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【完結】ピッツァに嘘はない! 改訂版  作者: 櫛田こころ
第四章 式典祭に乗じて
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141.式典祭3日目ーセリカとの思い出-②ー(エディオス視点)


「うわぁーーっ、早ーーい!」


 兄の騎獣にも何度か乗ってるはずなのに、初めて騎獣に乗った時みてぇにはしゃぎまくってるセリカ。

 アナも乗せた時は似た感じではあったが、あいつの場合身振り手振りで動き回るから、声を上げるだけのセリカとは大違いだった。

 出来るだけ速度も揺れも感じないようにさせたが、セリカは満足なようだから良かった。


「そんな遠くねぇから、そろそろクロッカスの群生地が見えると思うぜ?」

「ほんと⁉︎」

「あー……っと、あそこだな。少し身体起こせるか?」


 少し視界を巡らせてから見つけた薄桃の大地を指せば、セリカは少し俺の身体にしがみつきながら上体を起こして前を見た。


「うわぁーーっ‼︎ 綺麗ーーっ‼︎」

「上から見んのも悪くねぇな?」

「お兄様、降りるのまだ?」

「サイノスが誘導してくれてっからな……お?」


 ちょうど奴も騎獣が降下前の咆哮を上げてるところだった。その行き先を視認してから俺も手綱を捌いでディを動かし、開けた場所に向かって降りていく。

 先に降りてたゼルは魔獣達が寄って来ねぇように結界を張ったりしてた。


「よし、降りるぞ」

「うん!」


 出発前と同じようにしてセリカと一緒に飛び降りれば、眼前にはクロッカスの群生が飛び込んできた。


「綺麗ーーっ!」

「久々に見るが、圧巻だなぁ?」


 俺の髪色と同じような緑がほとんどない薄桃の花弁が鬱蒼とするくらいなのは、たまにならいい光景だ。

 先に降りてたアナはサイノスに抱えられながら嬉しそうにはしゃいでいる。俺もセリカを抱えたままだが、降ろすか?と聞いたら、もう少しと可愛らしいわがままを言うのでしっかり抱え直した。


「奥に高齢のがあるらしいぜ? そこで昼餉にしねぇか?」

「だな」


 最後に降りてきたイシャールの提案に全員で頷き、荷とかを担ぐにはさすがにセリカを抱えたままじゃ危ねぇから降りてもらうことにした。

 それについてはわがままを言うこともなく、それどころか小さな荷は持つと言ってきてくれたんで、マジで小さいもんしか持たせなかった。

 アナも珍しくサイノスの手伝いをしていたのには驚いたが。


(まあ、許されねぇ年の差じゃねぇが。最低あと200年だなぁ?)


 何がとは野暮なことだし言わねぇでおくが。

 あと障害になるのは御名手(みなて)かどうかはっきりさせることくらいだが、それもいつかフィーに聞けばいい。

 今日くらいはのんびり過ごすことに決めて、俺達はイシャールが案内してくれるとこに向かった。


「「きゃーーーーーーっ⁉︎」」


 驚愕もあるが歓喜の悲鳴が、幼い二人から上がった。

 到着するなり上げるからなんだと思ったが、二人が指を向けたとこにあるものを見て俺は口笛吹いた。


「へぇ? 最低2千年ってとこか?」


 幹回りも枝振りもなかなかのサイズ。

 花はこれでもかと言うくらい咲き誇り、花弁が落ちるかどうかの見頃だった。

 セリカとアナは荷を落とさないようにしながら樹に駆け寄り、片手でも花を摘もうと飛んだりしてみた。

 正直言って全然届かない高さだが、それでも楽しんでるからいいかと好きにさせることにした。

 その間に昼餉が取りやすいように敷物なんかの準備をして籐籠の中身も広げた。


「おーい、準備出来たぞー?」

「「はーい」」


 飛ぶのはやめて、届く範囲内の幹から少し咲いてるのをいくつか摘んで戻ってきた。

 短時間の割には、アナもだがセリカもそこそこの花束くらいになっていやがった。


「どうすんだ?」

「ミラお姉様のお土産!」

「たくさん摘みましたの!」


 ねー、と顔を合わせて仲良く笑い合っていた。

 せっかく作ったのはもったいないかとサイノスが別に持ってきてた魔法袋(クード・ナップ)に二つとも入れて保管することにした。

 結界を張り終えたゼルが戻んのと、待機させたままにしてた騎獣達を好きに飛遊させんのを指示してから昼餉になった。


「わぁ!」

「イシャールお兄様はどれー?」

「サンドイッチだけだ。他はまだ早いっつーから料理長に止められてな」


 料理は一部を除いて上層料理長の手製だ。その一部とはイシャール。侯爵家でも次男だからと好きなことをしたいって断言してるこいつの得意分野は料理だ。

 頭の固い連中だったらその道に進むのは猛反対だろうが、リチェルカーレ侯爵や夫人は結構のんびりした人物達だ。家を手伝うのも貴族の務めではあるが、無理にすることはないと言うタイプなんで、イシャールの夢はむしろ応援してるらしい。

 長男の方も、家を継ぐのはもちろんだが副業的なことを執り行うのには反対していない。今日もその関係で来れなかったようだ。


「「おいひーい!」」

「だろ!」

「パンに具挟んだだけだろ?」

「なにぉーぅ、サイノス!」

「ここで騒ぐな、うるさい」


 ほとんど男所帯だが、幼馴染みだけで騒ぐのも久しぶりだから、特に割り込まない。

 ゼルも久しぶりだからか、口は挟むが本気で怒ってねぇしな? 本気なら誰もが縮み上がるくれぇに怒気が半端無い。一応はアナとセリカがいるから控えてはくれてるだろうが。


「ほとんど行楽っつーか、昼餉の場所変えたぐれぇだな? 夕餉前に帰るとしても他どーする?」


 ひと通り食ってから少ししたとこでイシャールがそう言ってきた。


「そーだな? 半分くらい目的は終わってっし」

「年が年だが、セリカとアナがいるから二人のしたいことに付き合うのが無難じゃないか?」

「「わーい」」


 つっても、男と違って野を駆け回るとか隠れ鬼って年でもない二人だったから……せめて、俺達も参加しやすいようにと樹や野にある草花で冠や首飾りを作ることに。

 ミラ姉に昔教わったから全員出来るが、ごつい男が出来る特技は絶対学園には言えるかって話だ。

 だが一人は結界を張ってても見張りは必要だからとゼルが担うことに。

 組み合わせは、俺はセリカと。アナはイシャールとサイノスだ。ゼルが仮にイシャールと組んだところでにこやかな風景など望めないからいい選択だったと思う。


「いっぱい作るの!」

「土産にか?」


 ミラ姉にもだが、自分の兄弟達にも作るとセリカは張り切っていた。

 だと大量に花が必要になるので、魔獣に警戒しつつもクロッカスの群生から少し離れてレッシュの群生を探しながら全員で移動。

 ほんの少し歩いたところでそれらを見つけ、組み分けした通りに別れてから思い思いに製作に取り掛かった。


「たっくさん出来た!」

「マジで大量だな?」


 かつてないほど作りまくった。お陰で俺のスキルまで上がった気がしたが次に披露することはそうないはず。


「これはー、エディお兄様!」

「あ?」


 最後に作った黄花のレッシュで作った冠と首飾りを俺につけ、セリカは満足気に笑った。


「王様なの!」

「まあ、いずれはそうだが……」


 親父の跡目を継ぐのに異論はないが、まだまだ俺は若い。って言っても、じい様が決めた譲位とかは結構早いしうかうかしてられねぇ。正式に神王太子になるのもあと数十年だ。やりたい事は今のうちにしないと後悔しちまう。


(俺はイシャールと違うからな……)


 他に男兄弟がいてそっちが優秀だったら違ったかもしれないが、どっちも叶わなかったから必然的に俺が次の神王だ。セリカも俺の将来が楽しみなのかにこにこ笑ってるだけだしな?


「ぶっ! エディ、全然似合わねぇ!」

「うっせ! お前のが似合わねぇっつの!」


 俺以上にアナに装飾されたイシャールの方が段違いで似合わん!

 サイノスも耳飾り以外やられてる始末だった。アナが喜んでるんで好きにさせた結果だろうが、こいつも似合わない。

 作り終えて言い合いしているうちに時間も頃合いになってきたので、袋にすべて詰め終えてから城に戻ることになった。


「……エディお兄様、次はいつになるの?」


 ディに乗ってる最中、もう着く寸前のとこでセリカがそう聞いてきた。


「……正直言って、はっきりとは答えられねぇな」


 高等部を卒業して大学部に入学したが、課題や実習が多くて城下にもあまり行けないくらいだ。

 今回は城の方に用もあったからたまたま帰ってこれたが、遊びが中心でいい歳のセリカ達と今日みたくゆっくり出来るか今後は怪しい。

 少しずつだが、政務にも手をつけだしてるからな。


「そっかぁ……」


 幼くとも賢い彼女は、ため息混じりにそう言ったきりもう聞いて来なかった。

 それと結構遊んだせいで疲れたから寝てしまったのもあるが。

 城に戻り、イシャールに引き渡した時はしょうがないかと全員で苦笑いした。アナの方も同じだったからだ。


「次は、って決められねーもんな。俺やサイノスも見習いになったばっかだしよ」

「そうだな」


 騎士見習いと調理場見習い。

 特にイシャールは六大侯爵家の出だから偏見と嫌煙が綯交ぜな空気でしんどいだろう。って言っても、風の噂じゃ蹴散らして認めさせたとか色々あるが、悪くない生活を送ってるようだ。

 俺やゼルは飛び級でも他の級友達と楽しくやってっから、課題なんかで苦は感じても辛さは少ない。

 将来のことを思えば、今の方はたいしたことがないからな。


「じゃ、さすがに帰りは馬車にさせっか」

「俺はこっちで泊まらせてもらうのに、お前らも遠慮すんなよ?」

「いや。今日の夕餉は久しぶりに全員揃うらしいからな? そこだけは帰って来いって言われてんだよ」


 そう言ってセリカと袋を抱え込んで、イシャールは門の向かった。

 今思えば、警備を増やしてから見送れば良かったと激しく後悔してるが。

不穏な気配は次回明らかにノシ


また明日〜〜ノシノシ

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