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ピッツァに嘘はない! 改訂版 作者:櫛田こころ

第四章 式典祭に乗じて

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125.式典祭3日目ー模倣されたティラミスー

「…………なんかすみません」
「悪りぃのはお前じゃねぇよ」

 屋台から離れて街道脇のさらに隅に。
 僕はエディオスさんに降ろしてもらってから謝れば、エディオスさんは苦笑いしながら頭を撫でてくれた。

「広めたのは国民の奴だ。お前は、来賓とかのことを考えて思いついたんだろ? まあ予想はしてなくもなかったが」
「けど、異世界の料理を簡単に広めたら」
「構わねぇよ。フィーがとやかく言ってねぇし、それなら先にいるファルの方が結構やらかしてるぜ? テリヤキとかそうだろ?」
「あ」

 忘れてたけど、僕よりずっと前からこの世界にいるもんね。
 でも、それにしては特に広まってないような?

「疑問に思うだろ? あいつは元が暗部の家格だったもんであんま表に出てなかったんだ。ユティの婚約者になってからはそのワガママで色々作るようになったもんで、あいつらの国近郊にも最近増えた程度だ。ここいらじゃ伝わってないのも無理ねぇ」
「お家の事情だったんですね」

 それなら納得。ティラミスはここから距離はあっても一般公開中のお城の一部で流行っちゃったお菓子だからね。もう三日目だから試そうと思えば出来ちゃうだろうし。
 ただ、爆発的に広まり過ぎやしないでしょうか? それにクリームチーズの製法や材料がわかってないだろうから……多分コーヒーケーキのパフェっぽい感じだよなぁ。

「どーする。行ってみっか?」
「うーん……けど、多分お使い出来ませんよね?」
「だな。城の具合とかは又聞きだが、二刻待ちとかあったらしいな?」
「それが外となるともっとでしょうし」

 気にはなるけど、無理はしないことに決めました。
 それに屋台から流れてくるいい匂い達にクラウのじたばたが落ち着かないのですよ。朝も結構食べるけど、胃袋は無尽蔵のよう。かく言う僕も、小腹は空いてるけどね?

「んじゃ、昼には行きつけのバルに連れてってやるよ」
「バル?」

 エディオスさんが言う感じから、レストランよりは定食屋さんか居酒屋さんぽい気がする。エディオスさんはまだしも、僕は普段着のチュニックのままだ。しかも、ちょうどこの世界に来た時に着てた蒼い上下の。この服がいくら高価なものっぽく仕立ててあっても普段着に変わりないからね。あとは、エディオスさんが城下街に来てまで格式高いお店に行くとは思えないし?

「んじゃ、また乗れよ」
「お邪魔しまーす」

 迷子必須なので、今度は慌てることなく抱っこされて肩にちょんと乗せられました。

「ふゅ、ふゅゆゆゆ!」

 あちこちから漂ういい匂いに、クラウは興奮が収まりそうもない。さっきはジュースだけだったし、間食に何か食べさせなきゃダメかも。

「まあ、待てクラウ。全部食っちまうと後の美味いもんが入らなくなるぜ?」
「ふゅ?」

 美味しいもの?と言いたげに、クラウがじたばたするのをやめてエディオスさんを見上げました。

「フィーから聞いた言葉だが、空腹は最高の調味料って言うらしい。美味いもんを食いたきゃ、出来るだけ腹空かしといた方がいいだとさ」
「あ、それ知ってます!」
「つーと、そっちの言葉か? 俺は最初わかんなかったが、仕事したりして腹空かしてから食うと美味いのは理解出来たな」

 出来るだけ異世界知識やお城の話題を出さずにのおしゃべりはちょっと大変だけど、同じくらい新鮮。
 異世界転移だとかトリップのスタートって色々あるらしいけど、僕の場合はいきなりお城。こう言った街中じゃなかったから、飛び込んでくる景色に知識は豊富だ。エディオスさんと話しつつも、食べ物屋さんの屋台を注意深く観察しているよ?
 お肉はケバブみたいなのやホットドッグにバーベキュー味っぽい串焼きとか。デザートは揚げドーナツとかサーターアンダギーみたいなので色は茶色が多い。クレープやアイスとかかき氷は全然。ちょっと色合い的に寂しいな。代わりに冷やした果物とかは売ってるけど、あんまり買う人はいないみたい。

「どした? ゼルみてぇに眉間に皺寄ってんぞ?」
「うぇ、そうですか?」

 いかんいかん、考え込み過ぎてたようだ。クラウもこっちを向いて手を伸ばそうと一生懸命になっていた。慰めようとしてくれてたのかな? 思わずほっこりとなって、よしよしと撫でてあげました。

「いえ、屋台のメニューが色合い的に偏ってるなと」
「まあ、一般民の出すもんだからな? コースメニューとは違うしよ」
「けど、例の行列が凄いデザートのところはどうやって提供されてるんでしょう?」

 あれはムースとかよりは固くても、全体的に柔らかいものだ。この世界に紙製やプラスチックの容器なんてないし、金属にしたら持ち歩きなんて無理に決まってる。器の仕入れ値が絶対日本より高いはずだからテイクアウトなんて以ての外だもの。

「お? 兄ちゃん達も例の行列んとこ行くのか? やめといた方がいいよ」

 と、また考えていたら、ベーコン串って高カロリーな商品を売っている恰幅の良いおじさんが声をかけてきた。焼けてる香ばしい匂いにクラウのよだれが最高潮になってしまっているよ。たしかに、僕も一本の半分は食べてみたいかも。

「聞きたいな? 親父、串二本いいか?」
「あいよ。せっかくだから焼き立て食わしてやるよ。その間に話せる範囲でいいかい?」
「ああ」
「ふゅゆゆゆゆゆ!」
「クラウ、熱々食べれるんだからがーまーんー」
「ふゅぅ……」

 そんなあからさまにしょぼんとしないの。
 おじさんは保存用の木箱から仕込んでおいたベーコン串を二本取り出して網の上に置いた。すぐにじゅっと音が立って、じんわりと焼けていくのが目に見えてわかる。これは、味を確かめなきゃわかんないけどマリウスさんの仕込んでる秘蔵のお肉に匹敵するかもしれない!
 けど、結構かかるから待ちつつお話を聞かせてもらおう。

「んで、例の行列だよな?」
「やっぱ客足が途絶えねぇのか?」
「そうだな。その店の息子の一人が宮城勤めらしくってな? 調理人じゃねぇが実家のお陰で舌はそこそこ鍛えられてたらしい。例の菓子を食っても材料全部はわからなかったが、似たもんは出来てまかないから順に出してったらすげぇ繁盛したそうだ」
「詳しいな?」
「俺とそこの大将は飲み仲間だかんな」

 商売付き合いのような関係なんだね。
 そして、ひっくり返されたベーコンの片面はとっても食欲をそそるいい焼き加減。クラウと一緒の唾を飲み込んじゃった。

「通りでは食ってるとこは見かけねぇが、店前で屋台やってんのか?」
「ああ。一度だけ見に行ったが、ほとんど店の席も使って出してたな。あそこはどっちかと言えば俺が卸してる燻製肉や酒で商売してるバルの一つだったが、今じゃ一変しちまってカフィーと同じ扱いにされそうだ。客も常連以外は皆そのデザートの虜だ」
「そこまでか……」

 今は秋に入ったばかりだから、果物や野菜で糖分は有り余る程まかなえる。だけど、コーヒーのような苦味を感じるデザートが全然ないでいたこの世界に新星のごとく現れた魅惑のデザート。日本じゃアメリカとかフランスから導入されたものに飛びついてリピーターが増えていくとかのあれに近い。この街でのティラミスもどきの行列も同じだね。模倣は悪いことじゃないから、僕はとやかく言わないよ? ただ、クリームチーズなしじゃいずれ飽きは出ると思うけど……そこは舌の違いかな?

「宮城での情報は俺もこの前以来聞いてねぇが、あいつの店じゃ下手すりゃ三刻待ちになったこともあるって客から聞いたな?」
「三刻⁉︎」
「え、えーと?」

 二時間が一刻だからその三倍……えぇえ⁉︎ ろ、六時間⁉︎
 この世界の庶民デザートってどんなけ革命なかったのーー⁉︎

「まあ、三日目でも勢いはすげぇらしいからそこの小さいお嬢ちゃんと聖獣連れてるなら、無難な俺んとこみたいなのにしといた方がいいぜ? デザートじゃねぇが、味は保証するぞ。ほれ、出来たぞ」
「ふゅゆゆゆゆゆ!」

 脂が程よく切れた熱々のベーコン串が出来上がった。
 刺さってる一枚一枚が僕の手のひらくらいあって、厚みも2cmくらいあるんじゃないかってボリュームすんごい!
 これ全部で五枚あるけど、僕多くても二枚でいいや。あとのごはんが食べれなくなるかもだし?
また明日〜〜ノシノシ
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