白い宙 記憶の泥 怯え
白い宙
泣きながら詩を書いた
震えながら言葉にした
結晶させたつもりの
文字の連なりを
もう一度切り抜いた
影絵のように
光を当てると顕れる
一抹の通じる不安
一点の求める輝きを
見たこともない宇宙の黒に
浮かべてみたい
この世に満ちた液体を
わたしという点から昇っていく
炭酸の泡の
……粒……粒
弾けてなくなるところは
遥かな虚空
父母の消えた白い宙
記憶の泥
濁っているだろう
大雨の後の川の流れのように
だからといって
澄むわけではない
だからといって
淀んでいるわけではない
あまりにも沢山の記憶の泥
鰓に溜まって窒息しそうな
時間の流れを遡る魚
大きな鱗の時折光る
――跳ねた
波紋は急激に流されていく
見えない水流の下
何処まで
怯え
止んだ雨の話をしている
勝ち誇ったように
降りしきる激しさの中では
萎れたようにうな垂れていた
海面を白く弾く真水
どんなに加えても希釈出来はしない
手を触れたら跳ねのけられる
誇り高い白面の女
流れ込む汽水域の茫漠に
怯えているのだ
――己が薄められるのではと
お読み頂いてありがとうございます。