ちに駆られて、セヴィルさんの近くにいられない。
僕は制止の声をかけられる前にその場から逃げた。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆(セヴィル視点)
突然カティアが立ち上がったかと思えば、俺が待てと言う前に脱兎のごとく駆け出して外に向かっていった。
すぐ追いかけようとしたが、リージェカインに行くなと止められた。
「お前は女心に疎いな? 気配はそう遠くない。カティアの気持ちが落ち着くまで少し間を空けな」
「……だが、俺に用もあるようだな」
「そこの勘は鋭いのにか? まあいい。お前には告げておきたいことがある。聖精達、カティアを遠くから見ててやってくれ」
「「『はーい』」」
そう言うと、何故かおろおろしていたクラウまで連れて行き、この場には完全に俺とリージェカインだけになった。
「……話とは、なんだ」
「カティア自身に告げるのはまだ酷だと思ってな?」
「……どう言うことだ」
「そう怖い顔をするな。フィー様がどこまで真実を知っているかはわからないが、カティアの身体はあの方の手が加えられてるにしては色々とおかしい」
「おかしい?」
先程も何度か言っていたが、他に何かあるのか?
彼はふざけた態度をやめて、薄金の瞳を細めながら続きを語り出した。
「神力を分け与えてくれた時に伝わってきた記憶……無理矢理にフィー様以上のお力を持つ神々の介入がある。それはお前もわかってるだろうが、俺は少し記憶が読めた。それは、紅と黒が広がる地面だったな」
「紅と、黒?」
嫌な予感しか湧いてこない。
「詳しくは、俺もその色が出た後に起きたから続きは見れなかった。だが、その二色は危機のものだったな。さっきは繕って異界渡りと言ったが……違う結果かもしれないのは肝に命じててくれ。フィー様は、いずれ伝えられるだろう」
「フィルザス神が、隠してた?」
基本嘘をつくことがないと言うあの天真爛漫な神が。
いや、曖昧にしてたかもしれない。誤魔化したりすることは、神とは言ってもすることはあるから。
「カティアは魂がそこそこに成熟はしていても、耐えられるかは別だ。まずは、御名手であり番のお前だからこそ伝えた」
「……留めておこう。だが」
「ん?」
「カティアの身体があのままだから、まだ番ではない」
「へ?」
正直に伝えると、何故かリージェカインが目を丸くしてしまった。
「あれだけ気を許してるのにか……?」
「誰に対しても、ほぼあの通りだ。……意識は、してもらってるようだが」
先程のあの反応を振り返ってみれば、恋愛に疎い俺でもいくらかは察せられた。
今更だが、じんわりと胸の内が熱くなるくらい、俺は嬉しくなってきた。
「はー、今は違うようだな? 俺が前に起きてた頃は、御名手がわかれば即番の誓約を結ぶのが普通だったのに」
「それは最低500年も前の話だ」
こいつの基準に合わせてたら、エディオスとかもとっくに身を固められてたはずだ。
「ヒトの仔は慎重過ぎになったな? まあ、急ぐことはないか? あの身体がどうにかならん限りは、お前も手が出しにくいだろ?」
「……下世話なことはよしてもらいたい」
それは俺も予想がつかない。
本来の年齢がセリカくらいで、彼女と似た姿になるのなら……俺の理性が保つか怪しいのだ。色々と。
「さて、忠告とかはこれくらいにしておこう。あ、行くのはいいが、落ち着いたらカティアと一緒に戻ってきてくれ。さっきのことじゃないが、別で告げたいことがあるからな?」
「……承知した」
神霊の頼み事は無視出来ないからな。
俺はすぐさま立ち上がって、少し身体に風を纏わせてから駆け出した。
さあ、カティアとセヴィルはどうなるか?
また明日〜ノシノシ