迷ったのは一瞬
じわとーこーってむずかしいね(棒)
………っ!?
突然目が覚めた。
あたりは薄暗く、森の中のようだった。
俺はただ気絶しただけで、ここは家がある森の中ではないかと考えた。
だが、雰囲気の違いからそれはすぐに分かっていた。
何処かに建物はないか、見回したが、何も見えない。
ただ、薄暗い木々が続いているだけだった。
頭を掻き毟り、状況を整理する。
だが今の俺では、ここが別世界と仮定することしか出来なかった。
そしてその場に座り込み、ため息をついて下を向く。
もう一度ため息をついて、独り言を言った。
「なんでだろうな…不安なだけかもしれないけど、何も考えてない気がする…」
悩みは一切無かった。
ただ、時が過ぎるのを待つだけだった。
月が出て来て、先ほどよりは明るくなる。
再度見渡したが、何もない。
ただ木しか無かった。
しかし、足音がどこからか聞こえる。
動物か?はたまた人間か?人だったら助かるが、そう運が言い訳もあるまい…
キョロキョロしていると、明かりが見えた。
今まで木に隠れて見えなかったのだろうか、かなり近い。
「おーい、助けてくれー!」
俺はたまらず大声を出した。
それに気付き、小走りで来ているのか明かりが揺れた。
そしてようやく、その人を確認できた。
「どうかしましたか!?」
ヨーロピアンな軍服のような服を着て、深く帽子を被っていたので顔や体格は分からなかったが、どうやら女性のようだ。
かなり若そうな声と同時に、優しそうな声でもあった。
「気付いたらここに居たんです。」
「気付いたらここに?まずお名前を。」
慣れた手付きで万年筆と紙を取り出し、帽子を少しあげる。
「アニマです、アニマ・イステルト。」
「イステルト?聞かない名前ですね。」
顔が気になり膝を曲げて顔を見ようとするが、なかなか見えない。
そしてその女性が、ピンポイントで質問をしてきた。
「もしかして、別次元にいたのではないかとお思いになりますか?」
「はい、多分その通りです。」
女性は小声で弱ったなぁと言い、メモ用紙と万年筆をしまった。
「実はあなた以外にもう一人、そう言った方がおられるんですよ。」
俺以外にも?それは興味が湧いた。
「もしかして、同時に飛ばされたとかじゃないですかね?場所は違えど時同じと。」
「そのようですね、理解力が高く大変助かります。」
そう言うと、女性は帽子を取った。
「申し遅れました、私は自警団団員、上北沢と申します。」
髪は短く、臼杵緑色で目は水色だった。
かわいいと言うよりかは美人で、俺の好みのタイプでもあった。
しかし、どう見ても俺より背が高いしそんな事をいきなり言うわけにもいかないのでそのことは黙っておいた。
「ところで、もう一人はどこにいるんですか?」
「現在は私共が休憩場所として使っている小屋に待機していただいております。」
小屋か、悪くは無いが自分の家を思い出す。
けど、帰れないんだろうな。
「案内いたします。」
丁寧な仕草で案内され、それについて行く。
途中独り言を言っていたが。
「男性1人に女性1人と…」
どうやらもう一人は女のようだ。
思い当たる人物がいるが、そうでないことを祈ろう。
「ちなみに名前は?」
「略称で申されておりましたが、セナと言う方です。」
セナちゃんね、かわいい子かと勝手に想像し、勝手に盛り上がった。
でもそれだとさみしいので、先ほどから気になってたことを聞いてみる事にした。
「いきなりなんですけどー…身長いくつですか?」
「私ですか?私は164程です。」
…は?
頭が凍ったような感じがした。俺の身長は175、なのに彼女は164だと言う。
どうみても俺より10cm以上上なのだが、これはなぜだろうか?
「アニマ様は…152cmくらいですか?」
…ここが別次元と言う証拠が早くも入手できた。
どうやらこの世界は背が縮むらしい。
そこで浮上してきた疑問が一つあった。
「ちなみにもう一人の女性は?」
「もう一人は男性の方ですよ、女性はあなただけなのでは?」
最後ににっこり笑われた。
かわいい、かわいかったのだが…
かわいかったのだがなぜだろう、腹が立ってきた。
俺は男だ、どのタイミングで言おう、まず鏡を見てからか?それとも別次元では根本的に変わってしまうのか?まあそれなら仕方ない。
だが万が一、背が縮んだだけで女扱いされたならそれはもう屈辱以外の何物でもない。
まずオールバックで気付け、だが先ほど、頭を掻き毟った事をさらに思い出した。
それは俺が一番良く知っていることだ。
オールバックはワックスでもつけていない限り、すぐに崩れてしまうと。
そばにあった水溜りに顔を写してみると、俺は思わず叫んでしまった。
「あああああぁぁぁぁ!!」
「どうかなされましたか!?」
「いや…なんでもない…」
この後俺は、俺が男だと強く強調した。
別次元に来たのが原因で背や顔が変わってしまったとつよく主張しながら。
実際は背だけだが、それでも主張した。
あまりにうるさかったからか、上北沢はかわいそうにと苦笑いをしながら言ったが、慰めにはならなかった。
むしろ、その時の彼女の右手に異議がある。
まるで年下の女の子を撫でるように撫でるなと。
この時の屈辱は二度と忘れない、でも悪い人じゃないし怒れない。
けど、俺の精神へのダメージは、相当なものだっただろう…
連日投稿を保てるか不安ですが、毎日創作するよう頑張ります。