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【完結】ピッツァに嘘はない! 改訂版  作者: 櫛田こころ
第四章 式典祭に乗じて
134/616

134.式典祭3日目ー大将ミービスー

 鋭い青色の瞳に見られると体がすくんでしまう。

 フォークとナイフを落とさないように握りしめることで耐えようとはしてるけど、体は勝手にぷるぷると震えてしまいます!

 僕が顔を上げても、店長さんはずっと鋭い目で僕を鑑定するかのように見定めしてきてた。


(あ、ひょっとしてこの人も魔眼持ちとか⁉︎)


 確率は少ないと言っても、ないとは言い切れないもの。

 だとしたら、僕の変装なんて……って、そうしたらエディオスさんの方の変装もバレて大変なことになってるはず。

 なら、単純に僕を見定めてるだけかな?


「……悪くない目はしてんな」

「う?」


 そう言ってから不敵な笑みを浮かべました。

 なんかちょい悪なおじさんに見えるけど、機嫌は悪くないみたい。


「大将が褒めてくれんのそうそうないぜ? 良かったじゃねぇか、カティア」

「いちいちうっせぇ!」

「いでっ!」


 付け足しで言ったエディオスさんの言葉に、照れ隠しなのか店長さんが脳天に拳骨をお見舞いした。

 セヴィルさんがするのは時々見るけど、一般の人が王様にするのっていいのかな……身分隠してるしお互い慣れてるからいいのか?


「んで、どう言う関係なんだよ。お前の隠し子じゃねぇみてぇだし」

「だーから違げぇって言っただろ⁉︎ 一時的に預かってんだ。その間に色々作ってくれてるだけだ」

「は、はい」


 ある意味間違ってない説明に僕も合わせるように頷いた。


「依頼か?」

「私用だから違げぇよ」

「わーった。で、嬢ちゃん?だっけか。得意なんがたしか惣菜とかのパンって言ってたがマジか?」

「あ、はい」


 こくこく頷けば、店長さん今度は面白いものを見るように僕を覗き込んできた。

 なんか、イシャールさんに似てる感じだ。そして嫌な予感がする。


「エディ、この後どっか回んのか?」

「いや? ここ寄った後は特に」

「んじゃ、この嬢ちゃんちょっと貸せ」

「「はぁ⁉︎」」


 エディオスさんと一緒に僕も声を上げてしまいました。


「暇なんだろ? 俺の作るとこ見たくねぇか?」

「う」


 それは正直言って見たい。

 実を言うと、マリウスさんやイシャールさん達の調理するところとかをじっくり見たことがないのだ。

 今の体格の関係で見えないのもあるけど、料理は技術。基本見て習得したり、模倣したりするものだ。

 要は、自分の手の内を披露してしまうこと。

 外見上、幼い僕には見せれない事だってあるだろうし、僕自身元は見習いだったからある程度立ち回りとかはわかってるが、それでも熟練者の技術は魅力的だ。

 ラディンさんの技術も一回切りだし、ファルミアさんの技術はどちらかと言えば家庭向き。

 対するこのお店の大将さんの技術は民衆向きでも、家庭よりは上級者だ。

 前置きは色々長くなったけど、ぶっちゃけあの絶品フライやオムレツを作れる技術を惜しげも無く見せてくれる機会なんて逃したくないんです!


「お、お願いします!」

「おう、いい返事だ。エディも食ってから来いよ」

「やけにあっさりだな? 弟子も滅多にとらねぇ男が」

「嬢ちゃんは特別だ。お、セリカのジャムクッキーか? それ食ってからマイムに連れてきてもらえ」

「あいよ」


 と言うわけで、食事をしてからお邪魔させてもらうことに決定。

 残りの食事を急がずゆっくり食べてから最後にセリカさんのジャムクッキーを頬張れば、自然にほっぺが緩んでしまった。


「美味しいー」

「ふゅぅ!」

「嬉しいわ、ありがとう」

「本当に美味しいです!」


 本音をしっかり言えば、セリカさんは神々しい笑顔を向けてくれました。ファルミアさん並みに眩しいです。


「マジで美味いな? これいくら?」

「え、か、買ってくださるんですか?」


 エディオスさんも食べててさりげなくそう言うと、セリカさんが何故かどもってしまった。


「エディが褒めてくれんなら本当さね。残り少なくなってるだろうし、今から焼いてきなよ」

「あ、は、はい……」


 女将さんがツンツンとセリカさんの肩をつついて言えば、セリカさんはちょっとお顔を赤くしてから厨房に入っていった。


「……俺なんかしたか?」

「自覚ない男はこれだからねぇ?」

「は?」


 鈍い僕でも女将さんの言葉の意味はわかったぞ。

 いくら変装しててもイケメンに変わりないエディオスさんだから、きっとセリカさんは恥ずかしかったのかもしれない。ギルドでもエディオスさんおモテだったもの。







 ◆◇◆






「んじゃ、ちゃんと自己紹介してなかったな? 俺はミービス。ここのバル、『ミービス』の店主だ。大抵の奴にはエディが呼ぶみてぇに大将とかで呼ばれてるがな?」

「か、カティアです。よろしくお願いしますっ」


 厨房にて改めて自己紹介をすることに。

 エディオスさんはマントとか荷物は女将さんに預けて端で見学されるようだ。


「ほんじゃ、カティア。お前は何作ってんのが見たい?」

「い、いいんですか?」

「おう、遠慮はいらねぇ」


 初対面でちょこっとしか会話していないのに、なんでこんなにも親切なんだろう?

 エディオスさんも店長さんはお弟子さんを滅多にとらないって言ってたし、従業員さんも他に見当たらない。完全に身内だけの経営の中に、いきなり余所者の僕がそんな深く聞いていいのかな?


(でも、せっかく言ってくれてるならその好意には応えなきゃ)


 それが礼儀というもの。


「じゃ、じゃあ……カッツのオムレツっていいですか?」

「あれでいいのか?」

「はいっ」


 まだこの体じゃ満足にフライパンを扱えないけど、元に戻ったら実践してみたい。

 しっかり頷けば、店長さんはにっと口角を上げた。


「よっしゃ。セリカとかが使う台持ってきてやっから、ちぃっと待ってな」

「はい」


 そして準備が整ってからコンロの近くで見学させてもらうことになった。

 材料は卵数個に手作りバターが入ってる瓶と塩と胡椒の小瓶にちょっと柔らかめのチーズ。

 全然難しい材料じゃないのは予想通りだけど、見たいのはここからだ。

 オムレツ用のフライパンを温め、バターを適量入れて溶けている間にボウルに片手で卵を割って塩胡椒少々、菜箸はないからホイッパーで……と思ったら太いけど菜箸登場⁉︎


(使い方慣れてる⁉︎ 上層でも中層とかでも見たことないのに?)


 下町だと普通にあるのかな?

 疑問に思ってるより見学の続きだ。

 バターが溶けきって温まったフライパンに、溶きほぐした卵液を一気に投入。そして間髪置かずに菜箸を使って回しながら半熟に焼いていき、フライパンにも火が均一に通るように回しながら焼く。

 ここは基本的な焼き方だしホテルのバイキングでシェフが実演している時にもよく見る工程だ。

 だけど、焼き加減のリズムやチーズの入れるタイミング、巻くタイミングは人一人違ってくる。

 じっと観察してるが、僕が見易いように手元はゆっくりだがタイミングは店長さんのタイミングだ。

 半熟にさせてチーズを投入し、菜箸で端に寄せて巻いてフライパンを振る……全部目の前で見ててもやっぱり難しい。レストランの師匠や学校の先生達のもいっぱい見てても、学べることは多い技術だ。

 魔法も火をつける以外ない、まったくの人間のなせる技。


「あいよ、出来たぜ?」


 ぽんっとお皿に盛り付けられた綺麗なオムレツ。

 さっき僕が食べたのと寸分も違わない同じ大きさに色艶だ。


「ぜ……」

「あ?」

「ぜ、全然わかんないですっ! 基本中の基本なのはわかってるんですが、食べた時の半熟加減とか柔らかく仕上げれるところとかが!」


 その部分に関してはお手上げだ。

 工程は師匠や先生達とそう変わらない。

 なのに、出来上がりは全然違う。

 今目の前でクラウがむしゃむしゃ食べてる感じから最高に美味し……クラウ?


「クラウ⁉︎」

「ふゅぅふゅぅ!」


 エディオスさんの頭で待機してたはずのクラウが、文字通りむしゃむしゃと店長さんが手にしてるオムレツのお皿に真正面からかぶりついていた。

 そして、僕が止める間も無く、ぺろんちょと食べ切っちゃった。


「……よく食うな?」

「す、すみません! クラウ? まだ懲りてないようだね?」

「ぶゅゆ⁉︎」


 店長さんが呆気になるのも無理ないが、それよりもクラウへのお仕置きが先なので、お皿を舐めてるクラウを引き離してからこめかみぐりぐりをお見舞いしたよ!


「わーりぃ、間に合わんくてな?」


 僕がお仕置きを終わってからエディオスさんが回収してくれました。


クラウは日々食いしん坊さんなとこだけがいい子ちゃんじゃないwww


では、また明日〜〜ノシノシ

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