106.幼馴染み同士の考察(エディオス視点)
夜の部の投稿でーすノシ
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆(エディオス視点)
マジでファルもだが、カティアが作るもんはなんでも美味い。
今口にしてんのも粉で出来た割にはクッキーより固い食感でも香ばしさと塩気が堪んなかった。
「あー、酒飲みてぇ……」
ポワゾン酒にはマロ芋のチップスのが合いそうだが、こっちのウルス揚げってのも悪くないだろう。
「カティアがいんのにダメだろ?」
声をかけてきたのは従兄弟ではなく、将軍職についてる幼馴染みだった。
自分のを食い尽くしたのか、サイノスの手にはコフィーのカップしかない。
「まあ、あいつが成人してても見た目はあれだかんな?」
マリウス達や給仕達はカティアが普通の幼子じゃないのは重々承知していても、あえて口には出さないし無碍に扱いはしない。
が、酒を万が一口にした後の対処法が普通の幼子と比較してどう出てしまうかわからないので、俺らも含めてあいつの前では酒を控えることにした。
提案者は、今張本人と話してる婚約者のゼルだった。
「しっかし……ちっとも進歩ねぇな」
もう一つウルス揚げを口に入れて噛み砕いた。
「だよな? 俺が知る範囲で見た感じでもいつも通りだったが」
「だろ?」
幼馴染み同士だからこそ出来る会話だ。
別にユティやファルを加えてもいいが、それぞれ菓子を食いながら話に興じているので輪に加えにくい。
明日から、カティアとフィーにクラウ以外は式典にかかりっきりになるんで、出来るだけ話していたいのだろう。
「ゼルは、カティアと初対面じゃないことを話したんだよな?」
「らしいが、俺達も詳しいことは聞かされてねぇよ」
フィーがまだダメだと、当日の動向を玉に写したやつでさえ見せてもらえてねぇ。
実際に見ていたファル達も、観察はしていても話の内容だけはフィーの意向で音を消されていたから知らないそうだ。
しかし、声は聞こえずとも面白いのは見れたらしい。
「ゼルがカティア抱きしめたんだと」
「ぶっ⁉︎……………………ま、マジか」
ちょうど飲みかけだったコフィーを盛大に吹いて喉につっかえたようだ。
俺も事実知った時は椅子からひっくり返ったがな?
(冷徹宰相のゼルだったらまずあり得ねぇかんな?)
無愛想に鉄仮面、発言するだけで場が凍りつくような鋭い声。
カティアは城に来て最初のゼルだけでしかそれは知らないが、あれ以降奴がカティアの前で冷徹の雰囲気を出すことはなかった。
むしろ、俺達身内の予想をはるかに超える勢いの面白い反応しか見せていない。御名手と確信が持てる前に見せつけられた反応ですら、頭に鈍器を落とされた感じだったしな?
(だが、具体的にはそう言う過剰反応くらいだ)
積極的に交流するとか恋慕の証を見せつけるとかがまったくない。
カティアが幼子の外見だもんで出来ねぇのもあるだろうが、それにしては普通過ぎる。
ゼルが今どう考えてるのかわからないが、二回目の逢引は最低式典が終わってからのつもりでいるだろう。
そうは、させねぇが。
(俺の計画にも組み込んでっからな?)
いくら節目の式典だからって、俺が普通に務めるわけがない。
それはゼルも対策を練ってるようだが、今年は引き込む奴も色々いるから抜かりはねぇ。
「……なんか悪巧みしてねぇか?」
「さぁな?」
サイノスにはバレちゃ意味ねぇから絶対に教えるか。
「まあいいが。今年は節目だ、お前さんも色々言われるんじゃねぇか?」
「面倒くせぇが、親父のようにしてても見つかんねぇんだよ」
「先代はなぁ?」
親父達のなんか、寝物語で聞かされそうな甘ったるいもんでしかない。
あれを聞かされて悪くはないとは思ったが、どこの英雄と聖女だとかに誇張されまくって大衆とかに出回る始末にさせられるのは勘弁だ。
神王自体が英雄と差異ない世界の象徴の一つだからな?
カティアを勘違いしかけたくらいの、神霊の子孫だから余計に。
(……あ?)
今とんでもねぇことが浮かんだが。
「なぁ、サイノス」
「ん?」
「俺のはまあ仕方ないにしても、ゼル達のもやばくね?」
「…………やばいな」
ゼルとしちゃ成就してるに等しいが、カティアが自覚して元に戻れば……親父達以上の恋物語で世に語り継がされるに違いない。
異界渡りして来た事実は秘匿するにしても、彼女の神秘的な容姿にゼルの美貌が加われば、こぞって女中達が場内外に伝えてしまうだろう。
「けど、散歩で二人の様子は大半に見られてる。俺のとこにも何人か押しかけて来たしな?」
「まあ、それくらいは予想の範疇だ」
俺側にもじじい達が一部押しかけてきた。
女子供を苦手としていたゼルが嫌がるどころか好意的に接していたのは一体何者だとか。
それに、ゼルは容姿があれだけだから、女中達には興味を持たれる対象だ。たとえ睨まれて一蹴されても、めげない奴が多い。そう言う奴達が、憐れにも思うが少し警戒しておくか。くだらないで片付けれない妬みの感情は、時に恐ろしいからな?
それをこっそりサイノスに伝えれば、たしかにと頷いてくれた。
「だいぶ間引いたが、隠れてる輩もいるかもしれないしな? カティアの心労は出来るだけ増やしたくない。裏で当たってみよう」
「俺側も動かしてるが、少し早めるか」
少しずつ育んでる穏やかな若芽を摘む行為などさせはしない。
特に、カティアが泣く姿なんて俺だってもう見たくないからだ。
それともう一つ。
「お前もどーにかしろよ?」
「……なんのことだ?」
「とぼけんな。本人以外ほとんどにバレてんぞ?」
「……だが、判明していないのに迷惑だろう」
こいつは俺より年上の癖して、肝心なところで引くことが多い。
たしかに王族の血脈に混じってるから、御名手は絶対だ。フィーが決めたんじゃなくて、俺達の先祖が決めた慣わしだからな?
(慣習を打ち砕くことは出来ても、ゼルのを見ちゃ簡単に変えられねぇかんな?)
目を合わせただけでわかる魂の片割れ。
俺やサイノスも、見つけにくい家系ではあるがいつか巡り合うのだろうか?
サイノスはほぼ確定してんのに自覚ないでいるがな?
三章はこれで終了になります!
明日からは第四章!
しばらくは旧作をほとんど移した形になりますのでご了承ください(*・ω・)*_ _)