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【完結】ピッツァに嘘はない! 改訂版  作者: 櫛田こころ
第四章 式典祭に乗じて
132/616

132.式典祭3日目ーセリカー

「あいよ。えっと、カティアちゃんだっけ? 好き嫌いは特にないかい?」

「ないですっ」


 未知の食材じゃない限りは問題ない。

 この世界に来てから、今のところ一度もないから多分大丈夫だ。


「えらいねぇ? そっちの守護獣ちゃんは?」

「ふゅふゅぅ!」

「た、多分、大丈夫です」


 今のところそう言ったのはなかったから、多分大丈夫なはず。

 飲み物はジュースもだけど牛乳も大好きなんで、クラウの飲み物はそれに。僕とエディオスさんはコフィーにしました。


「飲みもんは先でいいかい?」

「飯の時間かかるんならそうしてくれ」

「あいよ」


 女将さんはちょっと苦笑いされてから奥に入っていかれた。

 きっと、店長さんが気落ちしたままだろうからエディオスさんが気遣ったのがわかったんだろうね。


(でも、本当に殺風景……)


 広さはそこそこあるが、その中で僕ら以外に冒険者風のおじさん?が一人だけだと余計に広く思えちゃう。

 おじさんはお酒を飲んでたのか疲れてるのかわからないが、机に突っ伏して寝こけてました。


「ここの飯は美味いぜ? ユティも気に入ってたしな?」

「ゆ、ユティさんも?」


 前に言ってた城下街にお忍びで来られた時とかかな?


「あん時は財布の紐緩め過ぎて災難に近かったがな?」

「あはは……」


 容易に想像出来ちゃいます。


「ふーゅぅ、ふゅ」


 クラウが鼻をくんくんさせながら奥に方に飛んでいきそうになった。僕じゃ届かない高さだったんで、エディオスさんが素早く片手でキャッチしてくれました。


「ふゅ?」

「美味い匂いしてっからってダメだぞ?」

「ふゅーーっ」


 ジタバタジタバタするクラウだったが、力じゃエディオスさんに勝てないので、少ししてから諦めて翼をへしょげた。


「あらあら、可愛いらしい聖獣ちゃんなんですね?」

「あ?」

「う?」


 女将さんの声じゃなかった。

 二人で声の方に振り返れば、町娘さんのような服装に身を包んだ……とっても可愛いらしい女の人がコフィーなどの乗ったトレーを抱えていた。


「お待たせしました。お飲み物をお持ちしました」

「……あんたは?」

「ここに下宿させていただいてますセリカと言います。普段は学園にいますのでエディさんとは初めましてですね」

「…………そうか」


 エディオスさんは見たことがない人なんだ?

 お姉さんはにっこり微笑んでから僕達の前に飲み物を置いていく。カップはソーサーじゃなくてマグカップみたいな陶器のコップでした。


(わぁ、可愛いっ! それに綺麗……)


 目が合えば、僕にもにっこりと笑顔を向けてくれた。

 肌は少し日に焼けてても白い方で、髪はちょっと天パががってる薄紫の長い髪。下の方をリボンで少し結わえている。鼻の位置や唇の質感も女性には羨ましいくらい整ってて、ファルミアさん達に引けを取らない気がした。きわめつけは水晶にように透き通った薄水色の瞳。まつ毛長過ぎて、これもすっごく羨ましいです。

 顔立ちは綺麗もあるのに可愛いが目立ってるって不思議な感じだ。この人ほんとに庶民?って思っちゃうくらい。年齢は……元の僕と変わらないように見えるから、こっちだと280歳?かな?


「ふーゅ、ふゅふゅぅ!」

「え、クラウ?」


 自分の前に牛乳入りのコップが置かれると、クラウは何故かセリカってお姉さんの方に飛んで行った。今度はエディオスさんも間に合わなかった。


「きゃっ!」

「ふゅ」


 お姉さんは突然のことに当然お盆を落としてしまい、クラウが胸に飛び込んで来たのをなんとかキャッチしてくださった。


「ご、ごめんなさい! 僕の守護獣が!」

「あ、いえ。大丈夫ですよ」


 なんとか倒れずに踏ん張ってくれてたので大事にはならなかった。

 しかし、いけないことはいけないことなので、クラウを返してもらってから僕はクラウにお仕置きを実行!


「なーにしてるの!」

「ぶゅゆゆ⁉︎」


 もちろんこめかみ?にぐりぐり攻撃。

 これが今のところ一番効果的だからです。


「もう一つ罰として僕とエディさんがご飯食べ終わるまでお預け」

「ぶ、ぶゅゆぅ⁉︎」

「ダメ」


 これもう決定。

 僕がご立腹なのをわかったのか、クラウは反省して翼と小ちゃいお耳をさっき以上にへしょげた。だからって、許すわけにはいかないからそのまま放置だ。


「まあ、しっかりされてるんですね。お嬢さんは」


 くすくすと笑い声が聞こえたので振り返れば、セリカお姉さんがお盆を脇に抱えたまま笑っていた。


「お食事はもう少しかかりますので、ごゆっくりお過ごし下さい」

「あ、はい」


 ただ今の笑い方ってどこかで見たような?と首を傾げてしまうが、気にしてても仕方ないかと席に戻った。

 クラウはまだ落ち込んでても牛乳をちびちびとは舐め出していた。それだけは別に咎めてないからね。


「……エディさん?」


 なんか、エディオスさんがセリカさんが行っちゃった方向を凝視していた。

 惚れたのとかそうじゃない。

 無茶苦茶顔が険しい方なんです。怖い顔ともちょっと違うけど。


「ん? ああ、悪い」

「いえ……」


 僕が声をかけてからすぐにいつも通りに戻ったけど、ちょっと引っかかる。でも、ここはお城と違って秘密を無闇に話せる場所じゃないからダメだ。今は我慢しておこう。

 それから数分コフィーを飲みながら静かに待っていれば、女将さんとセリカさんがたくさんのお料理を持ってきてくれました。


「はいよっ! いつものをひと通り持ってきたよ!」

「にしては多くね?」

「あんたが来たって知ったら急にしゃっきりしてくれてね。お礼も兼ねてるんだ、遠慮なく食べてくれよ」

「大したことしてねぇのによ」


 しっかし、エディオスさんが言うように本当に多過ぎる。多分、店長さんはエディオスさんの胃袋の大きさを知ってるからこの量にしたんだろうけど。

 でも、これだけ大量の食事を目の前にしてクラウは……と見れば、予想通りよだれの洪水を起こしていた。

 いつのまにかそっちに回っていたセリカさんに拭いてもらってたが止まる気配がない。


「……クラウ?」

「ぶゅ!」


 僕が声をかければわかりやすくお耳と翼をしょげ出した。


「……ご飯はあったかいうちがいいんだよ」

「ふゅ?」

「……お行儀よく出来るなら、いいけど。お姉さんには謝ってね?」

「ふゅふゅ!…………ふゅ」


 僕がわざとらしく咳をしてから言えば、すぐに飛び上がった。でも最後の言葉はきっちり聞いてたようで、すぐに後ろに振り返ってセリカさんにペコっとお辞儀をした。


「あら、さっきのなら気にしてないわよ?」

「さっきの?」

「はい。この聖獣ちゃんが急に抱きつきにきたんでお盆を落としちゃったんですが」

「ああ。セリカは美人さんだから聖獣にもわかったんじゃないかい?」

「お、女将さんっ!」


 女将さんの何気ない一言にセリカさんお顔真っ赤っかに。

 慌てるとこまで可愛らしいなんて、たしかに女将さんの言うように美人さんだからなのか。

 ただ、セリカさんは本当に恥ずかしかったようで、料理を置いてから奥に戻っちゃった。


「女将、あの嬢ちゃんいつから下宿してんだ?」


 もう食べ始めたエディオスさんは女将さんが行っちゃう前にそう聞いた。


「ああ、セリカかい? 下宿って言うか……ほとんど家族のようなもんだよ。店の手伝いしてくれるようになったのはここ最近だけど」

「つーと?」

孤児(みなしご)とも違うんだが、塀向こうの崖の下で見つけてね。自分の名前以外覚えてなかったんだよ」

「いくつくらいの時だ?」

「だいたい100歳前だったかねぇ? けどセリカがどうかしたかい? あんたは常連でも、セリカは学園に入ってからほとんど寮住まいだったから会うことはたしかになかったけど」

「あー、まあ、知り合いに似てた気がしてな?」


 歯切れ悪くそう言う彼の言葉に、女将さんが急にガシッとエディオスさんの肩を掴んだ。


「本当かい⁉︎ あの子自身は気に留めてないように見えるけど、やっぱりちゃんとした親元のとこに返してやりたいんだよ!」

「ちょ、おか……まだ判断材料が薄いっての!」

「あ、ああ。すまないね」


 女将さん、よっぽどセリカさんの事を思ってるんだ。

 だいたい100歳くらいに引き取って育てて今までなら、そりゃ実の子供と同じくらいだよね?


(でも、エディオスさんの知り合い?)


 身内かお城関係だとしたら貴族の娘さんだったりとか?

 セリカさんのドレス姿をアナさんの着てたりするのを照らし合わせてみたが……似合う。物凄く似合う。

 絶対僕以上に!


「ふゅ、ふゅぅ!」

「ゆっくりだよー?」


 クラウは自分の手で食べられるのは自己判断で食べるようになったので、魚のフライのようなのを食べながら満足げに頷いていた。

新キャラが続々と登場しますノシ



また明日〜〜ノシノシ

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