プロローグ
人は誰しも考えた事があるだろうーーー『死』を。そして、あらゆる『死』の可能性を考えるだろう。もしそれが考えたところで意味がないとしても…………
ーーーとある年のクリスマスーーー
「今年もまた一人で寂しく祝うのか。この日を。」
俯きながら近くの公園に向けて歩いていた。どうして俺には彼女・・・それ以前に出会いすらないんだ。小学生の頃はなぜか虐めを受け、中学ではボッチ、高校は男子校なので仕方もない。だが社会人になった今も出会いがない。何度俺が出会い系サイトに足を踏み入れかけたと……
(彼女欲しいな……)
俺はギリ20代のーーーー歳は想像に任せるーーーーの平凡なサラリーマンだ。出世もできず、家畜のように会社のために働き、家に帰って寝るだけのそこら辺にいる『社畜』だ。そんな俺の名はーーーー
「助けて!」
その時、公園の木の影から女性の叫び声が聞こえた。ふと足を止め振り向くと、そこには、女性を刺そうとしている男の姿がある。男の目は血走っており、狂気を帯びている。その手には鋭利なナイフが握られている。
「お前さえ……お前さえいなければ……死ねぇぇぇぇぇぇぇ」
そして、その男は女性に向かって、握っているナイフを突き刺そうとして、間に入り込んだ俺の胸に吸い込まれた。
「はや……く逃げ……て」
女性は一瞬戸惑ったが、走って逃げていった。霞む目でその姿を見届け、徐々に視界が暗くなっていくのを感じながら、俺は俗にいう走馬灯を見ていた。
(俺の人生って結構ハードモードだよな。……もう死ぬのか俺)
ーーーそこで俺の視界はブラックアウトしたーーー
筈だった。だが俺は、なぜかただただ白い空間にいる。
「どうなってんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」
それが俺の心からの叫びだった。
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「どうなってんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」
こう叫んでから実に、五分たっている。ただただ白い空間に何か精神を落ち着ける効果でもあるのか、だいぶ俺の精神は落ち着いてきた。それを見計らってか、玉座みたいな物になんとも言えない威厳を持ったものが座っている。その者を言葉にして表すとするとーーー完全なる美ーーーそれは見る者すべてを魅了するような完璧な美である。
「ようこそ。僕は神、人からはニリカルと呼ばれている。君には、ある世界に行ってもらう。その世界の名はクルサイド。剣と魔法のファンタジーで、レベル制のスキル制だ。そして君にはーーーーむ?君は神格化の可能性を持ってるのか。はっはっは、これは面白い、しかもこの僕を殺せるくらいの可能性を持った人間か。ではまず君をクルサイドに送る前に君の力を見てもらおうかな。では」
神と名乗る者ーーーーニリカルは僕に手を向けて光を出した。その光は僕の中に吸収された。
「では、ステータスオープンと言ってみるがいい。自分のステータスが見れるはずだ」
「ステータスオープン」
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|【名前】神城 輝 【種族】人間
|HP:9999999/9999999
|MP:99999999/99999999
|攻撃力:20000
|防御力:20000
|俊敏性:50000
|魔力:500000
|運:99999999
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「はぁ?何これ何のチート?」
「言ったろ?僕すらも殺せる可能性を持っているって」
「まあいいや。君クルサイド連れてくよ?」
ニリカルがそう言うと地面が発光し、輝の体全体も微かに発光し出した。
「えっ!ちょっと待てぇぇぇぇぇぇぇぇ」
その声が白い空間に木霊していた。