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短編メイカー  作者: papiko
3/10

GW

 彼女は凶器を両手にもって台所にたっていた。鬼気迫る顔で何かの気配を探っているようにも思える。


 さすがに、この緊迫した状況で俺は声をかける勇気が出ない。君の大好きなコンビニスイーツを買ってきたよなんて言おうものなら、きっとその手にしている凶器は俺に炸裂することだろう。


 とりあえず、そっとソファーへ移動する俺。

 一瞬、コンビニの袋がカサカサっと音を立てた。殺気立った彼女がこっちを睨む。俺はその瞬間金縛りのように一歩も動けなくなった。


(もう一度動いたら、確実に殺される!!)


 しばらくして、どこからかカサカサっと音がした。その一瞬の音に彼女は反射的に凶器を投げつける。

 バシッ

 バサッ

という激しいおと共に凶器は壁から床へと落ちた。そこへ行きつく間もなく、彼女はスプレイを発射した。


(ああ、とりあえず、敵はしとめられたな)


 俺はそう思って、動こうとした瞬間。ヤツは、目の前を横切った。そして……お、俺の頭にぴたりと張り付く。

「動くな!」

 彼女の怒声が響く。


(いや、それ、ダメでしょ。ほら……)


 ヤツは声に反応して、彼女に襲い掛かった。彼女の武器は、果たして間に合うのか!!飛び道具はすでに使ったばかりで回収されていない。残るはスプレーのみ!!

 だが、俺は見落としていた。彼女の手にはもう一つ武器が握られていたことに。

 スパンッ

とでもいったらいいのだろうか、ヤツは彼女の第二の武器に叩き落とされた。そしてあえなくスプレレーの餌食となった。

「よっしゃぁああああ」

 彼女が勝利の雄たけびをあげた。俺は死体を処分すべく台所に入る。まずは、厚手のキッチンペーパを無残につぶれ冷却された遺体にかけて回収する。そしてアルコールの消毒液入りウェットティッシュで床と壁を丁寧にふいた。二体目は原型をとどめたまま電気コンロの上で凍死していた。こちらも同じ手順で回収する。そしてその遺体と凶器一号は廃棄処分として室外のアパートのゴミ集積所に持ち込まれたのである。


 凶器一号は俺のお気に入りスリッパだった。そして凶器二号は、俺の大事な卵焼き用フライパン……。

「こいつも捨てろと?」

「そうだよ。汚いし、新しいのなら安いのいくらでもあるじゃん」

 彼女は勝利の笑みを浮かべている。


(さらば。俺の食生活を支えた友よ……)


 俺は彼女の凶器二号に涙の別れをつげた。さらにそんな俺に彼女は今日はお泊りなしねと言って、俺のかってきたスイーツを持って、自分のアパートに帰ってしまった。


(ああ、俺の甘い一夜が……)

 

 こうして、俺の幸せになれるはずだったゴールデンウィークは、二匹のゴキに邪魔されてまくをとじたのだった。それから三日後に、俺は彼女に一方的にフラれた。


これって GW(にひきのゴキブリ)の呪いなのか!!




【終わり】


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