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【完結】ピッツァに嘘はない! 改訂版  作者: 櫛田こころ
第四章 式典祭に乗じて
113/616

113.式典祭1日目ー中層のまかないー






 ◆◇◆









 ぐぎゅるぅうううう。






 盛大なお腹の虫の音。

 僕じゃあないですよ?


「…………ふゅぅ」


 もちろん、今日から中層調理場のアイドルになってるクラウからです。

 ティラミスを盛り付けてる間もずっと頭の上に乗ってたんだけど、お暇だからかじっとしてくれていた。それ以外にも厨房の皆さんを励ましてくれてたから、きっと疲れちゃったのかもね?


「ふふ。小さい体なのに、凄い音だね?」

「いつもこうなんですよ」




 ぐぎゅーーーっ。




「…………」


 今度はクラウじゃない。

 クラウよりもう少し小さくて、聞こえてきた位置が下の方だった。


「カティアちゃんもお腹ぺこぺこのようね。まかないはもう出来てるはずだから、休憩室に案内するわ」

「……お世話になります」


 結構動いたから、僕もお腹の虫が騒いじゃったようだ。だけど、恥ずかしいものは恥ずかしい!

 きっと顔真っ赤だ。


「シャル。このティラミスはすぐ出すのかな?」

「弱めの冷却魔法を重ねがけした結界張ってから、真昼後に出す予定よ。下準備のこともあるし、あんなすぐに消えてしまってはたまったものじゃないわ」

「かなり待たせてる人もいたようだけど……」

「嬉しいことだけど、かえって期待を持たせてはいけないわ。一日目でこれだもの。最終日までまだまだ増え続けるでしょうし、カティアちゃんを休みなく拘束させちゃうなんて以ての外だわ」

「それはそうだね」


 お客様を大切にするのはもちろん大事なことだけど、自分達の体を酷使させてまでの提供は絶対によくない。

 味にムラがあるとかでクレームなんか出したりした方が一大事だ。


「じゃあ、結界は僕がかけておくよ。カティアちゃん、冷たさはさっきよりもう少しゆるい方がいいかな?」

「そうですね」


 頷けば、ラディンさんは片手をティラミス達に向けてさーっと横にスライドさせた。

 え、まさかそれだけで?

 試しにそぉーっとティラミスの一つに手を近づければ、アクリル板張りの硬い壁に阻まれた。


「凄いです!」

「君にはまだまだ難しいからね」

「ラディンもまかない食べる?」

「そうだね。実は朝早かったからそこそこ空いてる感じかな」

「ふゅゆゆゆ!」

「はいはい、行こうね?」


 中層での初めてのご飯だ!

 ここではバイキング形式じゃないだろうけど、どう言うまかないなのかな?

 クラウを抱っこしながらうきうきしつつ、シャルロッタさんの後ろをついていく。


「ここよ」


 着いたところは貯蔵庫の横にある木製の黒い扉。

 プレートとかはシャルロッタさんが前に立ってるから見えないけど、彼女はノックもせずに扉を開けて僕やラディンさんを先に入れてくれました。


「ふゅゆゆぅ!」

「うわぁ!」


 なんとなんと、僕の予想を大きく裏切って、ここも小規模のバイキングコーナーとなっていました。

 保温や保冷用の結界はなくて、代わりにクロッシュ(ドーム型のフランス料理によく使う蓋)に似た銀の蓋がしてあるので中身は見えない。

 だけど、隙間から漂う良い匂いによだれが出そう……と言うより、既に口の中は唾液の洪水。お行儀悪く思われないように飲み込んだ。


「ふゅゆゆゆ」


 かく言うクラウはお口からよだれが溢れてた。

 素早く、ハンカチで拭きます。


「ふふ。クラウちゃんもいっぱい食べていいわよ?」

「ちょ、ちょっと控えさせます」


 この子の胃袋の限界はまだ調べきれてないから、下手すると全部食べかねないもの。

 ユティリウスさん達にピッツァを振る舞った時もだけど、毎回の食事で大人並みかそれ以上に食べてるからね……。


「カティアちゃんには蓋が重いから、僕が取り分けてあげるよ」

「え、でも」

「ラディンが言い出さなくても、私もそのつもりだったわ。じゃあ、私はクラウちゃんの方ね」

「あ、ありがとうございます!」


 たしかに、クロッシュは今の僕じゃ持ち上げるだけで精一杯だもんね。迷惑をかけちゃう方が失礼だし、外見が子供のうちは甘えさせてもらおう。


(あれから一向に大きくならないもんね……)


 お城に来たばかりの時にフィーさんは大丈夫だって言ってくれたけど、今の名前をセヴィルさんにつけていただいてからもほとんど変化はない。

 唯一、体力だけは普通の子供よりあるかないくらいなのはわかった。

 他はもちろん、魔法が少しでも使えることだけどさ?


(フィーさんも不思議がってるくらいだし、やっぱり『封印』のせいかな)


 きっとあの人に違いない。

 フィーさんのお兄さんの一人。

 セヴィルさんが過去僕の世界に来た時に遭遇したって言う神様。

 絶対無関係じゃないと思う。


「カティアちゃん、お待たせー」

「あ、はい!」


 いっけない、考え込んでた。

 クロッシュの下でどう言った料理達があるのか見れなかったよ!

 この体じゃお代わりなんて難しいから一回か二回しか無理なのに、僕のお馬鹿さん!

 だけど、


「全部食べたいだろうから、ほんの一口ずつにしてきたけど」


 ラディンさん超優しい!

 お運びさんが得意とする片手と腕を使う三枚持ちで、オードブルのように綺麗に盛り付けられたお皿達。

 元がどれくらいの大皿にあったかはわかんないけど、トングかサーバー用に使う大きめのフォークとスプーンを使うぐらいにはあると思うな。

 今見たら、卓にトングとその受け皿があったし。


「ふゅ、ふゅぅ!」

「クラウちゃんもとりあえず同じくらいにしてみたわ」


 それよりも、せっかくのお食事。

 美味しく、味わっていただかせていただきますとも!

 なので、


「いただきます!」

「どうぞ召し上がれ」


 とは言っても、僕よりクラウの方が我慢出来ないので先に食べさせるけどね。


「ふゅゆゆゆ!」

「ふふ、クラウちゃん美味しい?」

「ふゅゆぅ!」


 クラウが今食べたのは、スペイン風オムレツみたいなの。僕もすぐ食べたけど、角切り野菜がたっぷり入っていて、甘くて美味しい。ケチャップつけたらもう止まらない!


「美味しいです!」


 それから、サラダにスープにパンも順に食べていくけど……全部は無理だった。胃袋が小さ過ぎてダメだったみたい。泣く泣く、残りをクラウにあげました。


「ふゅふゅぅ!」

「……まだ欲しいの?」

「ふゅ!」


 やっぱり、カナッペくらいの量じゃお腹いっぱいにならないねこの子は。


「良い食べっぷりだね、クラウちゃん」

「あなたも充分食べてるくせに」

「まだ腹八分目もいってないけどなぁ?」


 ラディンさんは見た目の王子様を裏切るくらいよく食べてます。

 食べ方はすっごく静かで綺麗なんだけど、失礼ながら吸引機のように吸い込まれていくんだよね。

 クラウは対照的にかぷっと咥えたらガツガツ食べていくよ。お口周りは当然きちゃない。


「クラウ、他の人も食べるんだからもうだーめ!」

「……ふゅぅ」


 まだ足りないのか、しょぼんとお耳と翼をへしょげた。

 可愛くしたからって、ダメなものはダメだからね!


「ねぇ、カティアちゃん達は夕餉は上層に戻るのかな?」

「え……っと、予定では一応」


 ただ、食べる場所は食堂じゃなくてお借りしてるゲストルームで。フィーさんも一緒だからとエディオスさんには言われてるんだよね。

 式典中は、普段お城の中の離宮ってところに住んでるエディオスさんとアナさんのご両親や親戚の方々と食事をするのが習慣だからとか。

 フィーさんは神様でもこう言う時は遠慮しているから参加しないんだって。

 けど、それが何か?

 ラディンさんを見れば、にっこり笑っていたけど。


「イシャールに許可もらってからだけど、僕が作ってあげようか? 君達二人分のご飯」

「ええ⁉︎」

「ふゅぅ!」


 そんな嬉し過ぎるもてなしを受けて良いのですか⁉︎


「あら、やっぱり気に入ったのかしら?」

「ティラミスだけだけど、僕の舌が認めざるを得ないと言ってるからね。残念ながら食事は一緒に出来ないんでその場所に持っていくまでだよ」

「何か用事でもあるの?」

「夕餉の時間帯だけはね」

「あ、でも」

「「ん?」」


 フィーさんの分どうしよう……。

 出来ることなら一緒に食べたいけど、ラディンさんがフィーさんと面識があるかわかんないもの。いくら凄腕料理人さんで上層にも行くことはあっても、神様と会うかまでは。


「……もしかして、フィルザス神様とご一緒なの?」

「ええ」

「なーんだ。それなら問題ないよ、僕フィーとは飲み仲間だから」

「ぴょ⁉︎」


 心配する必要なかったよ!

 そこまで親しい関係だったなんて、びっくりしてジュースむせそうになった。


また明日〜ノシノシ

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