落ち着いたのに
それから一週間後、俺はほとんど不自由なく生活していた。
数分で住民登録を済まし、用意されていたであろう宿らしき所の部屋を借り、開拓の仕事にありつけている。
この世界を簡単に言ってしまえば、昔風の西洋の街だ。
小説やRPGに出てくるような街並みで、文化もそれほど進んでいない。
科学なんてほとんど知られていなくて、俺から言わせてみれば過去に来てしまったのかと疑うくらいだ。
そして今日、昨日と同じように不慣れな森林開拓の途中、役人らしき人がきたらしい。
その話は、しばらくの世話係に任命された上北沢から聞いた事だった。
「お偉いさんが俺と面会したいだって?」
「はい、セナ様も先日呼ばれていましたが、お次はアニマ様だと。」
仕事後のティータイムでその会話が始まった。
「セナさんも呼ばれて次が俺って、何かあったのか?やっぱりいきなり現れたりしたから不思議がられてるとか。」
「それはないと思いますよ、この宿、結構な広さなのはご存知ですよね?もともと身元不明の人が出て来た場合を想定して造られた建物なくらいですから。想定の範囲内と言う事です。」
まるで先を読んでいたかのような想定だな、そんな想定出来るんだったらさっさと元の家に帰りたいのだが。
でも、会ってみるのもありかもしれない。
今起こっていることはアドが言ってた事とは全然違うし、それも聞いてみればなにかわかるかもしれない。
そんな浅はかな希望を持ちつつ、俺は面会を了解することにした。
「いいよ、いつ?明日は道のレンガの敷き詰めがあるから無理だけど。」
「いつでもいいそうです。ですが、なるべく今週中に。」
となると休日の明後日か、俺的に言えば日曜だが、まあいいとしよう。
そう思ようにしたのだが、何かが疼くようでいてもたってもいられなかった。
好奇心と言うべきか、とにかく、明後日が待ち遠しい。
そんな衝動に駆られたが、今からとも言い出せず明後日を待つしかなかった。
それを察したのか、上北沢がこんな事を聞いてきた。
「なにか心当たりがあるのですか…?」
深刻そうな重い声で聞いて来た。
「ああ、実はこの世界に来る前、女の子が故郷の流行病を治してって言ってきたんだ。でもその話を聞いたのはつるみ始めてから結構経った時だし、あいつは話した時から変になっちゃうし…」
「そうですか。」
なぜか上北沢は納得したかのような清々しい声に変わっていた。
「理由でもわかった…?」
「はい、バッチリです。」
あっけなくも思うが、唾を飲む。
「フォルテ様は…フォルテ様とは簡単に言うお偉いさんですね。
フォルテ様はおそらくその女の子の頼みを改めて頼むおつもりですね。通りでセナさんの様子がおかしかった訳です。」
「大体を理解したという仮定にしておくから教えてくれ…」
上北沢がうっすらと笑い、椅子に座ってから口を開いた。
「では、お話しさせて頂きます。この世界は、全ての次元のまとめ役のようなものです。仮にこれをリヴァと呼びましょう。このリヴァは、アニマ様やセナ様がいた通常世界、ジェフを操作しているんです。リヴァには複数のジェフが付いていて、リヴァを利用すればジェフ間の移動が出来るんです。おそらくアニマ様が言っている女の子は、アニマ様とは違うジェフから来た人なのでしょう。」
長い説明で、頭が痛くなりそうだった。
いろいろ理解出来ない点はあるが、俺やセナさんがいた世界…つまり宇宙?はリヴァって所、つまり今俺がいる世界に統治されてるって訳か。
だが、これでも不安なため一応聞いておく。
「…わかりやすく言ってくれ。」
「脳にあった血液が心臓を通じて肺に行くようなものです。」
もっとわかりにくくなって頭が痛くなった。
俺が整理した結果は、リヴァとは宇宙の外、一部では亜空間と言われてる場所で、数個あるっていうジェフはブラックホールとかホワイトホールとかなのかな?そこらへんは全然知らないからわからないけど、一説ではブラックホールに吸い込まれると別の次元のホワイトホールに出されるって聞いた事ある気もするしな。
するとブラックホールやホワイトホールの中は亜空間と言う事になってしまう、本当にややこしくなってきた…。
「整理出来ましたか?」
「おかげさまで。」
「ある程度理解して頂いた上で、本題です。フォルテ様は、アニマ様にジェフ間の異変解決をして頂きたいのだと思います。」
ようやく理解はしたが、どうも原理が分からなかった。
ただ、今は理解していなかった不可解な現象として片付けるしかないのだが。
「上北沢。」
「なんでしょうか?」
「何時間待たされてもいい、出来れば今すぐ、そのフォルテと言う奴と面会したい。」
「畏まりました。」
俺はカップにはいった紅茶を飲み干し、それを上北沢が片付けた。
予約がめんどうなので投稿出来るときにドバっとやっちゃいました。