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148.内緒事と御名手(途中別視点有り)

「……おーい。俺らいるのわかってんのに堂々といちゃつくかぁ?」

「は?」


 僕がカチンコチンに固まってる間にエディオスさんがそう茶化してきたが、セヴィルさんはまったく自覚がないのか振り返って疑問を口にしただけだった。


「そーぉだねぇ? 見ようによっちゃキスに見えたよねー?」

「なー?」

「……阿呆が」


 フィーさんまで加わってそう言っていると、僕の前からセヴィルさんが消えて、静かな怒りを含んだひっくい声が部屋に響き渡った。

 なんだと思ってしっかりと前を見れば、床に突っ伏して動かない状態でいるエディオスさんとフィーさんがあった。セヴィルさんは少し右手を摩りながらその近くで立っていました。


「よ、容赦ねぇな……」

「ひ、久しぶりにキレたね……」


 サイノスさんやユティリウスさんの怯えっぷりから、どうやらエディオスさん達はセヴィルさんの地雷を踏んでしまったようだ。

 自業自得だから、僕はとやかく言わないよ? いや、正直言うとお城での初対面かそれ以上に怖かった!

 中層での憤怒の表情がまだマシって思えるくらい!

 ほとんどの人達は顔面蒼白にされてたが、唯一けろっとしていたのはファルミアさんと四凶さん達でした。


「そこのお馬鹿達はすぐに目を覚ますでしょうから、この後はどうするの? セリカにひと通り事情は話したからお茶会の続きでもするのかしら?」

「ぼーくとカティアはちょーっと用事があるからごめーんね?」


 ファルミアさんが提案した途端フィーさんだけが元気いっぱいに起き上がり、それからその場で跳躍したかと思えばすぐに僕の背後に回ってきた。


「え、用事?」

「僕が君にねー? お茶会には後で参加するからー」

「ふゅぅ?」

「ちょっ、フィーさん!」


 抗議したかったが、僕の肩を掴んだ途端浮遊感を体で感じ、視界も変わって誰もいない僕の部屋に転移させられてしまった。


「もー、急になんなんですか!」


 用事なんてまったく聞かされた覚えがないので意味がわからない。

 フィーさんが僕の憤りを見てまあまあと宥めようとしているが、理由を聞かなきゃいくら僕だって落ち着けない!


「君に用事があったのはほんと。まだ皆には言えないからさ?」

「言えない?」

「うんちょっとね? まだ君の胸の内だけに留めておいてほしいんだけど」

「内緒事ですか?」


 少し落ち着いてきたので聞き返せば、フィーさんはウィンクされてから人差し指を唇の前で立てた。


「実は、セリカの捜索を引き受けたのには別の理由があったんだよ」

「と言うと?」

「周りくどい言い方はやめるね? 単刀直入に言うと、エディの御名手(みなて)だったからなんだよ」

「え、セリカさんが……えぇ、ふが⁉︎」


 いきなり告げられた事実に声を上げそうになったが、すぐにフィーさんが片手で僕の口を押さえてきた。


「ここで声上げても聞こえはしないけど、まだ全部言ってないからだーめ」

「……ふぁい」


 こくりと頷けば、フィーさんもにっこり笑って僕から手を離してくれた。


「当時の段階じゃ僕としては考察中だったけど、ほぼ確定しても良かったから告げに行こうとしてたんだ。でも、例の事件のせいと断絶された痕跡から辿れず200年近く……諦めかけてた僕は、酷な話だけどセリカの魂を探して転生させてからエディに会わせようとしてた。その必要がなくなったから良かったけど」

「……御名手、を繋ぐ為だからですか?」


 初日に少し聞いた程度だけど、この世界じゃ御名手はとても重要視されている。

 僕は今の名前を引き出すために使った手段だったが、大概は運命共同体として扱われている。僕自身さっきも思ったが、そこの実感は持てていない。セヴィルさんはどうだったかまだ聞いたことがないけど……恥ずかし過ぎるからすぐには聞けません。


「そうだね。神としては、将来の神王の妃となる相手なら早い段階で結びつきを強固にさせて……しっかり育んで欲しかった。僕個人としては、エディは自覚ゼロだけどセリカの健気な気持ちを成就させて上げたいと思ったんだ」

「はい?」

「簡単に言うと、あの二人お互いを好き合ってるんだよ。エディ未だに自覚ないよー? そこはセヴィル以上ににっぶいけど」

「…………え、エディオスさんが?」


 セリカさんを想ってた?

 どこにそんな素振りが……と思い返しても、今のセリカさんと再会したのはまだ一週間くらい前だ。

 再会した時は何故かしかめっ面だったし、惚れ直すようには見えなかった。

 だがそれより、セリカさんがもしエディオスさんの奥さんになれば……と、勝手ながら地球のウェディングドレスやタキシードを脳内で着せてみたら物凄くお似合いだとすぐに納得してしまった。


「物凄くお似合いだと思いますよ!」

「でしょー? 事情はなんであれ、六大侯爵家の末姫と現神王とが御名手となれば、うるさい子達もとやかくは言わないよ?」

「ですね! って?」


 ただなんでそんな重要事項を本人達はともかく、アナさんやセヴィルさんをまじえないのだろう?

 僕が首を傾げると、フィーさんも察してくれたのか小さく苦笑いした。


「これはさっき食堂で二人の結びつきを再確認出来たから言えるんだよ。それをまだ伝えようにも、セリカはきっと自分は不釣り合いとかでほとんど諦めてるだろうし、エディはほとんど自覚なし。そこにアナやサイノス達に聞かせてみなよ? 君とセヴィルの逢引以上に綿密に計画を練って無理くり二人をくっつけようとするね」

「そ、想像出来ますね……」


 ヴァスシードの方は、ファルミアさんやユティリウスさんもきっと同じ反応をするはず。四凶さん達は傍観側になったとしても、主人のファルミアさんが命じれば何かしら協力するだろう。


「それとカティアはしばらくセリカと過ごすことになるんだ。出来れば、今の彼女の心情とかを聞き出してほしい。女の子同士ならまだ話しやすいだろうし」

「そ、そんな重大な任務を僕がいいんですか……?」

「まあ、あとは君自身セヴィルのこと相談しやすいんじゃないかなって。アナやミーアじゃ、少しくらい言えても本音は言いにくいでしょう? 言ったところで言いくるめられて第二弾の逢引計画に巻き込まれちゃうだけだろうから」

「な、な、なんでそれを!」


 時々考えてはいたが、誰にも告げてはいない。

 フィーさんが口にした理由ももちろんあったけど、正直恋愛相談を他人に持ちかけたことがないからどうしたらいいのかわからなかったので。


「ほとんどにバレバレだよー? セヴィルはまあ僕も探り入れなきゃよくわかんないけど、君は特に顔に出やすいもん」

「うう……」

「だからじゃないって言っても信じてくれるかわかんないけど、セリカなら年も一緒だし考え方も君と近いとこが多そうだからわかってくれるんじゃないかな? ミーアは同じ世界出身でも転生して長いから、今の生活で得た知識が強いしね」

「い、言えるかわかりませんが……」


 多分、聞かれはするだろう。







 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆(セリカ視点)








 カティアちゃんとフィルザス神様が転移で退室されてから少し。

 私達は場所をエディお兄様の執務室から上層の食堂へ移動してからお茶会を開く事になりました。


(ここへ来るなんて二度とないと思っていたのに……)


 中はほとんど変わっていなかった。

 ただ座る場所だけは当然違っていたけれど。

 カティアちゃんとフィルザス神様のいつも座られてる席だけは空いているが、ゼルお兄様のお隣がカティアちゃんと言うことは……本当に彼女がお兄様の御名手だと言うこと。

 いいえ、カティアちゃん達が退室される前のお兄様のお怒りは本物だったわ。エディお兄様やフィルザス神様がご冗談を言われるのはよくあるが、あそこまでゼルお兄様が怒られるのは早々なかった。


(ちょっと……いえ、大分本気だったわ)


 今もエディお兄様は痛そうに殴られたところを摩っていますし。


(でも、御名手……そうね。そう言うお相手がいらしておかしくないわ)


 他の皆様だって、きっとそうだ。

 市民に混じって暮らしていた時に耳にした噂で、エディお兄様の事は予想し合うのはあっても、発表や確定に近い情報は流れてこなかった。

 きっと、ゼルお兄様のようなご事情があられるから、まだ公表出来ない可能性だってある。アナお姉様やサイノスお兄様の方はわからないけれど。


(……諦めるって決めたじゃない)


 いくら侯爵家に戻れたとしても、今まで培ってきた経験は覆せない。

 それを活かせる機会を得れただけでも良しとしてしなくては。


(この場に戻れただけでも僥倖だもの……)


 二度と会う事はない、と記憶が戻った時には覚悟していたのに。

 それが覆されただけでも奇跡だ。

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