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【完結】ピッツァに嘘はない! 改訂版  作者: 櫛田こころ
第四章 式典祭に乗じて
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115.式典祭1日目ー神々の再会ー(フィルザス視点)-後編

「僕の封印への鍵を出したにも関わらず解放されてないなんて、変だね?」

「一切思い出せていないのか?」

「ぜーんぜんって感じだったね。思い出してたなら、あの子は僕とかに絶対言うはずだよ」


 それくらい素直な良い子だ。

 感情の起伏は結構激しい方だし、ここに来た最初はセヴィルの不機嫌さに当てられて泣きそうだったからね。

 隠し事も苦手そうだろうから態度だけですぐにわかるけど、そういった素ぶりも一切ない。


「うーん……なんでかな? 奏樹(かなた)の名前が出てきた時には、魂が抜け出さないように身体に繋ぎ止めておけるくらいはしたけど」


 必死に考えてる様から、本当に見当がつかないみたい。

 僕も頑張って考えてみたけど、全然思い当たらない。あとこっちで変わった事と言えば………あ。


「もしかして……クラウのせい?」

「なんだそれは?」

「何のこと?」

「えっとね……」


 二人にクラウの誕生までの経緯と、カティアの守護獣になったことも告げれば、レイ兄様の方は首をがっくしと折った。


「じい様の仕業か……」

「おそらく、僕以上に読んでたんだろうね? そして、それを守護する存在も必要不可欠だったと」

「それで僕に預けたとしたら、とんでもないね?」


 二千年間もの時間をかけて成熟させるだなんて、どれだけ用意周到なんだろう。

 さすがは、世界創造主様だね。


「神獣のためか、奏樹のためかはわからないが……封印は下手に解かせない方がいいな。それと兄者」

「ん?」

「再構成させるなら元の成人のままでもよかったはず。だが、何故幼子にしたのだ?」

「あ、それ聞きたい!」


 そこは僕もずっと気になってた。

 それに、カティアを元の身体に近い状態にまで成長させてあげれば、色々出来ることが増やしてあげれるからね。セヴィルがどう反応しちゃうか予想し易いけど、この場合は無視しておこう。


「ああ、そのこと? いやだって無理あるでしょ? この世界の成熟期間の差と魔力に馴染ませるためには、僕とレイの一部をいくら与えたってそれぐらいが限界だよ」

「………………それだけ?」


 え、ほんとにそれだけ?


「せめて、レイの世界も寿命とか成長期がもう少しでも近ければ、フィーくらいまで出来ただろうけど」

「だが、神域の泉……聖樹水をかなり取り込んだようだが? 加えて、フィーが副作用を防止させるために物質変換もしたと言うのに」

「うーん。それも足しても補えなかったのかなぁ? 僕も今の奏樹に会わないとさすがにわかんないね」


 じゃあ、カティアは普通にこっちでの成熟期間に合わせてでしか、身体も成長出来ないかも?


(いやいやいや、ダメでしょそれは!)


 本人も不便がってるとこはちょこちょこあったし、何よりセヴィルが一番やきもきしてるはず。

 だって、最愛の者(婚約者)になった彼女をこれから何百年も共に過ごすにしたって、色々待てと?

 いくら冷徹宰相と謳われてたって無理無理無理。

 カティアの前じゃ、その異名も形無しなくらい絆されてるしねぇ?


「クロノ兄様!」

「どうしたの?」

「僕も全力で取り組むから、カティアを元の身体くらいにまで戻すのに協力してください!」


 ベッドから降りて、兄様の前に跪く。

 苦手とか言ってる場合じゃない。僕に出来ることは、カティア達にしてあげたいもの。


「フィー、お前そこまでして奏樹達に?」

「カティアは今僕の身内でもあるんだ。物質変換したからとかじゃないよ。あの子の事がエディ達と同じくらい愛しいと思ってる」


 神はすべてを(いつく)しむ最上位の存在。

 僕もその最下位だからって、変わりはない。

 カティアも、レイ兄様の世界の子だったからって差別などしない。

 あの子の笑顔が消える事態が起きる事だって、させたくないんだ。


「フィー、立って?」


 クロノ兄様が、そう言った。

 顔を上げると、僕と同じ顔が慈しみの表情でこちらを見下ろしていた。


「変わったね? この世界を任された時は自分本位だったのに」

「……嫌なこと思い出させないでよ」


 こんな時に僕の黒歴史を掘り出さないでほしいな……。


「けど、奏樹のことは僕も導いた者として協力は惜しまないよ? ただ、一度じい様と掛け合わないとね」

「会えるのか?」

「無理にでも会わないと。じい様だって当事者の一人なんだから」


 そう言ってもらえると非常に助かる。

 今の僕は勝手にじい様に会いに行ける立場じゃないからね。向こうから来ていただかないと。


「あ。あと、魔力の保有量がかなり低いのも馴染んでないせいかな?」


 それも一向に増えないんだよね。戦闘経験は出来るだけさせたくないけど、護身くらいは身につけさせなきゃ万が一の時に対処出来ない。

 今は料理に多少使う程度で済んでても、城から出ないことなんてないからさ。


「どの程度?」

「今の外見……80歳よりも幼いくらいだね。兄様達の一部を補填させてる割には、微々たるものでしかないよ」

「それも改めて調べた方がいいな」


 それはレイ兄様とカティア会わせる時でもいい。

 加えて、もう一つ。


「身体の一部の色彩を変えさせたのは、なんで?」


 眼の色は、納得がいったけど。

 クロノ兄様の名前の一部を真名に組み込ませていることで、身体に現れたんだと思う。

 ただ、髪色まで変わってるのが不思議だったんだよね。


「……今どんな感じになってるの?」

「兄者、先読みしてないのか?」

「読めたのは、転生させてあげるところまでだね。その先を読むには間を置かなきゃいけなかったから、それ以来読んでないけど」


 と言うことは、相当の神気をカティアに使ってあげたんだね。仕事の一端とか口では言ってても、クロノ兄様はなんやかんやで人の子には甘いから。

 僕もあんまり他人事じゃないけどね?

 とりあえず、僕は塵を使ってカティアの今の姿の幻影を創り出した。

 服装は、この世界に来た時に着ていた青い服だ。


「こっちの神霊(オルファ)と勘違いさせちゃうくらいの色でしょ? これどう言うこと?」


 今は上層でも調理場やごく一部の子にしか見せてない。今日からは中層や下層に行くから、念入りに変幻(フォゼ)させてるしね。


「……………これって」

「心当たりがあるのか?」

「いや、もしかしてなんだけど…………」


 歯切れが悪いね?

 言いにくいことなのかな?

 すると、


「…………多分、じい様の力が反映されてるからじゃ」

「「は?」」


 あれ? あの人の髪色ってどんなだっけ?

 二千年前以来、僕はほとんど会ってないからすぐには思い出せないよ!

 うーんうーんと首を捻っていたら、レイ兄様が大きく息を吐いた。


「そのせいか。なら、加護は絶大だな?」

「え、じい様ってこの色だった?」

「お前はほとんど会えてないせいで覚えてないのも無理ないな。俺も兄者に言われるまで忘れていた」

「それでも、魔力の潜在量が低過ぎるのはやっぱり変だね。そこも含めて聞いてくるよ」

「うん」


 クロノ兄様とも会わせなきゃならなくなってきたけど、仕方ないよね。カティアだって、きっと疑問に思い続けてるはずだから。

 同じように転生してきたミーアは、わけは聞かなくても気にかけてるだろうし……あれ?


「もう一つ忘れてた……」

「何が?」

「レイ兄様の世界からもう一人転生してる子がいるんだよ! しかも、今は王妃の一人だし!」

「………………………なんだと」


 僕もカティアのことばっかり考えてたから、すっかり忘れてたよ!


「兄者、奏樹だけではなかったのか⁉︎」

「え、いや? 僕は知らないけど?」


 レイ兄様に詰め寄られても、本気で初めて知ったように顔をしかめている。

 これは、演技にしては無茶があるね。

 レイ兄様にもわかったようで、大きくため息を吐いた。


「やっぱり、こちらでの異変のせいか……」

「何があったの?」

「原因は不明だが、セヴィルの時以上に歪みやらが生じ過ぎて異界渡りや転生が激しいんだ。父上達にも願い出ているが未だ落ち着いていない」

「「えー……」」


 クロノ兄様とハモっちゃったけど、無理もない。

 この黑の世界じゃセヴィルとカティア以外なかったけど……ミーアはそれに巻き込まれたのかな?

 詳しいことは記憶をそこまで辿ってないから今は知らないけど。

 だからって、こっちの時間軸で350年くらい前ってのは変だなぁ? カティアとほとんど同じ時間軸で生活してたらしいし。

 これも調べなきゃね。

また明日〜〜ノシノシ

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