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【完結】ピッツァに嘘はない! 改訂版  作者: 櫛田こころ
第四章 式典祭に乗じて
131/616

131.式典祭3日目ー賑わいと閑古鳥ー

本日から通常連載でーすノシ







 ◆◇◆







 ルシャーターさんが教えてくれた事実を確認すべく、行き先のバルではなく例のティラミスもどきを販売しているバルの方に向かうことになった。

 ただし、偵察するだけだから列には並ばずに遠目から確認するだけ。並んで味を確かめように屋台のおじさんから教えてもらった待ち時間じゃ絶対食べきれないしね。


「ここ曲がりゃ……あった、な」

「おお……」


 何回か角を曲がったところでエディオスさんが立ち止まった。

 彼が言い澱むのも仕方がない。だって、屋台の並木道がここに押し込まれたんじゃないかってくらい人で溢れかえっていたからだ。

 お店はエディオスさんの肩に座ってるからなんとか見えたが、レンガ造りの居酒屋風なお店の入り口からかなりの長蛇の列が出来てるだけしかわからない。

 のぼりも特に看板も見当たらないけど、整理係の男の人は何人か雇われてるようだ。従業員にしては明らかに恰好が冒険者っぽい。


「すげぇな? お前のがそっくりそのままだったらこれだけで済まんかっただろうな」

「う、売れる売れない関わらず申し訳ない気持ちです……」


 情報網が口伝えや手紙主流のこの世界でもこれだけ集うなんて想像出来ようか?

 けれど、お城じゃここ以上に制限をかけてたから僕なんかでも製産が出来ていた。

 それなのに、正確なレシピじゃなくアレンジや代用だけでこの騒ぎ。

 本当は味とか色々確かめたいけど、予想以上のこの中にはやっぱり突入出来ない。


(それに、僕の容姿が伝わってないとも言い切れないもの)


 中層で予想して、実際にコックさん達の一部が口外してしまった僕の容姿と技術の一部。

 シェイルさんの広めた情報もあれば、お城勤めの人なら少しでも耳にしているだろう。このお店の息子さんが万が一僕を見かけたら、すぐにばれてしまう可能性がある。

 エディオスさんもそれを予想しているだろうから、行列の後ろの声に聞き耳を立てながら難しい顔をされていた。


「ぜんっぜん列動かないな?」

「朝一で並んでもまだ食えてねぇのが多いらしいぜ? さっき伝えてきた整理順に入れただけでもいいだろ」

「お城の方が美味しいらしいけど、600ラインで食べられるならこっちのがいいわよねー」

「城じゃ学園生達で溢れかえってるもの」


 僕の聞こえる範囲でもだいたいこんなところだ。

 けれど、600円って破格じゃないかな?

 提供価格の計算はもちろん見習いだったから関わったことがないが、日本じゃサービス料込みだったからそこの違い?


「……とりあえず、ミービスのバルに行くぞ」


 エディオスさんとしてはもういいのだろう。

 僕も異存はないのでクラウを抱っこし直してから頷いた。

 行列からだいぶ離れたところで、エディオスさんは僕に小声で話しかけてきた。


「どう思う?」

「えと、値段ですか? それとも中身ですか?」

「どっちもだな」

「そうですね……僕の感覚だと安過ぎちゃいます。手間をどうされてるか次第ですが、材料を制限していても……あれだけの行列が来るのなら800ライン以内に収めないと」

「へぇ?」

「僕が働いていたところだと材料費と技術料などが含まれるからです。それと物価が高いせいもあります」


 乳製品や粉とかは年々値上がりしていくばかりだった。それが普通だと思っていたんだけど、ベテランの先輩方に聞いた話じゃ、昔の方がもっと安く提供出来てたらしい。

 あとは消費税を上げられたこともあるが、政策で可決されては拒否権のない僕らにはどうしようもない。


「けど、お前が食わせてくれたのだとどうなる?」

「一人分ですか?」

「ああ」

「……お城に来る食材が高級品だと仮定したら……エディさんに食べていただいたのでも安く見積もって1500ラインくらいでしょうか?」


 結構当てずっぽうだけども。


「そうだな。俺とかそこは関わってねぇが、ファルに聞けばもうちぃっとわかるだろうが」

「けど、カッツクリーム無しであの列って言うのが不思議なんですよね」


 ちょっと前も考えたけど、絶対飽きが早いと思う。


「俺は無しのを食ってねぇから考察しか出来んが……やっぱ舌が疲れてる奴にはコフィーの苦味だけでも凄かったんじゃね?」

「でしょうか?」


 それくらいしか思い当たる節がない。


「っし、もうすぐ着く……?」

「ほぇ?」


 エディオスさんが息を飲む声に彼を見てしまったが、今まで見たことがないくらい驚愕の表情に一変していました。

 僕も彼の視線の先を向けば、食堂とか居酒屋の並びだろうか……その一帯が本当に誰も(・・)いなかった。


「冗談だろ……?」


 自分の目に映ってる光景がまだ信じられないのかもしれない。

 元の日常風景を僕は知らないが、これだけ殺風景過ぎるのも異常だ。


(まるで、忘れられた商店街みたい……)


 流行りに持ってかれてお客さんが全然訪れなくなった、そんな印象。


「ふゅ?」


 クラウにはこの風景の意味がわからないから、いつものように首を傾げるだけだ。


「と、とりあえず、行ってみませんか?」

「……あ、ああ、そうだな」


 ようやっとエディオスさんも正気に戻ってくれたようで、進んでくれた先は赤い屋根が特徴的なバーのような感じ?

 感じというのは店構えが、商店街で時々見かけるお洒落なバーとそっくりだったからだ。


「バルって、えと……お酒を飲むところですか?」

「あー……食堂と茶店に比べりゃ酒は多いな? けど、別にガキが来て悪いとこじゃねぇよ。親に連れられて来るのも多い」


 なら、バールってカフェバーに近いのとレストランを組み合わせたような?

 細かいことはまたファルミアさんに聞くことを頭の片隅に入れて、エディオスさんが扉を開けるのを見ることに。


「邪魔すんぜ!」

「え、いらっしゃ……あら、エディじゃないのさ⁉︎」


 中は予想通りがらんがらんだったが、お客さんは一人と女将さんらしいおばさんの店員さんがいらっしゃった。


「よ、女将」

「随分と久しぶりじゃないの……あら、その子達は?」


 僕とクラウがちょうど顔の前くらいの高さだったのかすぐに気づいてくれて、目が合えば僕は小さくお辞儀した。


「こ、こんにちは」


 少しぎこちない挨拶になってしまったが、女将さんは気にせずに顔を緩めながら笑みを浮かべた。


「こんにちは。可愛いお嬢ちゃんじゃないか……まさかあんたの?」

「だーから違げぇ! なんでそう見えんだ?」

「あんたもいておかしくない年頃じゃないの。まあ、それにしては大き過ぎるけど」

「ふーゅ?」

「あら、もう守護獣もついてるのかい?」

「ふゅ!」


 クラウにも気づけば、クラウはお決まりの挨拶の右手を上げて翼をぴこぴこ。

 女将さんには受けたようで、少し吹き出しちゃった。


「よく似合いじゃないの。せっかく来てくれたんだけど……こんな状態だから大したもんは出せないよ?」

「大将は?」

「結構落ち込んでてねぇ? 初日と二日目はまだ良かったんだが……今日はさすがに堪えたらしい。奥で引っ込んじまってるよ。酒を浴びないだけマシさ」


 これは、言った方がいいのだろうか?

 目線でエディオスさんに告げても、止めとけみたいに目を伏せられた。


(まあ、この外見の子供が……って言っても冗談で受け流されるだけかも)


 とりあえず、女将さんに席に着いたらと言われたので僕とクラウは床に降ろしてもらい、四人がけの木のテーブルに着くことにした。ここではお城で最初あったような魔力の拒絶が起きることはなかったです。


「お嬢ちゃんがいるから、酒はやめときなよ?」

「わーってるって。カティア、俺がいつも頼むもんでいいか?」

「お任せします」

「ふゅ!」


 グルメなエディオスさんに任せれば、絶対ハズレがない気がする。

 もともとそうだったのもあるが、僕やファルミアさんの作るものをここ最近ほとんど召し上がってくださってるから余計に。

また明日〜ノシノシ

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